ここでは、GSICS国際法プログラムの極めて特徴的な授業科目「多国間条約交渉論」について紹介します。この授業は、「実践的な国際法教育」を標榜する国際法プログラムの看板授業であり、従って、国際法プログラム所属の学生はほぼ例外なく受講をしています。同時に、この授業は、修得できる知識、知見、技術も多いのですが、それなりに負担の大きい科目でもあります。何度か実施した授業後の履修者アンケートでも、同じような反応を得ています。教員側においても、履修学生の規模やレベルに応じて、毎年少しずつ内容ややり方を改善して実施しておりますが、まだまだ試行錯誤の段階です。国際法プログラム所属の学生の方は、ここでの情報を基に、ある程度の「心の準備」をして履修していただくことをお勧めします。
2013年度 多国間条約交渉論:ICJ南極捕鯨事件の模擬裁判
2013年度の多国間条約交渉論は、国際捕鯨取締条約の解釈適用が問題となりオーストラリアが日本を国際司法裁判所(ICJ)に訴えた「南極捕鯨事件」を取り上げ、模擬裁判を行うことにしました。授業スケジュールとリーディングリストはこちら。
In 2013-14, we have conducted a moot court based on an actual ICJ case now pending before the Court, Whaling in the Antarctic (see the original class schedule). On 8 February 2014, the Australian team argued for total of 100 minutes that the Japanese so-called scientific whaling in the Southern Ocean is illegal under international law, whereas the Japanese team argued for total of 100 minutes that the Japanese scientific research whaling is legal under Article 8 of the International Convention for Regulation of Whaling. The judges composed of four professors from Kobe listened the pleadings attentively and posed acute questions to the Agents and Counsels from both Parties. At the end, a reception and a dinner were held to congratulate all the participants for their hard work.
Agent | Junko Miyasako | Agent | Yuki Morinaka |
Counsel | Giovanni Lamberti | Counsel | Mizuho Mori |
Bae Eun Ji | Jefferey Carrasiti | ||
Osamu Inagaki | Thitirat Thipsamritkul | ||
Registrar | |||
Judges |
Questions posed by the judges during the oral pleadings: see here.
Court order of 3 February 2014: Preparation for the oral pleadings: see here.
Court order of 10 January 2014: Composition of team members: see here.
Revised class schedule 2 December 2013: see here
2012年度 多国間条約交渉論:バーゼル条約遵守制度運用規則の改定交渉
A Contact Group to Negotiate the TOR of the Basel Compliance Mechanism was established to negotiate the proposed amendments of the Terms of Reference (TOR). The Contact Group is composed as follow:
Brazil | Hàlis Alves França |
Canada | Atsushi Morita |
Cyprus (EU) | Tomoko Sakurai |
India | Hitomi Fukuda |
Jamaica (Chair) | Akiho Shibata |
Japan | Sachie Yorinobu |
Mozambique | Yasuko Tanaka |
Myanmar | Nang Phyu Sin Than |
Nigeria | Osamu Inagaki |
Paraguay | Aldo Cano Cameroni |
Viet Nam | Ta Minh Thanh |
Secretariat | Masakuni Ueta |
The original negotiating document is proposed by the former chair of the Compliance Committee and looked like this:
After a first round of review of the negotiating document, on 2 February, the Group had before it a revised negotiating text like this:
A final third session of the Contact Group was held from 10:30 to 18:40 on Saturday, 2 February. The final agreed text, with professor’s comment and photos from the negotiation can be downloaded here.
Also, for the list of documents submitted by delegations, please see here.
Contact Group negotiation. |
Informal consultation on 9bis:Committee trigger: Canada agree? |
2011年度 多国間条約交渉論:バーゼル条約遵守制度運用規則の改定交渉
Parties | Representatives |
---|---|
Canada | Nao Nomura |
Cote d’Ivoire | Mai Asasora |
Indonesia | Eugenius Emanuel |
Jamaica(Chair) | Akiho Shibata |
Japan | Hiroki Morishita |
Nepal | Aatha Ranabhat |
Paraguay | Rodrigo Vasquez |
Vietnam | Nguyen Thi Minh Hanh |
Secretariat | Masakuni Ueta |
Result of the Negotiation
Original Proposal
Final Outcome
2010年度 多国間条約交渉論:カルタヘナ議定書『責任と救済』補足議定書の交渉
2010年度は、2010年10月名古屋の会合で実際に採択された、遺伝子組換え生物に起因する生物多様性損害に対処するための新条約「責任と救済に関する補足議定書」を題材として模擬交渉を行いました。もっとも授業では、実際に行われた交渉を単に再現するのではなく、国際法的論点に議論が集中するように交渉文書を教員が独自に修正し、手続規則も多数決が可能とするなどの交渉促進のための工夫をして、行われました。
2010年度多国間条約交渉論の第1の特徴は、受講者の多くが、名古屋で行われた実際の補足議定書交渉を現場で視察することから始めたことです。履修者アンケートの回答にもありましたが、実際の交渉を見ることより、授業で行う模擬交渉のイメージができたと共に、国益を背負って交渉する代表団の真剣さを肌で感じてもらえることができたと思います。授業で行う模擬交渉が、単なるゲームに終わってしまわないようにするためには、この視察は極めて効果的だった思います。名古屋で会議が開催されたことは、その意味でラッキーでした。
名古屋会議の視察を終えて神戸に戻ってから、模擬交渉に必要な基礎知識、特に、環境ライアビリティ制度に関する基礎知識を論文等を読んで修得し、授業でその理解を確認することを行いました。なお、2010年度は、前期に「国際環境法」を開講しており、多くの履修者が既に国際環境法の基礎知識があったことも、スムーズに交渉に入れる素地を作りました。
Nov.8: Basic knowledge of relevant international law#1: Reading Redgwell (2006) and Cartagena Regime (CBD, Protocol, and Supplementary Protocol).
