現在開講中、過去に開講した授業科目、客員教授科目などについて、説明しています。以下の一覧から、ご覧になりたい科目をクリックして下さい。
2013年度 | 2012年度 | 2011年度 | 2010年度 | |
2009年度 | 2008年度 | 2007年度 | 2006年度 | 2005年度 |
2007年度後期 | 多国間条約交渉論 | International Environmental Law |
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海外実習 「国際環境条約交渉及び環境条約事務局の視察」 |
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2007年度前期 | 国際協力法演習 | 法学部・国際機構法 (大学院・国際機構法特別特殊講義) |
2007年度 客員教授・ 非常勤講師科目 |
国際協力法特論 (外務省・高野修一先生) |
Law of the International Civil Service (岡山大学・黒神直純先生) |
詳細な授業計画や参考資料に関してはこちらをご覧下さい。
設置までの経緯(2006年度実施した試験的な模擬条約交渉の写真など)については、こちらをご覧下さい。
授業概要:
法は極めて実践的な道具である。この授業は、「国際法が現場でいかに使われているか」、そして「国際法を現場でいかにして使うか」という問題意識をもって、多国間条約をめぐる国際交渉を具体的にとりあげ、その分析および実習を通じて、国際法ないし法的技術を実践的に応用する力を身につけてもらうことを目的とする。本授業は、日本語コースに位置づけられるが、多国間条約交渉が通常英語で行われることに鑑み、日英両言語を駆使して授業を行い、英語によるプレゼン能力(presentation)、起草力(drafting)、そして国際法実践力(practical use of international legal techniques)を養うことも、重要な目的としている。具体的に、授業前半では、多国間条約の構造やその運用を理解するために、具体的な条約制度(多国間環境条約ないしは南極関連条約の予定)を取り上げて、その形成・運用過程を分析し、その過程で問題となった国際法的論点を抽出・検討する。授業後半は、教員が実際に携わった条約交渉を再現し、模擬条約交渉を行う。(遺伝子組み換え作物等のバイオセイフティーに関するカルタヘナ議定書の下で交渉されている損害賠償責任制度、もしくはその不遵守手続制度、南極条約の下で交渉されている南極観光規制措置ないし南極海域バイオプロスペクティング活動規制措置などを予定しているが、受講者の関心等より異なる題材を取り上げることもあり得る。)
本授業を履修するためには、国際法の基礎的素養があることが望ましいが、授業中に提示する関連文献(必読文献および参考文献)を読みこなすことができれば、事前に国際法の知識がなくとも、授業を理解することは可能と思われる。英語コースの”International Environmental Law”を同時履修することを強く勧める。授業は日英両言語で行うが、外交交渉の実践はほとんどが英語となる。
授業形式および使用テキスト:
多国間条約の構造の理解を深める授業前半は、基本的に講義形式で行う。但し、学生との質疑応答を通して理解を深めていくので、関連文献・資料を事前に読んでくることは必須である。後半の実習(模擬交渉)の形式は、参加人数等も勘案しながら、授業中に提示する。必読文献(論文、教科書の一部等)は教員が用意して配布する。条約集は必携。
評価の方法:
授業時の質疑応答ならびに議論への参加とその貢献度、実習(模擬交渉)への取り組み方などを総合的に判断して、合計100点満点で行う。無断で2回以上欠席したものに対しては単位は与えられないので注意すること。授業の予定、課題、論点:
授業予定の詳細については、授業開始時に提示する。参考文献:
村瀬信也『国際立法』(東信堂、2002年)。I.W. サートマン編著『多国間交渉の理論と応用:国際合意形成へのアプローチ』(慶應義塾出版会、2000年)。田邊敏明『地球温暖化と環境外交:京都会議の攻防とその後の展開』(時事通信社、1999年)。Richard E. Benedick, Ozone Diplomacy: New Directions in Safeguarding the Planet (enlarged edition, Harvard University Press, 1998). Alexander Gillespie, Whaling Diplomacy: Defining Issues in International Environmental Law (Edgar Elgar, 2005).
The details of the new class schedule and contents are here.
