※全文をPDFファイルでダウンロードしてご覧いただけます。 [PDFファイルについて] 『著作集8』PDFダウンロード (0.2MB) 更新日:2023年11月17日
ここに公開する著作集8『英国デザインの英国性』は、次の三つのパートと三つのAppendixによって構成される予定です。 第一部 英国デザイン史講義 第二部 英国デザインの群像 第三部 畏友が語る英国のアートとデザイン Appendixes Appendix A: ‘Morris the Designer: Art, Work, and Social Order’ by Ray Watkinson. Appendix B: ‘Black Images in Pre-Raphaelite Painting’ by Jan Marsh. Appendix C: ‘Edward Johnston: Calligraphy and the Morris Tradition’ by Gillian Naylor.
この巻の表題にあります「英国デザインの英国性」は、ニコラウス・ペヴスナーの著書の『英国美術の英国性』(一九五六年刊)から転用したものであり、一九九六年ころのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館/王立美術大学共同大学院デザイン史課程におけるジリアン・ネイラー客員教授の講義名称に使用されていたものでもあります。
第一部の「英国デザイン史講義」は、一九世紀の三〇年代にはじまるデザイン改革の夜明けから、二〇世紀の七〇年代に終わりを告げる近代運動の崩壊に至るまでに展開された、英国デザインの主たる思想と実践(ゴシック・リヴァイヴァル、サウス・ケンジントン・サークル、アーツ・アンド・クラフツ、アール・ヌーヴォー、モダニズム、ユース・カルチャー、そして反モダニズム)を通史として講義形式で論述するものです。おおかたの部分は、私の神戸大学在職中の「デザイン史」の講義内容に即して書かれてあります。
第一部の「英国デザイン史講義」を仮に本紀とするならば、第二部の「英国デザインの群像」は、そのなかで言及されている、英国の代表的なデザイナー、デザイン批評家、そしてデザインのプロモーターたちの実践と、そこに介在するデザイン思想についての、個別列伝となります。
第三部の「畏友が語る英国のアートとデザイン」においては、私の尊敬する友人であるレイ・ワトキンスンさん(故人)のウィリアム・モリスに関する論考(シンポジウム要録)、ジャン・マーシュさんのラファエル前派の絵画に表現された黒人のイメージに関する講演原稿、そしてジリアン・ネイラーさん(故人)のエドワード・ジョンストンについての講演原稿を全文翻訳し、紹介します。手もとに残るそれぞれのオリジナル・テクストは、Appendixesとして巻末に掲載する予定です。なお、この畏友三名を含む英国の隣人たちにつきましては、著作集12『研究追記――記憶・回想・補遺』の第三部「わが学究人生を顧みて」の第四編「遥かなる英国の仲間たちへの謝辞」におきまして、この間の交友内容の一端を紹介しています。ご参照いただければ幸いです。
断片的ではありますが、この巻において用意しました以上の三つの歴史的観点から検討を加えることにより、英国デザインの英国性にかかわる幾つかの側面が明らかになると同時に、ナショナル・アイデンティティーの表象としての英国デザインに関する今後の本格的な研究に向けての予備的な知見の提供が可能になるものと考えます。
完成には時間がかかるかもしれませんが、これから少しずつ書いてゆくつもりでいます。
二〇二一年六月一六日 夏のはじめの南阿蘇のわが小さき庵にて 中山修一