Nov.15: Basic knowledge of relevant international law#2: Liability regimes: Reading Fitzmaurice (2006) and Boyle (2005).
Nov.22 or 29: Application of Liability to biodiversity damage by LMOs: Nagoya-Kuala Lumpur Supplementary Protocol12月に入り、簡単に「交渉テクニック」をおさらいしました。将に百聞は一見にしかずであり、名古屋会議に出席した多くの履修者にとっては既知の内容となりました。次に、交渉に入る前に、柴田が独自に作成した交渉文書を、第三者的に分析する授業を2回行いました。これにより、模擬交渉で議論の対象となる「論点」」を明確にし準備をしやすくすると共に、交渉自体が法的論点をめぐってフォーカスされた形で行われるように工夫しました。
Dec.6: Basic knowledge of diplomatic/treaty negotiation
Dec.13: Analysis of “our” text#1: history
Dec.20: Analysis of “our” text#2: legal issues
例年同様、教員は、交渉グループの議長役を担うと共に、各代表団の外務大臣となり、対処方針を作成し発出することになります。2010年度の新たな試みとして、学生が代表する国を早めに決定し(9月には決定しており、名古屋会議では、自分が代表することになる実際の政府代表にインタビューできるようにしました)、交渉の対象となるLMOに対する各国の立場や政策を事前に調査し、「対処方針へのインプット」を提出させることにしました。この作業を通じて、国を代表する学生達は、交渉文書を「自国の目」で分析する機会を得て、さらに外務大臣から発出されるであろう対処方針にオーナーシップを持つことになり、より真剣に模擬交渉に臨む姿勢が養われたと思います。
Country Name Brazil Chanapat MANEEDUL China (People's Republic of) Mari SAKAGUCHI Colombia Mai FUJII Egypt Ayaka KOJIMA Namibia (African Group Coordinator) Masakuni UETA European Union Chihiro SAITO Hungary Marko Szilveszter MACSKOVICH India Yuko HIRATA Japan Sayaka ADACHI
Tadaatsu MOHRIMalaysia Yoko ONISHI Mexico (GRULAC coordinator) Yuki NISHIMURA Netherlands (Chair) Akiho SHIBATA New Zealand Ayane AOYAMA Paraguay Hiroaki ICHIBA Philippines Giang NGUYEN THAI South Africa Nanako SHIMADA Vietnam Hanh NGUYEN THI MINH CBD Secretariat Haruka UEDA
Fuki FUJIWARA
Nichanand KOOPTARNOND模擬交渉は、以下の日程で行われました。
First Session: Monday 17 January 2011, 13:00 – 15:00 (Room SI)
Second Session: Monday 24 January 2011, 13:00 – 15:00 (Room SI)
Third Session: Saturday 29 January 2011, 10:30 – 12:30 (Room SI)
Fourth Session: Saturday 29 January 2011, 13:00 – 15:00 (Room SI)
Fifth Session: Saturday 5 February 2011, 10:30 – 12:30 (Room SI)
Sixth and Last Session: Saturday 5 February 2011, 13:00 – 17:30 (Room SI)模擬交渉は全て英語で行われ、事務局役の博士後期課程学生に手伝ってもらい、実際の交渉同様、スクリーンに交渉文書を映しだして、起草交渉も行いました。コンタクトグループも論点毎にいくつか設置され、議長役を担った学生は、交渉を「まとめる」難しさも体感したと思います。対処方針をめぐる外務大臣(教員)とのメールのやりとりでは、対処方針(ほぼ全員が英語による対処方針を選択)の「解釈」の難しさを学んでいただいたと思います。また、例年同様、授業以外の時間にも「会期間」交渉が自発的に一部学生達の間で行われていたようです。履修者アンケートによると、この授業時間外の交渉が、一部学生にとっては大きな負担になっていたようでしたので、今後は改善の余地があると思っています。
コンタクトグループ議長のハンガリー代表
交渉最終日。発言中のNZ代表。この日は、
現役外交官お二人にも参加頂きました。2月7日の授業最終日には、交渉の評価を行いました。全員分の対処方針を公開し、教員より、評価ポイントを記したレジュメを配布しました。他方で、評価は正確に学生に伝わる必要があったため、口頭での説明は主に日本語で行いましたが、これが逆に、留学生と「連帯感」を強く感じていた学生達には不評であったようです。匿名による履修者アンケートも実施し、本授業の良いところも悪いところも含め、忌憚のない意見を履修者(日本人学生のみ)から得ることができました。その一部は、今後の授業改善に活かしたいと思っています。
2008年度:多国間条約交渉論「カルタヘナ議定書『責任と救済』国際文書の交渉」
今年度の授業では、まず、教員が実際に経験した2つの条約交渉、すなわちバーゼル条約遵守メカニズム設立交渉と南極条約環境保護議定書「責任」に関する附属書6交渉を取り上げ、説明しました。
学生は、交渉対象に関わる国際法的論点などを理解するために参考文献を読み、授業では、パワーポイントを使って、具体的な条文や規定がどのような主張・交渉の結果生まれてきたのか、その時、交渉担当者は何を考え、どのように行動したかについて、交渉現場をイメージさせるような講義が行われました。
次に、模擬交渉として「カルタヘナ議定書「責任と救済Liability and Redress」に関する国際文書作成交渉を取り上げることが決まりました。そこで、授業では、ライアビリティに関する国際法上の論点やその実行上及び学説上の展開を理解するために、2回にわたって講義がありました。
さらに、カルタヘナ議定書の下でのライアビリティ制度がいかなる国際法的意義を有するかにつき、講義が行われました。これによって、学生は、模擬交渉をするのに必要な国際法上の知識を得ることができたはずです。
模擬交渉に入る前に、授業では、条約交渉の基礎的スキルを学ぶ講義が行われました。「Raise the flag」の意味や議事進行上の留意事項、効果的な交渉方法などについて、パワーポイントや写真を使って説明がなされました。
2月2日の交渉。交渉文書をスクリーンに映し出しながら、起草作業が行われます。
実際の条約交渉と全く同じ風景です。そして、授業後半の1月19日より、実際の模擬交渉が行われました。学生14人が14ヶ国の代表となり、外務大臣(教員)から「対処方針」が配布されました。会議の議長は教員が行いました。
