研究活動

このページの目次です

1. 現在の研究の概要 2. 科学研究費 3. 業績一覧 4. 学会活動等 5. 研究経緯
1.現在の研究の概要

現在の研究の概要(2014年7月改訂)

     柴田の主な研究関心は、国際法の法源論、国際法制度形成過程論です。ここ10年ほどは、南極条約体制や国際環境条約制度などを題材に、国際法制度形成過程の特徴を解明し、その理論的意義を考察してきました。法源論それ自体については、2009 年後半からのオーストラリア国立大学における在外研究の際に、1949年コルフ海峡事件判決を法源論の観点から再検討する報告をワークショップで行い、その成果 “The Court’s Decision in silentium on the Sources of International Law: Its Enduring Significance”を、The ICJ and the Evolution of International Law: The Enduring Impact of the Corfu Channel Case (Routledge, 2012年1月)に発表しました。また、今回初めて国際法教科書の分担執筆に参加させていただき、浅田正彦編『国際法第2版』(東信堂、2013年4月)の「第2章法源・慣習法」を担当しました。現在、グルノーブル大学のTheodore Christakis教授と、国際社会における「慣行」の機能につき包括的に検討する研究プロジェクトを立ち上げるべく準備を進めています。2014年3月に下されたICJ南極捕鯨事件判決は、IWCなどの条約機関が有する機能を根拠に国際捕鯨取締条約をevolving instrumentであると判断しました。条約制度が「発展」するという考え方を、解釈論を越えた国際法制度形成論として捉えることができないか、検討中です。

     南極条約体制の研究は、わずか28国程度の南極利害関係国が「全人類の利益」を標榜して国際社会全体に対抗しうる国際法制度を創設しようとしている国際実行に関心をもち、同体制を構成する諸条約・諸制度の形成過程を分析してきました。他方で、南極条約体制それ自体、特に1991年南極環境保護議定書成立以降の同体制のダイナミックな展開を、国際法的に的確に分析する研究は日本ではほぼ皆無であり、この分野の研究も進めたいと思っています。その見取図を、「南極条約体制の基盤と展開」ジュリスト第1409号(2010年10月)において提示しました。さらに、今後は、北極をも含めた「極域国際法」の構築にむけた研究も始めたいと思っています。

     環境条約の研究も、参加の普遍性がその実効性にとって不可欠であるとされるこれら条約の遵守誘引力を高める正当性の要因をその形成過程の中に見出すべく、研究を始めました。もちろん、2001年から在ジュネーブ国際機関日本政府代表部にて、環境条約担当の専門調査員を2年間務め、環境条約交渉に自ら携わる経験をしたのも、環境条約を研究対象にするきっかけでした。2014年3月に単独編書として発刊した International Liability Regime for Biodiversity Damage: The Nagoya-Kuala Lumpur Supplementary Protocol (Routledge, 282p.+xviii)は、「学者外交官」としての経験の集大成です。国際環境法形成の現代的特徴とそれが一般国際法に投げかける課題につき、International Environmental Law-making in the First Decade of the Twenty-First Century: The Form and Process, Japanese Yearbook of International Law, Vol.54 (2011) (2012年2月)でまとめてみました。環境条約の研究は、環境分野特有の一般国際法上の論点(締約国会議における法定立活動の位置づけ、不遵守制度の位置づけ、責任ないしliabilityの問題など)を避けて通ることはできず、断片的ではありますが、これら国際環境法上の問題とされる諸課題についても、いくつか論文を発表してきました。

 

2.科学研究費

現在の研究の概要(2015年4月改訂)

2015年4月現在、柴田は、以下の科学研究費課題の研究を進めています。

    2015年度より科学研究費挑戦的萌芽研究「極域国際法秩序形成・発展の推進原理:科学・環境・領土・織域」(研究代表者・柴田明穂、2015-17年度)を展開しています。

    この研究の目的:

