※全文をPDFファイルでダウンロードしてご覧いただけます。 [PDFファイルについて] 『著作集24』PDFダウンロード (1.8MB) 更新日:2025年2月11日
ここに公開する著作集24『残思余考――隠者の風花余情(上)』は、いわば著作集13『南阿蘇白雲夢想』の続編に相当するもので、次の三つのパートによって構成されています。 第一部 山野に生きる(日記編) 第二部 火の国不死鳥(俳句編) 第三部 白雲に夢想す(短歌編)
隠者のごとき現在の私の暮らしは、人里離れた阿蘇南郷谷の山中、風花漂うなか、モリスに遊び、憲吉を書き、一枝を論じ、さらには逸枝や道子といった火の国の女たちに興じる研究と、食事をつくり、庭いじりをし、温泉を楽しみ、加えて野生の動植物に歓喜する生活とが両輪となって成り立っており、過ぎ行く時間の合間にあって、かかる研究と生活にまつわる雑多な余念が、途切れることなく、頭のなかを行き交っています。著作集22と23の『残思余考――わがデザイン史論』が研究の側面を扱うものであるとするならば、続くこの著作集24と25の『残思余考――隠者の風花余情』は、生活面を彩る流浪の情感を率直に書き残すものです。
第一部「山野に生きる(日記編)」は、普段の森の暮らしを短く描写した日記文を集めたものです。第二部「火の国不死鳥(俳句編)」と第三部「白雲に夢想す(短歌編)」は、俳句と短歌の形式を借りた創作文です。どれも、一年ごとの編集となっています。いよいよこれよりのち、筆が尽きるまで、自身の生活と暮らしにかかわる一片一個の思いを拾い上げ、それを文にし続けたいと思います。
最後に、この巻のタイトルに用いました「残思余考」という用語につきまして書き記します。著作集1から著作集15までを「中山修一著作集」の正編とするならば、著作集16以降の各巻は、その続編に相当します。つまりこれらの巻は、正編を受けての「残余の思考」という連続する流れに沿った副産物として成り立っているのです。こうした事情を背景として、「残余」と「思考」のふたつの単語が合成され、「残思余考」という独自の複合的造語が新たにここに誕生したのでした。この用語を第22巻から第26巻までの著作集最後の五つの巻に適用いたします。
二〇二四年一二月二日 師走に入ったいま、南阿蘇の森のなかの寓居にて 中山修一
【執筆継続中】