発言中のエチオピア代表。となりはブラジル。事務局役の本田(D)と議長の柴田。
発言を待つ日本代表。
交渉最終日の2月7日(土)午前10時から、最後の模擬交渉が集中的に行われました。緊迫した雰囲気の中、午後6時に新たな条約がコンセンサスにて採択されました。
2月7日の集中交渉日終盤。コンタクトグループでの緊迫した(和気あいあいとした?)詰めの交渉。中心はフランス=EU代表。
授業最終日には、模擬交渉に関する教員からの評価と共に、学生からも何を考え、どういう戦略で交渉していたかについて説明があり、学生相互でも「いかに効果的に交渉するか」について学ぶことができました。
この授業のスケジュールと必読文献、参考文献は以下のとおりです。授業は、部分的に日本語での補足説明があった他は、英語で行われました。
Multilateral Treaty Negotiation 2008
Class Schedule and Material for Preparation
October 2, 2008: Special Seminar with Anne Daniel
October 20: Introduction
October 27: An Experience from the Negotiation on the Basel Compliance Mechanism
Key Material: The Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal (1989). The Basel Convention Mechanism for Promoting Implementation and Compliance (2002).
Must Read: A. Shibata, “Basel Compliance Mechanism,” in 12 RECIELR (2003) 又は*柴田明穂「バーゼル条約遵守メカニズムの設立」『岡山大学法学会雑誌』第52巻4号(2003年)。
November 10: The Basel Compliance Mechanism Negotiation (CONT.)
Recommended Reading: *A. Shibata, “Ensuring Compliance with the Basel Convention: Its Unique Features,” in Ensuring Compliance with Multilateral Environmental Agreements (Beyerlin, Stoll and Wolfrum eds., 2006). *Hugh Adsett, Anne Daniel, et al., “Compliance Committees and Recent Multilateral Environmental Agreements,” Canadian Yearbook of International Law, Vol.42 (2004).
November 17: An Experience from the Negotiation on the Antarctic Liability Regime
Key Material: Annex VI to the Protocol on the Environmental Protection to the Antarctic Treaty.
Must Read: A. Shibata, “How to Design an International Liability Regime for Public Spaces: The Case of Antarctic Environment,” in Implementation of Rules Protecting Public Interests of the International Community (Komori and Wellens eds., forthcoming)又は*西村玲子「南極環境責任附属書の交渉経緯の分析」『転換期三局条約体制が直面する組織的・環境的課題の複合研究』(柴田明穂編、2007年)。
December 1: The Antarctic Liability Regime Negotiation (CONT.)
Recommended Reading: *Louise Angelique de La Fayette, “Responding to Environmental Damage in Antarctica,” in Antarctica: Legal and Environmental Challenges for the Future (Triggs and Riddell eds., 2007).
December 8: Responsibility and Liability in International Law
Must Read: Margosia Fitzmaurice, “International Responsibility and Liability,” in Oxford Handbook on International Environmental Law (2007).
Recommended Reading: *de la Fayette, “New Approaches for Addressing Damage to the Marine Environment,” Int’l J. of Marine and Coastal Law, Vol.20, No.2 (2005), pp.167-188. *E. Brans, Liability for Damage to Public Natural Resources (2001), Chapter 7: pp.311-360.
December 15: Civil Liability in International Environmental Law
Must Read Material: A.E. Boyle, “Globalising Environmental Liability: The Interplay of National and International Law,” Journal of Environmental Law, Vol.17. No.1 (2005), pp.3-26.
Key Documents: Final Report of the 4th Meeting of the Parties (MOP) to the Cartagena Protocol, 2008, and Decision BS-IV/12 (2008) with Annex on “Proposed Operational Texts on Liability and Redress in the Context of Article 27 of the Biosafety Protocol.”
Recommended Reading: *E. Brans, “Liability for Damage to Public Natural Resources under the 2004 EC Environmental Liability Directive,” Environmental Law Review, Vol.7 (2005), pp.90-109.