    地球温暖化の影響とされる北極海の氷解と共に、アクセスが容易となった北極域は安全保障、航路、生物及び鉱物資源、地球環境、科学観測、観光などの観点より国際社会全体の関心域となりつつある。地理的及び法的前提が違うも、20世紀初頭からの人間活動の量的増大、質的変容に対応して形成・発展してきた南極域国際法秩序の100年間の歴史的教訓から、今後の北極域国際法秩序形成を促す推進原理とその方向性を明らかにする。その際、両極域に適用される現行国際法の単なる比較を超えて、より広い歴史的視点から、極域法秩序形成を基底する原理ないし規範哲学を、科学の役割、脆弱な環境の保護、領土問題への対処、そして多国間協力組織のあり方を軸にして解明する。

    この他、科学研究費研究プロジェクトの分担者として、基盤研究(A)「国際法の訴訟化への理論的・実践的対応」(坂元茂樹・神戸大学教授代表)にも参加しています。

柴田が代表となって行った現在進行中及び過去の科学研究費の一覧
研究年度 研究課題名 主な研究分担者 採択金額
(直接経費のみ)
2015-17 極域国際法秩序形成・発展の推進原理:科学・環境・領土・組織(挑戦的萌芽研究) 280万円(予定)
2012-14 「条約体制内合意」の成立基盤−時間の流れの中にある条約の位相(基盤研究C) 380万円
2009-2011 国際法理論と環境条約交渉のインターフェイス−『学者外交官』の実践(挑戦的萌芽研究) 280万円
2007-2010 国際法秩序における規範の接合と調整−INTERSTITIAL NORMの存立基盤(基盤研究B) 酒井啓亘、中井伊都子、濱本正太郎、阿部達也、竹内真理、玉田大、小林友彦 1,470万円
2006-08 国際公共海域における「遺伝子探査」をめぐる科学・ビジネス・法−国際法的枠組の模索(萌芽研究) 340万円
2003-06 転換期南極条約体制が直面する組織的・環境的諸課題の複合研究(基盤研究B) 黒神直純、高村ゆかり、渡邉研太郎 750万円
1997-98 地球環境保護に関する国際法制度の創設とその実施における正当性と公正さの主張(奨励研究A) 200万円
1996 国際法形成過程における正当性と公正さの主張(奨励研究A) 100万円
3.業績一覧

著書・編集

刊行年月 タイトル・出版社・頁数 単著・共著(共著者) 備考
2015年6月 "L'etre situé", Effectiveness and Purposes of International Law: Essays in Honour of Professor Ryuichi IDA (Brill) Akiho Shibata co-editor (with S. Hamamoto and H. Sakai) 299p.
2015年3月 『ベーシック条約集2015年版』(東信堂) 田中・薬師寺・坂元編集代表  
2014年3月 International Liability Regime for Biodiversity Damage: The Nagoya-Kuala Lumpur Supplementary Protocol (Routledge) Akiho Shibata editor 282p.
2014年3月 『ベーシック条約集2014年版』(東信堂) 田中・薬師寺・坂元編集代表
2013年4月 『国際法第2版』(東信堂) 浅田正彦編、第2章「法源・慣習法」(33-50頁)、第9章「国際化地域・空域・宇宙空間」(199-217頁)分担執筆
2013年3月 『ベーシック条約集2013年版』(東信堂) 田中・薬師寺・坂元編集代表
2011年4月 『国際法』(東信堂) 浅田正彦編、第2章「法源・慣習法」(29-46頁)、第9章「国際化地域・空域・宇宙」(181-198頁)分担執筆  
1999年5月 United Nations Peace-keeping Operations: A Guide to Japanese Policies (UNU Press) 148p.+viii L. William Heinrich, Akiho Shibata, Yoshihide Soeya  

