中山修一著作集

著作集24 残思余考――隠者の風花余情(上)

第二部 火の国不死鳥(俳句編)

第四編 福寿草と吾亦紅(二〇二六年/令和八年)

01.兼題[初詣]

 初詣 雪山眺めて 手を合わす

 おめでとう 言葉を重ね 落ち葉焚き

 はじかむ手 破魔矢とみくじ 初詣

(二〇二六年一月七日)

02.兼題[影]

 弱き陽の 影をけちらす 寒い風

 影を踏む 追いかけっこに 汗かく子

 影に住む 生き物たちの 別天地

(二〇二六年一月一四日)

03.兼題[雪]

 雪降れば 世界が変わり 楽と苦と

 しんしんと 闇夜に積り 夜が明ける

 雪のなか 長靴はいて 杖ついて

(二〇二六年一月二一日)

04.兼題[海鼠(なまこ)]

 こりこりと 歯ごたえ楽し お正月

 寒風と なまこのいのち 寒の岩

 海浜の 寒に住まう なまこかな

(二〇二六年一月二八日)

05.兼題[猫の恋]

 声上げて 闇夜を崩す 猫の恋

 日夜越え 闘い続く 猫の恋

 猫の恋 声消えて 離別かな

(二〇二六年二月四日)

06.兼題[土]

 土に生き 土に死する 運命に

 砂遊び 土いじりの子 いのち満つ

 人はみな 土を離れて 生きられぬ

(二〇二六年二月一一日)

07.兼題[鶯(うぐいす)]

 いまだ雪 春告げ鳥は いまいずこ

 ウグイスの 鳴き声遥か 森のなか

 枯れ枝に ウグイス色が 春を呼ぶ

(二〇二六年二月一八日)

08.兼題[牛乳]

 はじめての 搾りたてなる 牛の乳

 幼き日 脱脂粉乳 飲んだっけ

 パック入り どこから来たの このミルク

(二〇二六年二月二五日)

09.兼題[案山子(かかし)]

 列をなし 案山子が海へ 歩き往く

 この土地を 片足立ちで 守る君

 鳥たちも 涅槃の案山子 驚きぬ

(二〇二六年三月四日)

10.兼題[風]

 吹く風に 身をさらわれて 消えてゆく

 風の音 伝わる夜中 電気つけ

 風吹けば こころも少し にぎわいが

(二〇二六年三月一一日)

11.兼題[鳥の巣]

 鳥巣箱 掛けるも悲し 蛇の道

 口に草 郵便入れを 鳥の巣に

 鳥が舞う どこに赤子は 待つのやら

(二〇二六年四月八日)

12.兼題[春風]

 芽を出した 暖かい風 その下に

 雨を連れ 春風吹けば 散りし花

 南から 吹く風に旗 歓喜する

(二〇二六年四月一五日)

13.兼題[四月]

 花冷えに 過ぎし日少し なつかしむ

 タンポポに 菜の花加え 黄一面

 今日も降る 四月の雨に 芽が息吹く

(二〇二六年四月二二日)

14.兼題[島]

 島国は 大海知るか 問うてみよ

 島娘 嫁ぐ彼方も 同じ島

 小島にも 歴史と文化 ありにけり

(二〇二六年四月二九日)

15.兼題[葉桜]

 花散って 残る青葉の いのちかな

 残る葉に いまはなき 花の香をかぐ

 葉も花も いまや別れて 天と地に

(二〇二六年五月六日)

16.兼題[短夜]

 鳥鳴いて 短い夜が 明けてゆく

 いま少し 雨戸を開ける 時なれど

 今日こそは 夜明けを待たず 庭に立つ

(二〇二六年五月一三日)

17.兼題[更衣]

 入院は 衣替えさえ 忘れさす

 服買わず 四〇年も 同じ春

 総替えと 母に言われて 丸裸

(二〇二六年五月二〇日)

18.兼題[薔薇(ばら)]

 英国の 薔薇のお庭で ティータイム

 薔薇咲いて 赤のコートを 取り出した

 誇らしく 薔薇のアーチを 潜り抜け

(二〇二六年五月二七日)

19.兼題[香水]

 草と木の 香り立つ美味 胸に吸う

 言の葉に 人の香りを かぎ分ける

 かぐわしき 匂いにひかれ 月を見る

(二〇二六年七月八日)

20.兼題[白玉]

 若い日の しらたま乙女 逸枝さん

 白玉に あんをかけたる かき氷

 白玉の 白に魅せられ 涼み寄る

(二〇二六年七月一五日)

21.兼題[ソーダ水]

 ソーダ水 はしゃぎ暴れて 喉通る

 七色の 虹を彼方に ソーダ水

 ソーダ水 色も容器も 別世界

(二〇二六年七月二二日)

22.兼題[七夕]

 短冊に 書いて夢見る 七夕夜

 浴衣着て スイカを割りて 筆握る

 笹の葉に 短冊結び 星を見る

(二〇二六年七月二九日)