中山修一著作集

著作集24 残思余考――隠者の風花余情(上)

第三部 白雲に夢想す(短歌編)

第四編 沈む陽に(二〇二六年/令和八年)

01.テーマ[白]

 白い帆に 白き風受け 走りゆく
 葉山の海の スナイプの群れ

 木原山 白白白の 風流れ
 花を摘んだり 虫を採ったり

 いよいよと 白装束に 身を包み
 別れの歌に さくら舞い散る

(二〇二六年一月八日)

02.テーマ[朝]

 夜が明けて 変わらぬ今日も 一筋の
 光差し込む 木々のすき間に

 一夜過ぎ 雨戸を開けて 見渡せば
 白の世界に 点々の跡

 根子岳を 真っ赤に染める 朝の陽に
 言葉なくして カメラを向ける

(二〇二六年一月一五日)

03.テーマ[機械]

 喜寿の歳 体も機械 それならば
 いざ休もうぞ さあ明日のため

 はからずも 時計止まりて あわてずに
 電池を換えて 動き待つとき

 夢うつつ 果たしてなるや 問いただす
 機械が自然 自然が機械

(二〇二六年一月二二日)

04.テーマ[言えなかったこと]

 思い出は 言うも言わぬも そのときの
 とらわれし身の ああ無知無情

 はかなくも 口に出そうが 閉じようが
 いずれ後悔 身を重く打つ

 勇気なく 言わずにしまう この思い
 消えず流れず 闇玉手箱

(二〇二六年一月二九日)

05.テーマ[手]

 言葉なく 手を差しのべて 求むれば
 明日のわが身の 無なるに気づく

 刻まれし わが手のしわに 問いかける
 生きたあかしか それとも予告

 手が動き 足が動いた きのうまで
 思えばそれは 夢のからくり

(二〇二六年二月五日)

06.テーマ[街]

 ひとつ三つ 街に灯りが ともるとき
 山から眺め 人の香を知る

 街は街 山は山なり 夜明け前
 目覚めて今日も 陽のひかり抱く

 街を出て 群れを断ち切り 森のなか
 ひとり味わう 孤独の歓喜

(二〇二六年二月一二日)

07.テーマ[地球]

 旅のなか 地球を知りて われを知る
 わが身小さく 米粒もなし

 地球儀を 回して遊ぶ この子らも
 いつか知ろうぞ 殺戮の星

 だれもみな 生まれしここは ひとつ星
 愛しくもあり 苦界でもあり

(二〇二六年二月一九日)

08.テーマ[ふと立ち止まったこと]

 自分から ふと立ち止まり 考える
 これもよしかな それもまたよし

 立ち止まる 暇があるなら もう一歩
 いのちは待って 否くれません

 そうはいえ 迷いの果てに 身を置くも
 これも人間 休んで包め

(二〇二六年二月二六日)

09.テーマ[手]

 手を見れば 己の過去の 品行が
 刻まれている ようで怖い

 寒空に 口も開かず 手も閉じて
 無を友とする 路上者ありき

 打つ手なし すべてをなくし うなだれて
 それでも見える 地と水の彩

(二〇二六年三月五日)

10.テーマ[街]

 久々に 街に下りて 買い物す
 レジで一言 人の香を知る

 山下に かすかに見える 街の灯を
 手もとに集め 言問うてみる

 街はまち 山はやまの そのいのち
 絶えて久しい われ消ゆるのみ

(二〇二六年三月一二日)

11.テーマ[旅]

 旅行けば 見知らぬ人の 声聞けり
 西に何何 東はあれか

 雨降れば さすらい人が 走り出す
 どこへたどるか 行き先もなく

 旅に出て 旅に疲れて わらじ切れ
 にじむ血もよし また旅に出る

(二〇二六年四月九日)