論文

公表年月 論文タイトル 掲載誌 ページ 備考
2015年10月 Japan and 100 Years of Antarctic Legal Order: Any Lessons for the Arctic? Yearbook of Polar Law, Vol.7, Year 2015 (in press)  
2015年6月 International and Domestic Laws in Collaboration: An Effective Means of Environmental Liability Regime-Making "L'etre situé", Effectiveness and Purposes of International Law (H. Shotaro, H. Sakai, A. Shibata eds) 193-213  
2015年1月 南極環境責任附属書の国内実施ー日本の課題と展望 国際法学の諸相(信山社、江藤淳一編集) 633-667  
2012年2月 International Environmental Lawmaking in the First Decade of the Twenty-First Century: The Form and Process Japanese Yearbook of International Law, Vol. 54 (2011) 28-61  
2012年1月 The Court's Decision in silentium on the Sources of International Law: its Enduring Significance The ICJ and the Evolution of International Law: The enduring impact of the Corfu Channel case (K. Bannelier, T. Cristakis and S. Heathcote eds., Routledge.) 201-210  
2011年 5月 遺伝子組換え生物等に起因する生物多様性損害に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書の意義と課題 バイオサイエンスとインダストリー69巻3号 1-21  
2011年 4月 危険活動から生じる越境被害の際の配分に関する諸原則 村瀬信也・鶴岡公二他編『変革期の国際法委員会(山田中正大使傘寿記念)』(信山社) 273-296
2011年 3月 名古屋・クアラルンプール補足議定書の成立 Law and Technology第51号 40-50  
2010年 10月 南極条約体制の基盤と展開 ジュリスト第1409号 86-94  
2010年 10月 採択目前!LMO起因生物多様性損害に関する責任補足議定書成立の意義と課題 Law and Technology第49号 27-39  
2010年 4月 南極バイオプロスペクティング活動の実態−日本の事例を中心に 南極資料第54巻1号 1-10  
2009年 How to Design an International Liability Regime for Public Spaces: the Case of the Antarctic Environment Public Interest Rules of International Law: Towards Effective Implementation (T. Komori & K. Wellens eds., Ashgate) 347-373  
2008年 11月 環境条約不遵守手続の帰結と条約法 国際法外交雑誌第107巻3号 1-21  
2006年 12月 「環境条約不遵守手続は紛争解決制度を害さず」の実際的意義ー有害廃棄物等の越境的移動を規制するバーゼル条約を素材にー 栗林尚一先生・山田中正先生古稀記念論集『国際紛争の多様化と法的処理』(信山社) 65-89  
2006年 Ensuring Compliance with the Basel Convention - its Unique Features Ensuring Compliance with Multilateral Environmental Agreements (U. Beyerlin, P.T. Stoll & R. Wolfrum eds., Matinus Nihoff Pub.) 69-87  
2006年3月 締約国会議における国際法定立活動 世界法年報第25号 43-67  
2005年10月 国際法制度におけるNGOの機能と現実 ジュリスト No.1229 9-15  
2004年3月 南極条約事務局設置の法的意義 岡山大学法学会雑誌第53巻3・4合併号 119-182  
2003年7月 The Basel Compliance Mechanism Review of European Community & International Environmental Law , Vol.12, Issue 2 183-198  
2003年3月 バーゼル条約遵守メカニズムの設立ー交渉経緯と条文解説ー 岡山大学法学会雑誌第52巻4号 47-103  
2002年 Japan: moderate commitment within legal strictures Democratic Accountability and the Use of Force in International Law (C. Ku and H.K. Jacobson eds., Cambridge UP) 207-230  
2001年 Creating an International Urgent Assistance Mechanism in Case of Natural and Industrial Catastrophes The International Aspects of Natural and Industrial Catastrophes (D.D. Caron and C. Leben eds., Matinus Nihoff Pub.) 457-535  
2001年11月 南極鉱物資源条約形成過程における正当性  岡山大学創立50周年記念論文集『世紀転換期の法と政治』  291-344  
2000年4月 国際法形成フォーラムとしての南極条約協議国会議の「正当性」  国際法外交雑誌第99巻1号 1-31   
2000年3月 一九七〇年代における南極条約協議国会議の性格 岡山大学法学会雑誌第49巻3・4合併号 445-464  
1999年2月 Participation japonaise aux operations de maintien de la paix de l'ONU Perspectives asiatiques, No.6 116-127  
1998年3月 国際法における公正ーフランク国際法学の主眼と課題ー  岡山大学法学会雑誌第47巻4号 77-133  
1997年3月 自然及び産業災害時の国際緊急救援制度の成立 岡山大学法学会雑誌第46巻3・4合併号 347-424  
1997年1月 「一貫した反対国」の法理再考 -国際法形成過程研究序説- 岡山大学法学会雑誌第46巻2号 111-183  
1994年7月 Japanese Peacekeeping Legislation and Recent Developments in U.N. Operations Yale Journal of International Law, Vol.19, No.2 307-348  
1993年11月 International Law-Making Process in the United Nations: Comparative Analysis of UNCED and UNCLOS III California Western International Law Journal, Vol.24, No.1 17-53  

