この、著作集12『研究追記――記憶・回想・補遺』の第二部「わが肥後偉人点描」は、「目次」にもありますように、以下の八つの文から構成されています。 第一話 汀女の句誌『風花』の終刊と初期編集者の富本一枝 第二話 中村汀女没後三〇年にあたって ――汀女主宰誌『風花』創刊前後の人間群像 第三話 第三話 石牟礼道子の「沖宮」の能衣裳を監修した志村ふくみの原風景 第四話 石牟礼道子の死去から一年 ――ハナシノブ考あるいは「沖宮」考 第五話 ウィリアム・モリスと第五高等学校の英語教師たち ――ハーン、漱石、白村のモリスへの関心(1) 第六話 ウィリアム・モリスと第五高等学校の英語教師たち ――ハーン、漱石、白村のモリスへの関心(2) 第七話 ウィリアム・モリスと第五高等学校の英語教師たち ――ハーン、漱石、白村のモリスへの関心(3) 第八話 ウィリアム・モリスと第五高等学校の英語教師たち ――ハーン、漱石、白村のモリスへの関心(4)
学問の世界に入ってからこのかた、私は、英国と日本のデザインの歴史を研究の対象とし、とりわけウィリアム・モリスと富本憲吉の生き方に関心をもってきました。ところが、こうした研究の周辺に、中村汀女、石牟礼道子、ラフカディオ・ハーン、夏目漱石、厨川白村といった熊本にゆかりの人たちがいることが、次第にわかってきたのです。そこで、そうした熊本人と私の研究との接点に対して、いま一度一条一条の光をあて、偉大な先達たちのいまだ知られていない別の世界の一端を紹介することには、それなりの意義があるのではないかと思い、その時々の節目にあわせてテーマを選び取って、文をつくってまいりました。文末に示しています「初出」からもおわかりのように、なかには、地元の文化雑誌へ寄稿したものもあります。自分の研究成果の断片的記録として思い出に残る「郷土人礼讃」になっていることを願っています。
(二〇二一年初夏)