この、著作集9『デザイン史学再構築の現場』の第五部「デザイン史雑考雑話集」を構成する各論稿は、巻末の「初出一覧」に詳しく記載していますが、かつて神戸大学に在職していた期間のなかにあって、一九九四(平成六)年から二〇〇九(平成二一)年までのあいだに書かれたものです。
内容的には、主として、当時デザイン・コンサルタントをしていた企業の研究会での講演、中国雲南省でのトンパ文字調査の紀行文、学会や雑誌社から依頼を受けて執筆した論考、それに、知り合いの美術家との対談によって構成されています。そのため、文体も主題も、ばらばらな感じは否めず、まさしく、粗雑な思考と雑多な話題の寄せ集めになっています。表題を「デザイン史雑考雑話集」としたのも、そこに理由がありました。
とはいえ、いま読み返してみますと、この第五部「デザイン史雑考雑話集」を構成しています六編こそが、紛れもなく、私の学問にとっての、調理前の採れたての新鮮素材になっていることに気づきます。それぞれは、確かに姿も形も、また色も味も違います、しかし――。
お正月においしくいただく「雑煮」の来歴は、勉強不足でよくわかりませんが、ひょっとしたら、「おせち」をつくった残りの、多様で生きのいい食材で「雑煮」はできているのかもしれません。新年が近づくこの時期、そのようなことに思いを馳せながら、あえて、わが家特製の「元日の雑煮」をこの食卓に並べてみたいと思います。果たして、ここに収録した六つの話は、「おせち」に対する「雑煮」のように、「デザイン史」にとっての意味のある「雑考雑話」になっているでしょうか。ご賞味いただければ幸いです。
(二〇一八年師走)