Description:
This course aims (1) to provide a basic knowledge of international environmental law; and (2) to understand how international law and legal techniques are actually used in practice, especially in the field of environmental treaty regime building.
In order to achieve (1) above, this course will provide the students an overview of the historical development of international law related to the protection of the environment. The course will then pick up four main issues, namely (a) the law of state responsibility not to cause transboundary environmental damage (the Trail Smelter case); (b) environmental treaty-making process; (c) non-compliance mechanisms; and (d) liability. In this first part, students will read relevant textbooks and articles on the topics and, through the discussion in the class, will deepen the understanding of the issues involved. In order to achieve (2) above, the students will take up a specific diplomatic negotiation case in which the instructor was personally involved with, and will analyze the legal issues related to it. The students will also learn the basic techniques of drafting of international legal instruments. At the end, if possible, a mock diplomatic negotiation will be conducted.
The first-year students who have no previous knowledge of international law are encouraged to take “international cooperation law” simultaneously. The second-year students or those who have some knowledge of international law are encouraged to register also for “Multilateral Treaty Negotiation.”
Class format and Texts:
The class will consist of a combination of lectures and seminar-style presentation and discussion. The class will be conducted in English. The basic reading materials will be provided in the class. The textbook will be announced and posted later.
Evaluation:
The students will be evaluated on the basis of a combination of class participation, presentations, and occasional mini-exams. Your active participation in the mock diplomatic negotiations will be evaluated particularly high.
Class schedule:
The details of the class schedule will be announced and posted later.
References:
Philippe Sands, Principles of International Environmental Law (second edition, Cambridge UP, 2003). P. Sands and P. Galizzi eds., Documents in International Environmental Law (second edition, Cambridge UP, 2004).
目的・担当教員
国際環境条約交渉の現場及びそれをサポートする環境条約事務局を視察することにより、環境条約の運営実施に関する法政策がいかに決定されるか、環境条約事務局で働く国際公務員がいかなる役割を果たしているかについて学習します。また、条約交渉に参加するための諸手続(NGOの設立、参加要請書の作成・提出、登録の手続など)を学生自ら行うことにより、国際会議への参加方法等についても学びます。
本実習は、後期開講の「International Environmental Law」及び「多国間条約交渉論」と有機的に関連させて、学習の相乗効果を狙っています。
担当教員は国際協力法講座所属教員(柴田明穂統括)です。
期 間:
10月1日、8日、15日:国内における事前研修
10月21~28日:国際環境条約交渉の視察・研究
※NGO設立、参加登録等の手続は6月より開始します。
場所・視察機関
カナダ・モントリオール
バイオセイフティーに関するカルタヘナ議定書「賠償と救済に関するアドホック公開作業部会」第4回会合
単位:後期2単位
参加資格・人数・選抜方法
学業成績が優秀で、国際会議における議論が理解できる語学力(国連公用語)を有していること。参加する学生は旅行傷害疾病保険に加入しなければなりません。
3~5名程度。但し、会議参加登録人数に制限が加えられる場合は、その制限を上限とします。
応募者多数の場合は、成績等を参考にし、将来の志望進路等も勘案し、場合によっては面接により、担当教員が参加学生を決定します。2007年度後期「多国間条約交渉論」を履修する学生を優先します。
単位認定方法
実習期間中の貢献度およびレポートによります。
履修希望提出手続・問い合わせ先
6月29日までに教務係に申し込んで下さい。その後担当教員より、電子メールにより選抜等に関する連絡を差し上げます。
本実習の内容についてご質問がある時は、柴田(akihos [at] kobe-u.ac.jp)まで。学生の報告に関しては、「海外実習」のページをご覧下さい。
平成19年度教育研究活性化支援経費
「国際公務員基礎スキル向上のためのカリキュラム」からの旅費等の補助について
1.補助の目的
国際公務員を自らの進路として真剣に検討する参加者が、国際公務員基礎スキル向上に向けた海外実習において、その観点から海外実習前・海外実習中及び海外実習後の関連諸活動に意欲的に従事し、各人のキャリアプランに役立てることを奨励する。2.募集対象となる海外実習と対象者
「国際環境条約交渉及び環境条約事務局の視察」(統括:柴田明穂、掲示済み)
(すでにこの海外実習に応募している者もこれから新規応募する者も、別途、この補助金への応募を下記要領にて行って下さい。この海外実習に参加する学生全員が、必ずしも本件補助の対象になるものではありません。)
なお、本経費から補助を受ける学生については、予定している10月21日~28日の条約交渉視察に加えて、前後3~4日間に、モントリオールないし米国ニューヨーク所在の国際機関視察を追加する予定である。詳細は、補助対象者と協議しながら決定する。3.補助の内容
旅費(格安航空券)及び日当(8000円/日で計算)の一部もしくは全部を補助するが、具体的な金額は後日通知する。本事業による補助の額が旅費と日当の合計より少ない場合には、不足分につき研究科の用意する補助(1人5万円を上限とする、ただし単位取得者のみ)にも申請できる。4.応募資格要件
- 国際公務員を真剣に目指していること。
- 語学力向上に向けた努力をしていること。
- 専門性向上に向けた努力をしていること。
- 7月5日「外交講座:国際公務員になるには」セミナー(2限・GSICS棟201教室)に出席し、質疑応答に積極的に参加すること。
- 2007年度後期「多国間条約交渉論」を履修する学生を優先する。
5.補助を受けた者の帰国後の義務
(i) 海外実習後の報告会での発表(複数の海外実習の合同報告会の予定)
(ii) 報告書の提出(国際公務員としてのスキルという観点からどのような点に留意して海外実習に臨んだか、海外実習中の実践においてこれに関連して何を学んだか等。報告書には、写真・映像で構成されるDVD作成を含み、また、文章・写真等はウェブ等で公開する予定。)
6.応募書類の記載事項(A4紙に英語にて記載すること。書式は自由。)
- 応募資格要件4(i)について、自らのキャリアプランを具体的に記載すること。
- 応募資格要件4(ii)について、TOEFL, TOEIC, 英語検定等の点数やレベル、その他、語学力向上のために現在行っている具体的な取組について記載すること。
- 応募資格要件4(iii)について、過去、現在及び将来どのような授業を履修し、またどのような方法で、いかなる専門性をつけようとしているか、具体的に記載すること。
- 博士後期課程への進学予定の有無、進学希望大学院等を具体的に記載すること。
- カナダ・モントリオール及び米国・ニューヨーク所在の条約事務局ないし国際機関につき調査し、(1) どの事務局・機関にどのような目的で視察を行いたいか、(2) 誰と会ってどのような話しをしたいか、(2) そのような視察・面談の機会を具体的にどのように作るつもりか(実際に学生にアポを取ってもらいます)について、具体的に記載すること。
7.募集期間
6月29日(金)午後5時まで。
8.応募書類提出先
応募書類のプリントアウトバージョンは、上記期日までに、名前、学生番号、指導教員を明記の上、GSICS教務係に提出すること。
加えて、応募書類の電子媒体(ワード)を、上記期日までに、柴田akihos [at] kobe-u.ac.jpまで送付すること。
4月10日(火)
2限演習:自己紹介、国際法プログラムのカリキュラム、指導方針等の説明。
3限演習:1年生向けオリエンテーション、授業計画の説明。4月17日(火)
2限演習:1年生向け基本書講読開始(担当:林、柴田)。
3限演習:英語基本書講読開始(担当:五十嵐)この後については、林先生のHPを参照下さい。
授業計画および予習教材
4月9日
講義の概要説明
テーマ1:南極条約体制の概説必読文献:林司宣「第3章極地」、63-87頁(事務にて配布)
参考資料:南極条約体制基本資料(事務にて配布)
参考文献:柴田「国際法形成フォーラムとしての南極条約協議国会議の『正当性』」国際法外交雑誌第99巻1号(2000年)、1-31頁。
4月16日
テーマ2:南極条約事務局設置交渉の分析
必読文献:柴田「南極条約事務局設置の法的意義」(4/9授業時配布)
4月23日
テーマ2:南極条約事務局設置交渉の分析、国際機構法的論点の整理
必読文献:柴田「南極条約事務局設置の法的意義」(4/9授業時配布済み)
参考文献:林一郎「南極条約体制と国際レジーム」熊本法学85号(1995年)、1-33頁。
4月30日 休日
5月7日 休講 補講日5月16日(水)
5月14日
テーマ3:国際機構の概念・要件:南極条約事務局(協議国会議)は国際機構か?