December 22: Possible Liability Regime under the Cartagena Protocol on Biosafety
Must Read Material: Catherine Redgwell, “Biotechnology, Biodiversity and Sustainable Development: Conflict or Congruence?” in Biotechnology and International Law (Francioni and Scovazzi eds., 2006), pp.61-79.
Key Documents: Cartagena Protocol on Biosafety (2004). Decision BS-IV/12 (2008) and Annex, ibid.
Recommended Reading: Two articles from The International Politics of Genetically Modified Food: Diplomacy, Trade and Law (R. Falkner ed., 2007).
During the vacation: Preparation for the negotiation and the official statements
Recommended Reading: Follow the history of negotiation by reading the documents from: https://www.cbd.int/biosafety/issues/liability.shtml
During the long winter vacation, the students:
(1) Will receive from the professor, by e-mail, the first instruction for your delegation;
(2) Must begin preparation for the negotiation, first, generally using the materials indicated below (Recommended Reading) and, second, more specifically by following the instruction received. For the latter, you have to do your own research.
January 19, 2009:
Submission of Statements: Each delegation (student) will make a 3-minutes statement during the first session of the Friends of Co-chairs meeting. Each delegation must prepare a written version of the statement.
This statement must clearly indicates the name of the country, the name of the head of the delegation, the date, and the main content of the statement. It must be type-written on A4 size paper. Each delegation is responsible to produce enough copies for other delegations (about 20 copies).
On January 19, 2009, we will (1) briefly learn the techniques of negotiation (30 minutes); and (2) start the negotiation by having a 3 minutes official statements from all delegations (60 minutes).
January 26 and February 2, 2009:
We will continue our negotiation. The students are encouraged to conduct informal contacts outside of the classroom. The Contact Groups may be established.
February 7 (Saturday): 10:00 - 16:00 Special Make-up Class
There will be a make up class = final negotiating day on February 7 (Saturday), starting from 10:00 am and ending at 16:00.
February 9 (Monday) at 3rd period
The evaluation of the mock negotiation (final class).
END
2007年度:多国間条約交渉論「カルタヘナ議定書『責任と救済』国際文書の交渉」
2008年1月21、28日、2月2日にかけて、授業科目「多国間条約交渉論」での模擬交渉が行われました。2月2日(土)は、外務省の担当官・菊地信之氏にも参加いただき、一日中集中的な交渉を行いました。
この交渉は、生物多様性条約カルタヘナ議定書の下で現在実際に交渉が行われている「責任と救済(Liability and Redress)」に関する国際ルール作成交渉を題材として、同問題を交渉している第5回アドホック公開作業部会が開催されたとの設定で行われました。なお、この授業に参加している7名の学生は、海外実習の一環として、2007年10月に開催された第4回作業部会(カナダ・モントリオール)に実際に出席し、現場の交渉雰囲気を肌で感じ取ってきた学生です。この海外実習の様子については、こちらからご覧下さい。
この作業部会は、遺伝子組み換え生物(Living Modified Organisms: LMO)の国境を越える移動の際に生じた損害に対する責任と救済に関する国際ルールと手続について交渉しています。現在、実際にも国際的な文書を作っている最中で、3月12日から開催される「本当の」第5回作業部会(コロンビア・カルタヘナ)で、まとまった文書が完成する予定です。LMOもしくはGMOの安全性等について、GM作物輸出国と輸入国、GM技術を有する先進国と有しない途上国などで意見が対立しており、GMOをめぐる責任と救済のルール作りは、実際にも極めて興味深い展開を見せています。
さて、私たち「多国間条約交渉論」受講生は、授業の前半において国際環境法の概要や、今回の交渉で必須となる関連する条約について学び、また、条約交渉のテクニック等についても講義を受けました。そして、冬休み頃から今回交渉で扱う交渉文書(50頁にも及ぶ難解な条文案集、もちろん英語)を熟読し、交渉本番に備えました。交渉においては一人一カ国を担当し、それぞれ外務大臣から受け取った大変厳しい対処方針を基に、どのような交渉を行うかについて作戦を練りました。