資料・翻訳・その他

刊行年月> タイトル> 署名・出版社 備考
2011年11月 判例解説:
主権の機能
「ウィンブルドン号事件」国際法判例百選(第2版)(小寺・森川・西村編集)(有斐閣) 40-41  
2010年3月 判例解説
北海大陸棚事件(ICJ)
国際法基本判例50(杉原・酒井編、三省堂) 6-9  
2006〜07年 主要文献目録・国際法2005年及び2006年 国際法外交雑誌第105巻2号、106巻2号 133-159,96-120 黒神直純氏と共著
2008年7月 世界が求める国際法のプロになるために 外交フォーラム第240号(2008年7月号) 78-81  
2008年1月 北極と南極をめぐる領有権問題 『中学校社会科のしおり』(帝国書院) 28-30  
2006年5月 判例解説:
核実験事件(ICJ)ノルウェー漁業事件(ICJ)
みなみまぐろ事件(ITLOS)
『判例国際法(第2版)』(松井他 編集)(東信堂) 20-24, 156-160, 585-589  
2006年6月 論文:
南極地域観測活動の戦略的意義
『文部科学時報』平成18年6月号、No.1564(ぎょうせい) 38-39  
2001年4月 判例評釈:
地域的慣習「インド領通行権事件(ICJ)」
『国際法判例百選』(山本、古川、松井編集)(有斐閣) 8-9  
2000年10月 判例解説:
核実験事件(ICJ)
ノルウェー漁業事件(ICJ)
『判例国際法』(田畑、竹本、松井他 編集)(東信堂) 17-24, 148-152  
1998年8月 解説:
「一方的行為」
「慣習法の成立要件」
『プラクティス国際法』(香西茂、竹本正幸、坂本茂樹 編集)(東信堂) 6-8,9-11  
1996年2月

資料:国連の主要活動の展開
-機構の変化と主要決議を中心に-

国際法外交雑誌第94巻5・6合併号 860-914 繁田泰宏氏と共著
4.学会活動等
所属学会
2007年5月~ 環境法政策学会 2007年6月に国際環境法部会でコメンテータ
2004年1月~ 国際法協会(ILA) 2008年12月より「気候変動に関する法的諸原則」国際委員会メンバー(2014年4月まで)
1990年8月~ アメリカ国際法学会(ASIL)
1990年4月~ 世界法学会

2011年5月より理事、2011年5月〜2014年5月まで庶務主任。2005年5月「締約国会議における国際法定立活動」研究報告。

1990年4月~ 国際法学会 2006年10月より2012年9月まで評議委員。2006年10月より雑誌編集委員会委員(2009年10月まで幹事)。2012年10月「条約制度と一般国際法のインターフェイス」研究報告。2007年10月「国際法の『客観化』−環境に関する国際法を題材に」研究報告。1999年10月「国際法形成フォーラムとしての南極条約協議国会議の『正当性』研究報告。
研究会等
2015年5月 SCAR-HSSEG Workshop on Antarctica and Wilderness Values "Antarctic Horizon Scan, JARE and International Law"
2015年5月 世界法学会2015年度研究大会 「南極海捕鯨事件判決がもたらしたものその1年」
2015年4月 Kobe International Law Workshop: The Arctic: Current Legal and Policy Issues "An Arctic Scientific Cooperation Agreement?"
2015年3月 Queen Mary, University of London, International Law Panel Discussion: Japan Resumes its Scientific Whaling Main speaker: "One Year After: What the Whaling Judgment Left us with"
2015年3月 Arthur Watts Public International Law Seminar, British Institute of International and Comparative Law International Liability Regime for Biodiversity Damage
2014年10月 7th Polar Law Symposium 「Japan and 100 Years of Antarctic Legal Order: Any Lessons for the Arctic」と題して基調講演をしました。
2014年9月 国際法学会2014年度大会(新潟) ICRW as an Evolving Instrument: Potential Broader Implicatins of the Whaling Judgmentと題して英語で報告しました(小田滋裁判官記念報告)
2014年5月 神戸大学国際法センター主催「南極捕鯨事件:ICJ判決とその意義」国際シンポジウム 企画・運営及びシンポ総合司会及び結論の報告を行いました。
2014年4月 国際法協会(ILA)2014年大会  Legal Principles relatng to Climate Change最終草案の報告を行いました。
2013年3月