必読文献:植木俊哉「第7章国際組織法」、169-194頁(4/16授業時配布済み)。
参考文献:黒神直純「国際事務局の成立とその発展」岡山大学法学会雑誌52巻4号(2003年)、1-45頁。
5月16日(水)4限(補講)
テーマ4:国際機構の史的展開、構成、意思決定、法主体性
必読文献:小寺彰「国際組織の誕生」(4/23授業時配布済)
参考文献:佐藤哲夫『国際組織法』第1章、第2章。
参考文献:位田隆一「国際機構における表決制度の展開」林他編『国際法の新展開』
(東信堂、1989年)、115-151頁。
5月21日
テーマ6★:国際機構の国際法主体性:ICJ損害賠償事件の検討
必読判例:ICJ損害賠償事件『国際法判例百選No.13』(5/14授業時配布済)
必読判例:Reparation Case(ICJ Report, 1949)(5/14授業時配布済)
参考文献:小寺彰「国際機構の法主体生-歴史的文脈の中の『損害賠償事件』」国際法学会編『日本と国際法の100年第8巻 国際機構と国際協力』(三省堂、2001年)、55-74頁。
参考文献:佐藤哲夫『国際組織法』第6章
5月28日
テーマ6:国際機構の国際法主体性:ICJ損害賠償事件の検討(継続)
6月4日、11日 全学休校。補講は行えないので、予習・復習課題を課す。
6月18日
テーマ6:国際機構の国際法主体性:ICJ損害賠償事件の検討(継続)
テーマ7:国際機構の権限、条約締結権:ATCMは条約締結権限を有するか
必読文献:植木(2004年)、前掲書。
参考文献:佐藤哲夫『国際組織法』第8章
参考文献:浅田正彦「国際機構の法的権能と設立文書の法的性格」安藤他編『21世紀の国際機構:課題と展望』(東信堂、2004年)、99-171頁。
6月25日
テーマ8:国際機構の責任:南極条約事務局は国際責任を負うか
必読文献:植木俊哉「国際組織の国際違法行為と国際責任」国際法外交雑誌90巻4号(1991年)、48-82頁。(5/21授業時に配布済)
参考文献:黒神直純「国際機構の内部的責任について」国際法外交雑誌101巻2号(2002年)、77-100頁。
参考文献:佐藤哲夫『国際組織法』第8章
7月2日(月)
テーマ9:国際機構の活動:地球環境保護に関する国際機構の展開
必読文献:西村智朗「環境保全に関する国際制度」家正治編『講義国際組織入門』274-284頁(7/3授業時配布)。
参考資料:Declaration of the United Nations Conference on the Human Environment (1972) and UNGA Resolution 2997 (XXVII)(1972)(7/3授業時に配布)。
7月9日(月)
テーマ10:環境分野における組織的実体の展開:「自立的組織取極」論
必読文献:柴田明穂「締約国会議における国際法定立活動」世界法年報第25号(2006年)(7/3授業時に配布)。
参考文献:R. Churchill and G. Ulfstein, “Autonomous Institutional Arrangements in Multilateral Environmental Agreements,” 94 AJIL (2000).