受講生と担当国は以下のとおりです。
Name | Country | Name | Country |
---|---|---|---|
本田悠介 Yusuke HONDA |
Brazil | 野中祥子 Shoko NONAKA 菊地信之 Nobuyuki KIKUCHI |
Mexico (GRULAC Coordinator) |
Thea Tonghor | Cambodia | 柴田明穂 Akiho SHIBAT |
The Netherlands (Chair) |
かん がい Kan Kai |
China, P.R. | Nguen Van Trong (Jon) |
New Zealand |
山下維介 Yosuke YAMASHITA |
Ethiopia | 桑田清貴 Kiyotaka KUWATA |
Norway |
中山雄一 Yuichi NAKAYAMA |
Germany, F.R. | 山下朋子 Tomoko YAMASHITA |
Slovenia (EU Presidency) |
張 帆 Zhang Fan |
Indonesia (Asian Coordinator) |
上田はるか Haruka UEDA |
South Africa (African Coordinator) |
藤井麻衣 Mai FUJII |
Japan | Nguen Bang Trung | Vietnam |
Khaophibane Thanomsith (Sito) |
Laos | 清水健史 Takeshi SHIMIZU |
CBD事務局 CBD Secretariat |
この模擬交渉の教育的趣旨は、交渉のゲーム的要素を楽しみつつも、決められた立場(対処方針)をいかに法的に説明して相手を説得するかいう「法的議論構築能力」、自らの立場を反映する条文案や、他国の立場との妥協をいかに条文案のなかに反映するかといった「法的条文起草能力」、そしてそれらをいかにアピーリングに英語にてプレゼンテーションできるかという「実践的英語・発言能力」を向上することにあります。なお、この模擬交渉は、全て英語で行われています(唯一の例外は、日本人学生には日本土の対処方針が配布されたことです)。
交渉1日目(1月21日)
今回の模擬交渉への参加国は14カ国で、議長はオランダ(柴田先生)が務めました。最初に行われたのは、各国による一般演説です。各国代表団は5分間与えられ、今回の会合への意気込みや、交渉における譲れない点や、それぞれの国の状況などについて簡潔に述べました。
一般演説の後は、早速、文書の交渉に入りました。時間が限られている中でどれだけ深い議論がなされるかは、各国の準備にかかっています。
まず交渉されたのは、行政的アプローチに関する問題です。LMOsに関する何らかの悪影響を及ぼす出来事が起こった場合、行政が介入して責任者に特定の行動をとらすように義務づける内容です。いくつかの途上国の代表は、行政的能力に限界があり国に負担をかけるべきではないとして、このアプローチに反対しました。同様にいくつかの代表は、弱い文言を入れることによって、文書の実効性を弱めようとしました。他方で、行政が何らかの対処をとり、LMOsによる悪影響を及ぼす出来事を最小限にしたいと考える代表は、より具体的な文言や、義務的な文言を入れることを強く主張しました。
LMOに起因する責任を民事責任(不法行為責任)で追求する制度についても交渉がなされ、特に、その基準について厳格責任を主張する代表と、過失責任を主張する代表で意見が対立しました。この2つの立場の妥協である「緩和された厳格責任」を支持する代表もあり、この問題の議論は全くまとまりませんでした。
次に交渉されたのは、能力開発(Capacity Building)についてです。責任と救済に関する新しいルールをつくるに当たって、特に途上国にとっては、そのルールを国内的実施にするための財政的、法的、技術的能力が十分ではない場合が多くあります。また、ここで作成されるルールがより多くの国によって正しく実施されることが重要であるので、特に途上国の能力開発措置はとても重要な問題です。
この問題について強い意見を持っっていたのがエチオピアでした。議論はエチオピアがリードする形で進められていきました。議長より、この問題は重要であり、内容についてさらなる議論がされるべきだとして、会期間(授業と授業の間)に開催される非公式サブ・ワーキンググループが作られ、次回交渉までに関心国間で交渉し、合意できるテイスト案を作ってくるよう指示されました。サブ・ワーキンググループの調整役として、エチオピアが指名されました。
第1日目の交渉の議事録は、こちらからご覧になれます。
交渉2日目(1月28日)
交渉1日目から2日目にかけて行われた能力開発のサブ・ワーキンググループの報告が最初に行われました。その後、交渉に入っていきました。 まず議論されたのは、「残余的国家責任」の問題です。基本的に、LMOsによる損害を起こしたとされる事業者が責任を負うことが基本ですが、もし、すべての責任を取ることが出来なかった場合、国家がその責任を補うことが可能かどうかについて交渉されました。この問題に対する立場も2つに割れ、国家はどのような場合も責任を負いたくないという代表と、残余的国家責任に賛成する代表が対立しました。
次に議論されたのは、「補完的集団補償制度」です。この制度は、基金を設立し、事業者が責任を取れない場合、この基金により、それを補うという制度です。少数の国はこの制度に反対しましたが、多くの国はこの制度に賛成し、基金をバイオ産業からの拠出で設立するべきであると主張しました。
さらに責任を民事責任制度で担保する場合の「民事手続」について議論されました。ここでの対立点は、民事手続については各国の国内法に任せるべきだという代表と、国際的な文書において、その内容を定めたいという代表に立場が分かれました。特に途上国はより詳細な民事手続のルールを定めたいと主張しました。
午後の交渉においては、議長が作成した今までの議論の概要図(Schematic Outline)を基に、各国の意見を整理しました。交渉最終日となる2月2日に向けて、さらに議論を深めることが必要であると各国が考えたため、今まで交渉したすべての論点ごとに、非公式サブ・ワーキンググループを設立することに決定し、2日目の交渉を終えました。実際、2月2日の最終交渉日までの間に、非公式協議、秘密協議などが行われていたようです。
2日目の議事録はこちらからご覧になれます。
交渉最終日(2月2日)
交渉最終日は、実際に日本の代表団としてこの作業部会に参加されている外務省国際協力局地球環境課の菊池信之氏を迎えて行われました。今回の模擬交渉においては、メキシコ代表として参加して下さいました。メキシコは中南米のコーディネーターとして、多様な意見をまとめなければいけないというとても難しい立場を持っています。
