01.兼題[虫]
虫鳴かず 秋の来る日が 疎ましい
虫消えて 音無き空虚 耐えられぬ
虫たちも 空を見るのか 月が在る
(二〇二三年一〇月二七日)
02.兼題[七五三]
七五三 心を揺する 響きあり
七五三 写真館に 足が向く
手に揺られ 家路を急ぐ 千歳飴
(二〇二三年一一月一〇日)
03.兼題[冬構え]
赤も黄も すべて燃やして 冬構え
冬構え 山野に消えし 人の影
庭の木々 身ぐるみ捨てて 冬構え
(二〇二三年一一月一七日)
04.兼題[落葉]
さくさくと 足から伝わる 落ち葉声
落葉の 錦絵踏むなり われの悦
落葉を 集めて燃やし 年終わる
(二〇二三年一一月二四日)
05.兼題[手]
少しずつ わが幼子の 手を離す
ひらひらと 手を差し出せば 落ち葉舞う
手をにぎり 明日また来てと 母は言う
(二〇二三年一二月一日)
06.兼題[おでん]
白き庭 きょうもあしたも おでん鍋
こたつ人 おでん食らって 足伸ばす
おでん見て 何から食べる 湯気のなか
(二〇二三年一二月八日)
07.兼題[薬喰い]
ハンターの 人影多し 薬喰い
薬喰い あと十年 いのち延び
土鍋沸く 森の生なり 薬喰い
(二〇二三年一二月一五日)