7月30日(月)期末試験(詳細は事務に確認下さい
留意事項:
全て持ち込み可。(授業で配布した資料・文献及び条約集は手元にあることを前提に試験問題を出します。)
具体的な事実・課題に法(理論)を適用して回答していただく問題を出します。関連する国際機構法及び法理論を事前に整理して簡潔に提示できるように準備されることを奨励します。
採点基準は、(1) 回答の論理的展開力(50%)、(2) 具体的事案に適切に法(理論)を適用する力(30%)、(3) 関連する法、判例、学説等の知識(20%)です。2006年度試験問題
こちらからダウンロードできます。
【バーゼル条約模擬交渉】授業内容
4月14日(土)
1.政策の立案と実施
事例:エネルギー安全保障
(問題の所在、主要プレーヤー、論点整理と調査対象の特定、交渉の枠組み、政策オプションと判断、交渉の実施)
*油田のコンセッション延長交渉に関する具体的事例を題材として、エネルギー安定供給の観点、産業政策の観点、相手国との外交関係の観点などから論点整理を行い、日本政府の対応についての政策判断をシミュレートする。外交交渉の考え方についての基本的視座を提供するものである。2.地球環境問題
・地球環境問題への取組み(国連、G8、国際条約、国際機関とNGO)
・3Rイニシアティブとバーゼル条約規定
・バーゼル条約関連事案の解説
*地球環境問題への国際社会の取り組みを概観した後、日本政府の推進する循環型社会の構築に向けた、廃棄物に関する3Rイニシアティブを説明する。次に、それとの関連で、国内法上の廃棄物の定義の違いからバーゼル条約の解釈をめぐり二国間で実際に問題となった事案について、両国の国内法やバーゼル条約付属書Ⅳ(「廃棄物の定義」)起草過程などを確認しながら解説する。この事案は後日行われる二国間模擬交渉における題材となる。4月21日(土)
3.地球環境条約におけるCompliance Mechanism
・地球環境問題と共通利益
・義務違反への対応オプション
・不遵守手続:モントリオール議定書型/バーゼル条約型
*環境条約の遵守メカニズムには、制裁的なモントリオール議定書型と支援的なバーゼル条約型が存在する。これら相違のある遵守制度について、実際に各々の遵守委員会設立文書を用いてその内容を確認し、また日本の外交姿勢を解説する。議論の前提となる環境条約の特殊性と遵守の意義については、トレイル溶鉱炉事件判決、ストックホルム宣言などを用いて説明する。4.交渉中の遵守メカニズムをめぐる多国間交渉
・ロッテルダム条約での交渉
・ストックホルム条約の交渉に向けての展望
*実際に外交官が多国間交渉に望む際に、どのような枠組みでその“ゲーム”を捉えているのか。担当教員の環境条約の遵守メカニズムの設立をめぐる多国間交渉の経験から、JUSCANZ、EUなどの交渉グループや個々の国家が織り成す多国間交渉のダイナミズムの中で、各プレーヤーはどのような役割を果たしていたか、日本はいかなるプレーヤーにどのようにして働きかけたかなど、図などを交えながら解説する。5月19日(土)
5~6.ワシントン条約(CITES)
・条約の概要と決議、過去の国家実行
・遵守ガイドライン案とJapan Comment
*決議、決定を通じて複雑に発展するCITES遵守制度について、条文および関連文書を用いて議論する。交渉中のCITES遵守ガイドライン草案について、その交渉状況や問題点を指摘した上で、日本が当ガイドライン関して、‘実行’の範疇を過去の決議・決定に制限すること、および常設委員会の権能を場合にごとに整理し制限することを目的として提出したコメントについて解説する。6月30日(土)
7.二国間模擬交渉の準備(1)
・交渉手続き等の確認
・国際法の法源(慣習法、条約、国際機関の機関決定の意義)8.二国間模擬交渉の準備(2)
・対処方針の作成
*学生が主体となり、各自が準備した上記バーゼル条約関連事案に関する担当国の対処方針案をもとに、チームとしての対処方針を形成する。担当教員より適宜アドバイスを受ける。7月7日(土)公開授業
9~11.模擬交渉の実施
*二国間模擬交渉の概要
・バーゼル条約関連事案を取り上げる。
・各チーム(2~3名で編成)が、いずれかの当事国を担当。
・各自の対処方針をベースに作成されたチームごとの対処方針に基づき主張。
・最初に各チーム一名が主張の趣旨を論じ、その後にチーム毎に往復して主張する。※バーゼル条約模擬交渉(7月7日)公開授業)の講義風景は↓になります。
今回の公開模擬交渉は、有害廃棄物等の越境移動を規制するバーゼル条約の下で実際に起こった事件をモデルとして、違法取引をめぐる輸出国X国と経由国Y国との間の二国間交渉として行われました。
事案の概要は以下のとおりです。X国から書類上は再利用目的の「中古テレビ」とされるコンテナがZ国に輸出されようとしていました。
経由地であるY国での積み替え作業中にコンテナの中身を点検したところ、破損したテレビ(全体の1割程度)やY国安全基準を超える鉛を含有するブラウン管・電子機器制御基盤などの部品が紛れ込んでいたことが発見されました。Y国は、当該コンテナ積載物は、バーゼル条約上及びY国内法上の有害廃棄物であり、同条約に基づく事前通知がなされていない違法取引であり、当該積載物のX国への引き取りと保管料のX国による支払いを求めました。X国は、当該コンテナ積載物は、バーゼル条約の規制対象外である再利用目的の中古品であり、不法取引にはあたらないと主張しました。