まず初めに、議長は各国から提出された文書について説明を求めました。交渉最終日に向けて毎日サブ・ワーキンググループが開催され、各論点について議論し、合意できたテキスト案をそれぞれのサブ・ワーキンググループをリードした国が提出していました。多くの論点について妥協が得られたテキストが提出されました。しかし、過失責任か厳格責任かの「責任の性質」など対立が残る論点もありました。
次に、最後に残っていた2つの論点についての交渉が行われました。まず、この文書の適用範囲についてです。いかなる活動から生じる損害にこの文書が適用されるのかという機能的範囲については、これをできるだけ広い範囲を設定したい代表(越境移動活動に加えて、LMOの国内での取り扱いや移動中に生じた損害など)と狭い範囲を支持する代表とに分かれました。特に、メキシコは「非意図的な越境移動(unintentional transboundary movement)についても範囲に含むことを強く主張し、狭い範囲を支持する代表と対立しました。損害が発生する地理的範囲についても、締約国の管轄権内のみか、公海や非締約国領域内も含むのかで対立しました。
さらに「損害の定義」について交渉されました。損害の定義は、カルタヘナ議定書が保護法益としている生物多様性とその持続的利用に対する損害に限定すべきであると主張する代表と、それに加えて、伝統的な損害概念に含まれる人の健康、生命、財産に対する損害更には、社会経済的損失までをも含ませたいとする代表が対立しました。
最後に交渉されたのは、「文書の法的性質」についてです。この点については、途上国とノルウェーは法的拘束力のある国際的文書を、そして日本、ニュージーランド、南アフリカは非拘束的な文書を、そしてEUは2段階アプローチ(最初は非拘束的、将来的に拘束的文書にするというアプローチ)を支持すると、今までの交渉経緯を考えると、このように予想されました。ところが、EU議長国であるスロベニア代表が精力的に各国を説得した結果、多くの途上国が法的拘束力のある文書ではなく、非拘束的な文書を支持することに事前に合意ができていました。その見返りとして、スロベニア代表は巧みに能力開発の条文案の中に、「法的拘束力になるための話し合いをすることができる」という文章を入れることにより、法的拘束力を望む各国の主張も生かすことに成功したのでした。この結果、法的拘束力を支持する国が孤立することになりました。
長く複雑な交渉の結果、1つの論点を除いて、最終的にコンセンサスで合意できる文書ができあがりました。中国代表は、行政的アプローチの特定条文案に合意できないとして投票を求め、圧倒的多数にて中国の削除提案が否決されました。
最終的に採択された文書はこちらからご覧になれます。
この文書の特徴を述べると、この文書は非拘束的な文書で各国の国内法のガイドラインとなるべきものとしました。また、「責任の性質」については、妥協することが困難であるため、3つのオプションが残る形となりました。補足的集団補償制度については、基金を拠出するバイオ産業との議論が必要であると判断し、基金を設立するためのプロセスをここで作るということにすべての国が合意しました。また、「能力開発」については、委員会を設立することが決定されました。
2月4日 評価会
以上の交渉を振り返る評価会が開催されました。柴田先生からは、まず全員に対し、ねぎらいの言葉がかけられました。今年の題材は論点が複雑にからみあい、難しい交渉であったにも拘わらず、最後まで粘り強く交渉し、そして1条文案を除いて、コンセンサスにて文書を採択するところまで漕ぎ着けたことが評価されました。特に、何人かの学生が精力的に条文案を起草して妥協を図ったこと、交渉中の発言内容を事前に文章にして準備していたこと、そして自らの立場を国際法的に根拠づけて説明しようとしていたことに対し、高い評価が与えられました。
次に、全員の対処方針が公開され、それぞれの代表から対処方針をどのように解釈・理解し、対処方針に定める「確保すべき点」をいかなる外交戦術で達成しようとしたか、報告がなされました。ここで私たちは、なぜある代表があの論点であそこまで拘ったか、そして目的を達成するためにどの論点と引き替えに何を獲得しようとしていたのかを知ることになりました。ある代表は、対処方針上は柔軟に対応できるにも拘わらず、「先進国のいいなりになるのは気にくわない」と強行姿勢にて交渉していたことが披露され、皆、驚かされました。柴田先生からは、対処方針の読み方、確保すべき事柄の優先順位の付け方、妥協するタイミングなどについて、コメントがありました。
以上を振り返り、授業科目「多国間条約交渉論」において、私たちが行ったのはほんの一部の模擬交渉でしたが、一つの国際的ルールを作るにはかなりの労力と時間が必要であることを思い知らされました。一つの会議場に集まり、世界各国から集まった政府の代表団が自国の状況や法的背景を背負いながら、それをどう乗り越え、各国が納得できるルールを作ることができるのかについて、その難しさと、ダイナミックな交渉の展開を、今回の模擬交渉で体験することができました。
2月15日に、オランダ外務省法律顧問のルネ・ルフベール氏を招き、多国間条約交渉論の特別授業を開講しました。ルフベール氏は、我々が模擬交渉として取り扱った「カルタヘナ議定書責任と救済に関する作業部会」の本物の共同議長を務められており、意見が激しく対立する国際社会が共通の合意に達するために、会議場の内外を問わず、非常に精力的にご活躍されています。
また、ルフベール氏は、オランダ外務省国際法法律顧問として、実際に他の国際環境条約交渉でご活躍されているだけではなく、アムステルダム大学教授も務め、数々の著書や論文を公表されるなど、国際環境法分野で多彩な才能を発揮されている方です。
今回の特別授業では、まず、多国間条約交渉論を受講している学生から、我々の模擬交渉の概要と模擬交渉の成果文書の解説が、報告されました。
模擬交渉とはいえ、真剣な交渉の末、ぎりぎりの妥協の結果であることが説明されました。そのうえで、ルフベール共同議長に、国際環境法のネゴシエーターとしての実際の交渉での経験を伺いました。
そして、今回の模擬交渉で題材にした「カルタヘナ議定書責任と救済」についての制度を理解するためには、国際法についての高度な知識と深い理解が要求されます。実際の会議の交渉文書や我々が採択した文書について、法的に疑問に感じる点や、国際環境法における質問がつぎつぎになされ、それぞれについて、丁寧に答えてくださいました。
また、休憩時間にも、学生の質問にとても気さくに答えてくだいました。また、今回の特別授業には、受講者以外も多く集まったこともあり、それぞれのキャリアプラン(外交官、国際公務員、研究者など)について、非常に有益なアドバイスをいただきました。
ルフベール氏が共同議長を務める「カルタヘナ議定書責任と救済に関する作業部会」第4回会合には、海外実習として7名の学生が参加し、次回第5回会合(コロンビア・カルタヘナ)にも4名の学生が参加する予定です。実際の条約交渉を肌で感じるとともに、高度な国際環境法分野の分析を通じて、「国際法が現場でいかに使われているか」、そして「国際法を現場でいかにして使うか」という問題意識に応える、今回の特別授業は非常に魅力的かつ特別な機会でした。