フランス・グルノーブル大学法学部国際法センター

招聘教授としてInternataional Liability Regime for a Biodiveristy Damage: The Nagoya-Kuala Lumpur Supplementary Protocolと題して研究報告を行いました。
2012年10月 台湾国際法学会主催研究会
Climate Change and International Legal Principles報告
気候変動をめぐる国際法の諸原則。特に共通だが差異ある責任について報告しました。
2011年9月~2013年 「大気の保護に関する研究会」メンバー 外務省主催の研究会であり、村瀬信也・国際法委員会(ILC)委員の発案にて、ILCにおける新しい議題として提案されている「大気の保護」について、国際法の観点から検討を行うもの。
2011年4月~ 「国際法の訴訟化への理論的・実践的対応」研究分担者 坂元茂樹教授研究代表の科学研究費基盤Aプロジェクト
2010年4月~2015年3月 「地球大気国際法秩序の基本構造−地球温暖化防止法制度の将来像」研究分担者 吉田脩准教授(筑波大学)代表の科研費プロジェクト。ILA「気候変動に関する法的諸問題」に関する日本支部活動も支える。
2009年10月 オーストラリア国立大学ワークショップCorfu Channel Case: ICJ’s First Judgment: A Landmark for International Law報告 コルフ海峡事件判決の法源論的側面につき報告。成果は2011年中に公刊予定。
2008年~ 北海道大学・南極講座・講師 北海道大学低温研究所・青木先生がコーディネートされて毎年夏に行われる特別授業科目の1コマを担当。
2008~2010年 「多機能化する『交渉』における国際法の役割」研究分担者 坂元茂樹教授(神戸大学)代表の科研費プロジェクト
2005~2007年 「国際公共利益の制度化と複雑化する執行過程の統合に関する研究」研究分担者 小森光夫・北海道大学教授(当時)代表の科研費プロジェクト。成果は上記2009年英書。
2005年~ 関西国際機構研究会 位田隆一教授(京都大学)を中心とした国際機構に関する研究会。
2004~2007年 「現代的な文脈における条約法の再検討—条約義務に対する国家の同意の内実」研究分担者 坂元茂樹教授(神戸大学)代表の科研費プロジェクト。
2004年10月 ドイツ・マックスプランク国際法研究所主催ワークショップEnsuring Compliance with Multilateral EnvironmentalAgreements: a Dialogue between Practitioners and Academia報告 バーゼル条約遵守メカニズムについて報告。成果は上記2006年英書。
2000~2001年 広島平和研究所「新介入主義」研究会共同研究員 主に、人道的介入について、法、政治、実務の視点から包括的に検討する研究会。大阪大学・星野俊也助教授(当時)主催。
1999~2008年 国立極地研究所共同研究員 2~3年のプロジェクトベースにて研究員に応募。採用されると極地研の図書室などの資料が自由に使える。
1998~2000年 「国際組織のアカウンタビリティー」研究会 米国国際法学会共同研究プロジェクト。成果は上記2002年英書。
1998~1999年 環境条約研究会 西井正弘教授(京都大学(当時))を中心とした研究者と実務家(外務省・環境庁)の研究会(住友財団助成研究)
1995年8月 オランダ・ハーグ国際法アカデミー国際法研究所The International Aspects of Natural and Industrial Catastrophes参加 David D. Caron教授、Charles Leben教授が指導教員となったプロジェクト。成果は上記2001年英書。
1990年4月~ (京都)国際法研究会 故・田畑茂二郎先生を中心とした研究会。毎週土曜日に京都で開催されている。
1990年4月~ 京都大学国際法学研究会OB 京大で国際法を勉強し、Jessup模擬裁判に参加する学生サークル。柴田は第2代会長。
1988年10月~ 京都大学・位田会 京都大学法学部の位田ゼミ(国際法)。柴田はゼミ1期生。
5.研究経緯