このような状況の中で、学生はX国とY国の代表となり(各3チーム)、まず外交交渉を開始しました。
第1チームは、X国(姜、張、中山)対Y国(奥野、桑田、野中)です。2回外交交渉をしたものの解決策が得られず、第3回目の交渉開催を提案したところで、傍聴していたバーゼル条約事務局長より、バーゼル条約第13条の報告義務の履行(国内法の報告、有害廃棄物越境移動の現状報告など)にX国、Y国両国とも問題があり得るとして、遵守委員会要綱第9項(c)に基づき、遵守委員会に本件を付託するとの提案がありました。
第2チームは、X国(清水)対Y国(山下(維)、浜田、堀内)です。交渉中、Y国山下(維)代表より、本件を締約国会議(COP)に提起するとの提案がなされ、急遽、締約国会議役員会(Bureau)が開催されました。役員会は、本件を次回締約国会議の議題とすることを承認しました。他方、X国の清水代表は、本件が法的問題を含んでいるとして、国際司法裁判所(ICJ)に付託しました(この模擬交渉では、ICJの強制管轄権を前提としています)。
第3チームは、X国(上田、山下(朋))対Y国(秋光、藤井)です。第1回の交渉後、両国の非公式な折衝の結果、第2回交渉時には、両国が受け入れられる妥協案の枠組みが提示されました。交渉仲介者(高野教授)からも賞賛される、自己の立場を限界まで主張してぎりぎりのところで妥協がなされた内容でした。
遵守委員会(高野、柴田、秋光、上田で構成)に議論の場を移した第1チームは、Y国に非難が集中しました。すなわち、再使用目的の物品をも事前通知の対象とするY国国内法は、バーゼル条約よりも厳しい基準を課しており、これを条約事務局に通報していないことは重大な義務違反であるとの認識が共有されました。X国は、委員会の判断に同意し、Y国は、特に抗議をすることもありませんでした。そこで遵守委員会は、Y国に対する厳重注意を発出すると共に、附属書Ⅸ注19の規定により、「直接再使用(directory reuse)」はバーゼル条約の義務の対象外とする、との条約解釈に関わる勧告をも全会一致で決定しました。
これに対して、Y国は遵守委員会の勧告は認められないとして、本件を締約国会議に付託することを直ちに求めました。
第2チームの紛争解決の場はICJに移されていました。ところが、両者は事前の非公式折衝によりY国がX国に対して大幅に譲歩したことから、ICJへの付託を取り下げることになりました。しかし、交渉仲介者(高野教授)からは、安易な妥協は認められないとの指摘を受けました。
いよいよ、最後の交渉の場は、COPへと移ります。第1チームY国と第2チームY国から付託のあった本件を、出席者全員参加の締約国会議で議論することになります。第2チームY国は、再使用を隠れ蓑にした有害廃棄物の不法取引を見逃したX国の責任問題についての議案を提出しました。これに対してX国は、不法取引について悪意は無くX国に責任はない、と主張しました。これに対してα国(いずれの立場でもない途上国=柴田)から、「X国の態度は甚だ遺憾である」として、当該コンテナ引き取りと保管料支払いの義務がX国にあるとする、X国非難決議を採択するよう提案がなされました。この提案については、コンセンサスを得られなかったため票決となりました。第2チームY国が棄権した結果、投票はX国3国、Y国2国、α国、そして議長(高野)で行われました。結果、賛成4(Y国にα国と議長)、反対3の多数決により、X国非難決議が採択されることとなりました。
締約国会議の非難決議を受けて、第3チームX国上田代表は、締約国会議によって求められた義務(引き取り義務、保管料支払い義務)はX国にはないことを求めて、ICJに提訴しました。ICJでは、X国山下(朋)代表、Y国藤井代表が主に弁論を行いました。「再使用目的」の有害廃棄物の移動がバーゼル条約の対象となるか否かという条約の解釈、及び、締約国会議の決議はICJが採用できる法源(法)となり得るか、バーゼル条約第9条1項の解釈(書類と異なる物品が混入されていたという事実をもって不法取引は成立するか)が主な争点となりました。裁判ではX国、Y国共に、有力な主張に欠け結果は引き分けとなりました。
約7時間の交渉を終え、最後に高野教授から、各チームの印象が述べられ、ベストネゴシエーターが7名選ばれました。全体の評価として、事前準備がしっかりとなされていたこと、ユニークな切り口で交渉に臨んだチーム、ダイナミックな展開を見せた試合に対して賞賛が述べられるとともに、もっと大胆な、動きのある交渉を行ってもよかったのではないかという評価もなされました。また、今回の交渉では、例えば、遵守委員会への事務局による付託など、X国、Y国から越権行為として抗議できる場面もあったのでないか、また、締約国会議での投票において、両国ともに、多数派工作する動きが不十分であったことが反省点として指摘されました。
Naozumi KUROKAMI
(Summer Intensive Seminar, July 31- August 3, 2 credits)Description:
