中山修一著作集

著作集12 研究追記――記憶・回想・補遺

第三部 わが学究人生を顧みて

第二編 プロダクト・デザインの実技授業

私が神戸大学助手(教育学部美術科)に採用されたのは、一九七四(昭和四九)年四月のことであった。当時、教員養成を目的とする神戸大学教育学部の美術科は、主に絵画、彫刻、デザイン、美術科教育の各分野から構成されていた(工芸や美術理論の分野には専任教員はいなかった)。私はデザイン分野のなかのプロダクト系のデザインの実技を担当した。卒業生の多くは、兵庫県内の中学校の美術教師になっていた。そうしたなか、一九八一(昭和五六)年に悲願となっていた大学院教育学研究科修士課程が、全国に先駆けて(一番ではなかったかもしれないが)設置された。その一年前に私は助手から講師へと昇任していたので、大学院の授業も担当し、修士論文の指導も行なうようになった。そうしたこともあり、デザインに関する理論についての研究や教育が徐々に要請されていった。最初の翻訳書である『英国のインダストリアル・デザイン』を晶文社から上梓したのも、ちょうどこのころの一九八三(昭和五八)年だった。そしてその翌年、助教授に昇任した。

そのころ私は、デザイナーとしてデザインの実践に道を拓くか、研究者としてデザインの理論や歴史に活路を見出すか、迷っていた。中途半端な生き方がその後も続いた。しかし、どうしても研究者としての生き方を強く自覚せざるを得ない事態が、その後続けて出現した。それは、ひとつには、一九九二(平成四)年の発達科学部の設置だった。これをもって教員養成機関としての教育学部の機能は停止した。もうひとつは、続く一九九九(平成一一)年に、発達科学部と国際文化学部の二学部を基盤として総合人間科学研究科(博士課程)が設置されたことだった。このことにより、この前年にすでに教授に昇任していた私は、博士論文の指導も担うこととなった。その後も大学改革は進み、二〇〇七(平成一九)年には、総合人間科学研究科が改組され、発達科学部の上に人間発達環境学研究科の前期課程(修士課程)と後期課程(博士課程)が設置され、単独の学部と大学院が一体となった教育研究組織が完成した。

私が神戸大学を定年退職したのは二〇一三(平成二五)年のことで、この間の三九年の在職期間は、まさしく改組、改組に明け暮れる激動の時代であった。そのなかにあって、私が開講する授業も、実技から理論へと大きく変化していった。最後のころの主な担当授業科目は、学部(発達科学部)が「デザイン史1」「デザイン史2」「デザイン史演習」で、大学院(人間発達環境学研究科)が「デザイン史特論Ⅰ」「デザイン史特論Ⅱ」「デザイン史特論演習」であった。振り返ると、最初に籍を置いた教育学部は、早い段階でその姿を消し、プロダクト・デザインの実技の授業はその後しばらくは続いたものの、次第にやせ細り、退職時には、同じくその姿はすでに消えてしまっていた。

そこで、少しここで私のプロダクト・デザインの授業内容を回顧してみたいと思い、過去のファイルを調べてみると、手もとに残っていたのは、二〇〇二年度後期の「プロダクト・デザインⅠ(基礎実習)」と、それに続く二〇〇三年度前期の「プロダクト・デザインⅡ(課題実習)」についての「課題タイトル一覧」【表】と、そのとき受講したひとりの「学生作品」【合計三四点の図版】のみであった。いま見ると懐かしいし、このなかに、私の神戸大学時代の教育研究上の激変が、何か集約されているように思えてくる。教育(授業)が実技から理論へと変わることに伴い、研究の場においてもそのような葛藤的シフトが常に在職中渦巻いていたことを決して忘れることはできない。デザインの実践家としては、明らかに失敗であったし、デザイン史の研究者としては、遅く出発した人間であることも疑いを入れない。しかし私の場合、デザイン史家としてのスタートの遅れや知識の不足はあったものの、その後の研究成果が、初歩的とはいえ、デザインの実践や実技教育にかかわった経験に支えられていることを思えば、私はそれを、恵まれことであったとうれしく受け入れたいし、密かな誇りにさえしたいといまは思う。