今回の特別授業のために、わざわざGSICSへお越しいただいた、
ルフベール氏には、改めて感謝を申し上げます。
この年は、2限目の英語授業科目「International Environmental Law」と3限目の「多国間条約交渉論」を一体化して運営しました。
Oct. 1
2nd Period 授業なし。
3rd Period 授業概要・計画等の説明
海外実習「国際環境条約交渉の視察」参加者からの報告:カルタヘナ議定書、同議定書の下で交渉中の賠償と救済(liability and redress)問題の概要
Oct.15
2nd Period 概要説明
講義: “International Legal Diplomacy within Multilateral Environmental Agreements”3rd Period 講義「環境条約における国際法外交」(継続)
参考文献(国際法既習者)
柴田明穂「締約国会議における国際法定立活動」『世界法年報』25号(2006)
Gunther Handl, “International Lawmaking by Conference of the Parties and Other Politicaly
Mandated Bodies,” in Developments of International Law in Treaty Making (R. Wolfrum andV. Roben eds., 2005).
Jutta Brunnee, “Reweaving the Fabric of International Law?” ibid.
Oct. 22 and 29
休講(海外実習中)。1月土曜日に補講予定。
Nov. 5
2nd Period 講義: International Environmental Law: a Panoramic View
必読文献
D. Bodansky, J. Brunnee and E. Hey, “International Environmental Law: Mapping the Field,”in The Oxford Handbook of International Environmental Law (2007).3rd Period 判例研究「トレイル熔鉱所事件」
必読文献
Trail Smelter Case, in International Environmental Law Reports, Vol.1 (1999)
トレイル熔鉱所事件『判例国際法(第2版)』118番
Nov. 12
2nd Period: 講義: The Role of Custom in Int’l Environmental Law
必読文献: Pierre-Marie Dupuy, “Formation of Customary International Law and General Principles,”in Handbook (2007).3rd Period: 事例研究 #1「遵守メカニズム交渉」
必読文献: A. Shibata, “Basel Compliance Mechanism,” in 12 RECIER (2003 ).又は柴田明穂「バーゼル条約遵守メカニズムの設立」岡大法学会雑誌52巻4号(2003)。
Nov. 19
2nd Period: 講義: Environmental Treaty-Making
必読文献: Thomas Gehring, “Treaty-Making and Treaty Evolution,” in Handbook (2007).
参考文献: Benedict Kingsbury, “Global Environmental Governance as Administration,”in Handbook (2007)3rd Period: 事例研究 #2「バーゼル条約遵守メカニズム交渉」
Nov. 26
2nd Period: 講義: Environmental Treaty Institutions
必読文献: Geir Ulfstein, “Treaty Bodies,” in Handbook (2007).3rd Period: 講義「多国間条約交渉手続とテクニック」
Dec.3
2nd Period: 講義: 国際環境法における責任とライアビリティー
必読文献: Margosia Fitzmaurice, “International Responsibility and Liability,” in Handbook (2007).3rd Period: 「国際ライアビリティー先例の検討1」; Marine Oil pollution
必読文献: de la Fayette, “New Approaches for Addressing Damage to the Marine Environment,”Int’l J. of Marine and Coastal Law, Vol.20, No.2 (2005), pp.167-188.
参考文献: E. Brans, Liability for Damage to Public Natural Resources (2001),Chapter 7: pp.311-360.
Dec.10
2nd Period; 講義: 国際環境法におけるライアビリティー制度
必読文献: A.E. Boyle, “Globalising Environmental Liability: The Interplay of National andInternational Law,” Journal of Environmental Law, Vol.17. No.1 (2005), pp.3-26.3rd Period: 「国際ライアビリティー先例の検討2」; Hazardous Materials
必読文献: de la Fayette, supra in Dec.3, pp.188-224.
参考文献: E. Brans, supra in Dec.3, pp.365-406.
Dec.17
2nd Period: 講義: バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書の下でのライアビリティー交渉
必読文献: Cartegena Protocol on Biosafety; Negotiating Document:WG-L&R/ 4/L.1/Add.1 (26 October 2007).3rd Period: 「国際ライアビリティー先例の検討3」 EU 2004 Directive
必読文献: EU 2004 Directive 2004/35/EC on environmental liability
参考文献: E. Brans, “Liability for Damage to Public Natural Resources under the 2004 ECEnvironmental Liability Directive,” Environmental Law Review, Vol.7 (2005), pp.90-109.
