※全文をPDFファイルでダウンロードしてご覧いただけます。 [PDFファイルについて] 『著作集5』PDFダウンロード (26.2MB) 更新日:2024年4月5日
ここに公開する著作集5『富本憲吉研究』は、富本憲吉というひとりの人間の主たる特徴をなすモダニストとしての側面に焦点をあて、その文脈に沿ってその生涯を描いたものです。
工芸は、あるいはデザインは、誰のためにあるのでしょうか。その場合の形や色や模様は、どのような観点に立って造形されなければならないのでしょうか。そのとき、必要とされる製作の手段は、手なのでしょうか、それとも機械なのでしょうか。こうした主題に対して富本憲吉は、その生涯にあって、どう対峙し、思考したのでしょうか。
私は、この著作集5『富本憲吉研究』の執筆をとおして、夫婦や家族という集団的な単位からは逆に見落とされがちな、これ以上分割できない個という単位において凝縮されている、富本憲吉の生き方の一端を歴史的に探索する機会をもつことができました。読者のみなさまには、「富本憲吉という生き方――モダニストとしての思想を宿す」――この論点のもと、一緒に検討に加わっていただければ幸いです。
二〇一九年九月五日 秋へ向かう阿蘇南郷谷の小さきわが庵にて 中山修一