01.テーマ[白]
白い帆に 白き風受け 走りゆく 葉山の海の スナイプの群れ
木原山 白白白の 風流れ 花を摘んだり 虫を採ったり
いよいよと 白装束に 身を包み 別れの歌に さくら舞い散る
(二〇二六年一月八日)
02.テーマ[朝]
夜が明けて 変わらぬ今日も 一筋の 光差し込む 木々のすき間に
一夜過ぎ 雨戸を開けて 見渡せば 白の世界に 点々の跡
根子岳を 真っ赤に染める 朝の陽に 言葉なくして カメラを向ける
(二〇二六年一月一五日)
03.テーマ[機械]
喜寿の歳 体も機械 それならば いざ休もうぞ さあ明日のため
はからずも 時計止まりて あわてずに 電池を換えて 動き待つとき
夢うつつ 果たしてなるや 問いただす 機械が自然 自然が機械
(二〇二六年一月二二日)
04.テーマ[言えなかったこと]
思い出は 言うも言わぬも そのときの とらわれし身の ああ無知無情
はかなくも 口に出そうが 閉じようが いずれ後悔 身を重く打つ
勇気なく 言わずにしまう この思い 消えず流れず 闇玉手箱
(二〇二六年一月二九日)
05.テーマ[手]
言葉なく 手を差しのべて 求むれば 明日のわが身の 無なるに気づく
刻まれし わが手のしわに 問いかける 生きたあかしか それとも予告
手が動き 足が動いた きのうまで 思えばそれは 夢のからくり
(二〇二六年二月五日)
06.テーマ[街]
ひとつ三つ 街に灯りが ともるとき 山から眺め 人の香を知る
街は街 山は山なり 夜明け前 目覚めて今日も 陽のひかり抱く
街を出て 群れを断ち切り 森のなか ひとり味わう 孤独の歓喜
(二〇二六年二月一二日)
07.テーマ[地球]
旅のなか 地球を知りて われを知る わが身小さく 米粒もなし
地球儀を 回して遊ぶ この子らも いつか知ろうぞ 殺戮の星
だれもみな 生まれしここは ひとつ星 愛しくもあり 苦界でもあり
(二〇二六年二月一九日)
08.テーマ[ふと立ち止まったこと]
自分から ふと立ち止まり 考える これもよしかな それもまたよし
立ち止まる 暇があるなら もう一歩 いのちは待って 否くれません
そうはいえ 迷いの果てに 身を置くも これも人間 休んで包め
(二〇二六年二月二六日)
09.テーマ[手]
手を見れば 己の過去の 品行が 刻まれている ようで怖い
寒空に 口も開かず 手も閉じて 無を友とする 路上者ありき
打つ手なし すべてをなくし うなだれて それでも見える 地と水の彩
(二〇二六年三月五日)
10.テーマ[街]
久々に 街に下りて 買い物す レジで一言 人の香を知る
山下に かすかに見える 街の灯を 手もとに集め 言問うてみる
街はまち 山はやまの そのいのち 絶えて久しい われ消ゆるのみ
(二〇二六年三月一二日)
11.テーマ[旅]
旅行けば 見知らぬ人の 声聞けり 西に何何 東はあれか
雨降れば さすらい人が 走り出す どこへたどるか 行き先もなく
旅に出て 旅に疲れて わらじ切れ にじむ血もよし また旅に出る
(二〇二六年四月九日)
12.テーマ[初めて会った時]
遠くから 再び目にす そのときも 最初と同じ 声も言葉も
幼き日 はじめて食べた あの味が 時移れども 脳裏を満たす
はじめては はじめてでなく いにしえの 夢まぼろしの 再来しもの
(二〇二六年四月一六日)
13.テーマ[雨]
突然の 雨に打たれて 急ぐ人 見ればその髪 非日常なり
濡れるとき 諦め早く 立ち止まり 打たれる滝に もはやわれ消え
しみじみと 雨音聞いて 寝返れば それでも襲う 雨の足音
(二〇二六年四月二三日)
14.テーマ[色]
六色が 一二色へと クレヨンが 増える驚き 子は隠さない
新緑の 輝き進む 庭の木々 色と色との 違いを競う
色あせる ああそのものの そのときの 消える思いは われも同じ
(二〇二六年四月三〇日)
15.テーマ[数字を入れて詠む]
一年が 三六五の陽 運べしも 陰もまたある 三六五の闇
一瞬に 消えゆく年に すがれども 抜かれて残る 老いたるわが身
ひと月も もう一月も 待ちながら 帰り来ぬ人 ああ沖の宮
(二〇二六年五月七日)
16.テーマ[窓から見えるもの]
窓越しに 春に見えるは 下草の それに隠れて 子狸が行く
見上げれば 天に伸びたる 桜色 風雨来たりて 乱れ舞い散る
目をやれば 枝に止まりし フクロウの 威厳と寂静 人を凍らす
(二〇二六年五月一四日)
17.テーマ[表]
表にして グラフつくって 見る推移 わが健康の 明日を占う
表なく 裏もなくなり ただひとつ わが魂に そっと手をやる
何気なく 表裏のあいだを さ迷えば 遠慮するなと 大魔神言う
(二〇二六年五月二一日)
18.テーマ[雲]
若き日に 誰しも思う ことありき 雲に乗りたし 空を飛びたし
憧れの わが職業は 雲の上 いつか行きたし かの地に向けて
もくもくと 入道雲が 湧きたって こっちへ来いと われを呼ぶなり
(二〇二六年五月二八日)
19.テーマ[雷(かみなり)]
雷が 電気を奪い 暗闇に 懐中電灯 雷を打つ
ギザギザと 空を引き裂く 閃光に ひとつ遅れて 耳元に音
雷が 老木倒し 立ち去るも 道はふさがれ 人立ち止まる
(二〇二六年七月九日)
20.テーマ[帰り道で]
夕暮れの 帰り道でも 会えるなら そっと傘持ち 駅へと急ぐ
降り出した 帰りの道を 足早に 急ぐあの人 わが夫なり
あの人に 会えてふたりの 帰り道 ちょっと寄り道 のれんをくぐる
(二〇二六年七月一六日)
21.テーマ[来]
来てほしい 来なくてもいい そう思い ああ暮れなずむ あの町へ行く
あすの日は 人もわれをも 五里霧中 来るも来ないも 行くも行かずも
ここへ来て これまでの道 振り返る ここにいるのは 自分か誰か
(二〇二六年七月二三日)
22.テーマ[月]
月明り 頼りて歩く この道は 帰りを捨てた 星空の道
ああ月に 照らされしこの わが身なら 虫と草花 ともに舞おうぞ
月と雲 流れ隠れて また顔を 見やる天空 にぎわい一夜
(二〇二六年七月三〇日)