大塚直他「環境損害の未然防止及び修復についての環境責任に関する2004年欧州理事会の指令」『環境研究』 No.139 (2005), 141-152頁。
Schedule for Mock Multilateral Treaty Negotiation on Liability and Redress in the Context of the Cartagena Protocol on Biosafety
Before Jan. 21, 2007
Members of the delegations determined and announced.
Dispatch of instructions to all delegations by e-mails.
Delegations may commence informal contacts.
Jan. 21, 2007
2nd Period: First Session of the 5th meeting of the Working Group on Liability and Redress.
Provisional Agenda:
1. Opening of the Meeting
2. Election of the WG chair
3. Rules of Procedure of the WG
4. Schedule of the Meeting
5. Elaboration of International Rules and Procedures in the field of liability and redress for damage resulting from transboudary movements of living modified organisms.
a. General statements (5 minutes per delegation with WP)
b. Negotiation on the Document: UNEP/CBD/WG-L&R/4/L.1/ Add.1 and Add.2
c. Adoption of the “International Rules and Procedures”
6. Closing of the Meeting
3rd Period: Second Session of the 5th meeting of the WG-L&R
* Delegations are encouraged to informally negotiate on the documents.
* Informal Contact Groups may be established.
* 17:00 Jan. 25: Deadline for requesting new or revised instructions.
Jan. 28, 2007
2nd Period: Third Session of the 5th meeting of the WG-L&R
3rd Period: Fourth Session of the 5th meeting of the WG-L&R
Feb. 2 (Saturday)
10:00〜12:10: Fifth Session of the 5th meeting of the WG-L&R
* 13:00 Deadline for requesting new or revised instructions.
14:00〜17:00: Sixth and Last Session of the 5th meeting of the WG-L&R
Feb.4
2nd Period: Instructions made public; delegations’ explanation & comments from others.
3rd Period: Cont. Comments from the Co-Chair.
2006年度は、有害農薬や化学物質の越境移動に事前の同意を必要とするロッテルダム条約(PIC)を題材にして、試験的に模擬交渉を行いました。その前に、履修者の一部は、海外実習として、ジュネーブで開催されたロッテルダム条約第3回締約国会議を視察しました。
授業の履修者及び代表国は以下のとおりです。
(1) Argentina Clara Picasso (J-M1) (2) Australia Magyar Zsuzsanna Blanka (J-M2) (3) Brazil Adriana Benitez Ferreira (J-M1) (4) Canada Yusuke Araki (J-M1) (5) China Kazuma Shimohara (J-M2) (6) Ethiopia Thea Tonghor (E-M1)
Mirohid Rahimov (J-D1)(7) European Community Magdolna Csider (J-M2) (8) Finland Nixson Salalahi (E-M2) (9) India Kenta Mochizuki (J-M1) (10) Iran, Islamic Rep, Fhimeh Ghasemi (E-M2) (11) Japan Mai Okuno (J-M1)
Shuichi Takano(MOFA)(12) Nigeria Nguyen Thuy Hanh (E-M1)
Yusuke Honda (J-M2)(13) Norway Ho My Hanh (E-M1)
Reiko Nishimura (J-M2)(14) Philippines Louise Castillo (RS)
Dina Diana (E-D1)(15) South Africa Naoko Shigenobu (J-M1)
Nova Amirawati (E-M1)(16) Switzerland Yuichi Nakayama (J-M1) (17) United Kingdom Akiho Shibata
15 January: Explanation of negotiation techniques and provision of the instructions. Commence negotiation by electing the Chair, and deciding the schedule.
(January 15, 2007)
WG on Non-Compliance: Why are you all looking down?
The enemies (and friends) are in the room, not on the paper!
Argentina proposes consensus decision-making,
supported by Australia (flag up-side-down).
EC objects to the Argentina proposal and argues for 2/3 majority voting.
Finland, as the Presidency of the EU, supports EC (naturally?).
The Chair summarizes the discussion and requests the delegations to accept his proposal to operate the meeting under the Basel Convention RoP with his assurance that the consensus will be the fundamental rule.
January 22, 2007
All 17 delegations are ready to negotiate!
Above: Nigeria demanded assistance to developing countries, while Switzerland said that the procedure should not be discriminatory.
Below: Australia would accept only self-trigger; China wanted to rename the Committee.
The Philippines emphasized the “Asian Culture” and demanded consensus decision-making.
India is dead serious, while EC relaxed and smiling.
January 29, 2007
On handling of information, Norway supports the Committee being able to receive information from any sources.
Above: Australia and Iran are quick on raising their flags, opposing NGOs providing information to the Committee.
Below: Ethiopia wants to keep paragraph 28, while Canada wants it to be deleted.
As the Chair becomes more demanding, the delegations have to think and make up their minds quickly whether to support or oppose Chair’s proposals.
The delegations also have to listen to interventions of others in order to assess the flow of the negotiation.
February 3, 2007
Mr. Shuichi Takano (Japanese Ministry of Foreign Affairs) who participated in the “real” negotiation on PIC compliance mechanism, as a new Japanese delegate.
Above: Canada with his instruction and Ethiopia with the document.
Below: Iran and EC trying to convince others.
Japan questions the Secretariat mandate to trigger the mechanism, as Finland argues for such mandate based on the Convention.
Delegations during the final hours of the negotiation.
Drafting a final compromise text with “like-minded” delegations.
Above: Contact Group on Paragraph 12 (c).
Below: Brazil and Ethiopia: bilateral talks or fights?
5 February: Evaluation of the negotiation.