This course will provide an overview of the Law of the International Civil Service. International Organizations can only act through human agents. They are called International Civil Servants. Today, there seems to be many legal norms surrounding staff members of International Organizations. Therefore, the purpose of this course will be to study a bundle of legal norms on International Civil Servants.Class format and Texts:
At the first part, the class will consist of a combination of lectures and discussions. At the second part, the class will consist of a combination of presentations and discussions. Students will be required to give presentations fully prepared.Evaluation:
Students will be evaluated on the basis of an active participation; attendance, discussion, presentations, research papers etc...Class Schedule:
Part 1 (Lectures and Discussions)
1. Introduction
2. History of the International Secretariat
3. Legal Status of International Civil Servants
4. Judicial Protection of International Civil Servants
5. Law of the International Civil Service and Law of International OrganizationsPart 2 (Presentation and Discussion)
6. Special Topic: Pressure on the UN Secretary General
Case Study: Case Concerning Dismissal of UN American Staff.
7. Special Topic: Secondment of Officials from National Civil Service
Case Study: Yakimetz Case (ICJ Advisory Opinion of 27 May 1987, Application for Review of Judgement No. 333 of the UNAT).
8. Special Topic: Privileges and Immunities
Case Study: Mazilu Case (ICJ Advisory Opinion of 15 Dec. 1989) and Cumaraswamy Case (ICJ Advisory Opinion of 29 Apr. 1999)
There may be changes in the schedule.References
1. Amerasinghe, C. F., The Law of the International Civil Service, 2nd ed., 2 Vols (Oxford U.P., 1994).
2. Akehurst, M. B., The Law Governing Employment in International Organizations (Cambridge U. P., 1967).
3. Langrod, G., The International Civil Service; Its Origins, Its Nature, Its Evolution (A. W. Sythoff, 1963).
4. de Cooker, C. (ed.), International Administration: Law and Management Practices in International Organizations (Martinus Nijhoff, 1990).
5. Jenks, C. W., The Proper Law of International Organizations (Stevens, 1962).Messages (Requirement!)
This is a short-term course. Therefore, participants must contact with the lecturer for a pre-consultation by e-mail (the address is as follows) in advance. Only students who will have been given guidance will be able to participate in the course.