(二〇二〇年)


2002年度後期 プロダクト・デザインⅠ 
基礎実習 課題タイトル一覧

1. 立方体を描く
2. 立方体を2分割する
3. 立方体と立体をつくる
4. 立体の分布
5. 立体のイメージ(A)
6. 立体のイメージ(B)
7. 立体のイメージ(C)
8. レンダリング実習(A)
9. レンダリング実習(B)
10.レンダリング実習(C)
11.レンダリング実習(D)
12.レンダリング実習(E)
13.立方体の外形三面図
14.立体の外形三面図
15.立方体の2点透視図
16.立体の2点透視図

2003年度前期 プロダクト・デザインⅡ
課題実習 課題タイトル一覧

1.SPACE FOR LIFE
2.LIGHTING EQUIPMENTS
3.MODEL ILLUSTRATION
4.USER IMAGE COLLAGE
5.DESIGN CONCEPT
6.IDEA SKETCH (A)
7.IDEA SKETCH (B)
8.CONCEPT SKETCH (A)
9.CONCEPT SKETCH (B)
10.CONCEPT SKETCH (C)
11.STUDY MODELS
12.FINAL DESIGN - DRAWING
13.FINAL DESIGN - ILLUSTRATION
14.FINAL DESIGN - RENDERING (A)
15.FINAL DESIGN - RENDERING (B)
16.IMAGE POSTER


fig1

図Ⅰ-00 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)表題紙。

fig2

図Ⅰ-01 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題1「立方体を描く」。

fig3

図Ⅰ-02 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題2「立方体を2分割する」。

fig4

図Ⅰ-03 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題3「立方体と立体をつくる」。

fig5

図Ⅰ-04 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題4「立体の分布」。

fig6

図Ⅰ-05 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題5「立体のイメージ(A)」。

fig7

図Ⅰ-06 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題6「立体のイメージ(B)」。

fig8

図Ⅰ-07 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題7「立体のイメージ(C)」。

fig9

図Ⅰ-08 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題8「レンダリング実習(A)」。

fig12

図Ⅰ-09 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題9「レンダリング実習(B)」。

fig11

図Ⅰ-10 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題10「レンダリング実習(C)」。

fig12

図Ⅰ-11 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題11「レンダリング実習(D)」。

fig13

図Ⅰ-12 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題12「レンダリング実習(E)」。

fig14

図Ⅰ-13 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題13「立方体の外形三面図」。

fig15

図Ⅰ-14 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題14「立体の外形三面図」。

fig16

図Ⅰ-15 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題15「立方体の2点透視図法」。

fig17

図Ⅰ-16 プロダクト・デザインⅠ (基礎実習)課題16「立体の2点透視図法」。

fig1

図Ⅱ-00 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)表題紙。

fig2

図Ⅱ-01 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題1「SPACE FOR LIFE」。

fig3

図Ⅱ-02 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題2「LIGHTING EQUIPMENTS」。

fig4

図Ⅱ-03 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題3「MODEL ILLUSTRATION」。

fig5

図Ⅱ-04 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題4「USER IMAGE COLLAGE」。

fig6

図Ⅱ-05 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題5「DESIGN CONCEPT」。

fig7

図Ⅱ-06 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題6「IDEA SKETCH (A)」。

fig8

図Ⅱ-07 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題7「IDEA SKETCH (B)」。

fig9

図Ⅱ-08 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題8「CONCEPT SKETCH (A)」。

fig12

図Ⅱ-09 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題9「CONCEPT SKETCH (B)」。

fig11

図Ⅱ-10 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題10「CONCEPT SKETCH (C)」。

fig12

図Ⅱ-11 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題11「STUDY MODELS」。

fig13

図Ⅱ-12 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題12「FINAL DESIGM - DRAWING」。

fig14

図Ⅱ-13 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題13「FINAL DESIGM - ILLUSTRATION」。

fig15

図Ⅱ-14 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題14「FINAL DESIGM - RENDERING (A)」。

fig16

図Ⅱ-15 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題15「FINAL DESIGM - RENDERING (B)」。

fig17

図Ⅱ-16 プロダクト・デザインⅡ (課題実習)課題16「IMAGE POSTER」。