01.兼題[初詣]
初詣 雪山眺めて 手を合わす
おめでとう 言葉を重ね 落ち葉焚き
はじかむ手 破魔矢とみくじ 初詣
(二〇二六年一月七日)
02.兼題[影]
弱き陽の 影をけちらす 寒い風
影を踏む 追いかけっこに 汗かく子
影に住む 生き物たちの 別天地
(二〇二六年一月一四日)
03.兼題[雪]
雪降れば 世界が変わり 楽と苦と
しんしんと 闇夜に積り 夜が明ける
雪のなか 長靴はいて 杖ついて
(二〇二六年一月二一日)
04.兼題[海鼠(なまこ)]
こりこりと 歯ごたえ楽し お正月
寒風と なまこのいのち 寒の岩
海浜の 寒に住まう なまこかな
(二〇二六年一月二八日)
05.兼題[猫の恋]
声上げて 闇夜を崩す 猫の恋
日夜越え 闘い続く 猫の恋
猫の恋 声消えて 離別かな
(二〇二六年二月四日)
06.兼題[土]
土に生き 土に死する 運命に
砂遊び 土いじりの子 いのち満つ
人はみな 土を離れて 生きられぬ
(二〇二六年二月一一日)
07.兼題[鶯(うぐいす)]
いまだ雪 春告げ鳥は いまいずこ
ウグイスの 鳴き声遥か 森のなか
枯れ枝に ウグイス色が 春を呼ぶ
(二〇二六年二月一八日)
08.兼題[牛乳]
はじめての 搾りたてなる 牛の乳
幼き日 脱脂粉乳 飲んだっけ
パック入り どこから来たの このミルク
(二〇二六年二月二五日)
09.兼題[案山子(かかし)]
列をなし 案山子が海へ 歩き往く
この土地を 片足立ちで 守る君
鳥たちも 涅槃の案山子 驚きぬ
(二〇二六年三月四日)
10.兼題[風]
吹く風に 身をさらわれて 消えてゆく
風の音 伝わる夜中 電気つけ
風吹けば こころも少し にぎわいが
(二〇二六年三月一一日)
11.兼題[鳥の巣]
鳥巣箱 掛けるも悲し 蛇の道
口に草 郵便入れを 鳥の巣に
鳥が舞う どこに赤子は 待つのやら
(二〇二六年四月八日)
12.兼題[春風]
芽を出した 暖かい風 その下に
雨を連れ 春風吹けば 散りし花
南から 吹く風に旗 歓喜する
(二〇二六年四月一五日)
13.兼題[四月]
花冷えに 過ぎし日少し なつかしむ
タンポポに 菜の花加え 黄一面
今日も降る 四月の雨に 芽が息吹く
(二〇二六年四月二二日)
14.兼題[島]
島国は 大海知るか 問うてみよ
島娘 嫁ぐ彼方も 同じ島
小島にも 歴史と文化 ありにけり
(二〇二六年四月二九日)
15.兼題[葉桜]
花散って 残る青葉の いのちかな
残る葉に いまはなき 花の香をかぐ
葉も花も いまや別れて 天と地に
(二〇二六年五月六日)
16.兼題[短夜]
鳥鳴いて 短い夜が 明けてゆく
いま少し 雨戸を開ける 時なれど
今日こそは 夜明けを待たず 庭に立つ
(二〇二六年五月一三日)
17.兼題[更衣]
入院は 衣替えさえ 忘れさす
服買わず 四〇年も 同じ春
総替えと 母に言われて 丸裸
(二〇二六年五月二〇日)
18.兼題[薔薇(ばら)]
英国の 薔薇のお庭で ティータイム
薔薇咲いて 赤のコートを 取り出した
誇らしく 薔薇のアーチを 潜り抜け
(二〇二六年五月二七日)
19.兼題[香水]
草と木の 香り立つ美味 胸に吸う
言の葉に 人の香りを かぎ分ける
かぐわしき 匂いにひかれ 月を見る
(二〇二六年七月八日)
20.兼題[白玉]
若い日の しらたま乙女 逸枝さん
白玉に あんをかけたる かき氷
白玉の 白に魅せられ 涼み寄る
(二〇二六年七月一五日)
21.兼題[ソーダ水]
ソーダ水 はしゃぎ暴れて 喉通る
七色の 虹を彼方に ソーダ水
ソーダ水 色も容器も 別世界
(二〇二六年七月二二日)
22.兼題[七夕]
短冊に 書いて夢見る 七夕夜
浴衣着て スイカを割りて 筆握る
笹の葉に 短冊結び 星を見る
(二〇二六年七月二九日)