主な研究領域と研究の概要

(1)国際法形成過程論の研究

 現代国際社会を規律する法規範はいかに成立し、誰に対してその遵守を要請し、そしてなぜ現実に遵守される(もしくはされない)のであろうか。私は、この古くて新しい問題を、法規範の形成過程における正当性と公正さを一つのメルクマールとして検討していこうと考えている。

 私は、従来から国際法の法源論に関心があり、京都大学法学研究科に提出した修士論文では、「一貫した反対国」の法理をテーマとした。それを5年がかりで公表論文に仕立てた結果が、岡山大学法学会雑誌第46巻2号(1997)に掲載されている「『一貫した反対国』の法理再考ー国際法形成過程研究序説ー 」である。この論文では、「一貫した反対国」の法理が理論的に脆弱であることを論証しながらも、それが政治的に主張される背景には、伝統的な法源論がかかえる問題があることを指摘した。そして今後の法源論の再検討及び国際法形成過程論の構築の道標として(飽くまで仮説的に)、国際法形成過程における正当性と公正さを提示した。

 私が正当性及び公正さという概念に着目することになったのは、ニューヨーク大学留学中(1992-94)にトーマス・フランク教授に指導を受けたことが大きな契機となっている。留学当時、法規範の形成過程において正当性の概念を導入することの意義と有効性を検証するために、国連環境開発会議と第三次国連海洋法会議の法形成過程を比較検討した論文を発表した。また、1997年3月に公表した「>自然及び産業災害時の国際緊急救援制度の成立」国際緊急救援制度)も、国際レジーム成立の諸要因を法的観点から検討したものである。フランク国際法学の理論枠組みは、「国際法における公正ーフランク国際法学の主眼と課題ー」 岡山大学法学会雑誌第47巻4号(1998年)で明らかにした。この論文では、フランク教授のアプローチを参考にしながら、規範形成過程の正当性と規範による権原配分の結果の公正さを、当該規範の「義務づけ力」もしくは「遵守力」との関係において把握する理論枠組みを提示し、閉塞的な伝統的法源論を再検討するための視点をそこに見出した。

 上に仮説的に提示した理論枠組み、すなわち規範形成過程の正当性は当該規範の遵守力と相関関係にあるという理論を、実証的に補強する試みが、「国際法形成フォーラムとしての南極条約協議国会議の『正当性』」(1999年10月国際法学会報告、国際法外交雑誌第99巻1号(2000年4月))である。南極条約協議国会議は、南極地域に適用される法規範を定立する国際法形成フォーラムであるが、それに参加できるのは、南極地域に基地などを設置した協議国のみである。他方で、南極条約は、南極条約上の諸原則が「全人類の利益」になることを宣言している。少数(現在44ヶ国)の協議国のみが参加する協議国会議において、全人類の利益に合致し、そして国際社会全体によって遵守されうる規範を創設するには、いかなる「正当性」の要素を備えていなければならいか。この南極条約協議国会議の「正当性」をめぐる議論が、1980年代、協議国会議内部においても活発になされていたのである。こうした「正当性」認識は、1970年代における南極条約協議国会議の性格」(岡大法学会雑誌第49巻3-4合併号(2000年3月)と比較すると、顕著である。 

(2)日本の対外関係法の研究・紹介

 私が留学中痛感したのは、日本の外交に関する法制度の研究とその他国への紹介が必ずしも十分に行われていないということであった。米国では「対外関係法Foreign Relations Law」という講義科目があるぐらいである。そこで、当時ちょうど日本のPKO法が成立したこともあって、イェール国際法雑誌にPKO法の紹介とその問題点を紹介した論文を掲載した。これがきっかけとなって、国連大学が進めているプロジュクト「国連平和活動への参加に関する国別ガイド」の日本について、その執筆を依頼された(L. William Heinrich, Shibata Akiho, and Soeya Yoshihide, UN Peace-keeping Operations: A Guide to Japanese Policies (UNU Press, 1999))。ここでは、カンボジア、ルワンダ、モザンビーク、ゴラン高原などにおけるPKO法の実際の適用状況を分析しながら、日本の国連平和活動への参加の範囲と問題点を論じている。また、災害時における緊急援助隊派遣に関する法についても、若干分析している。また、同様の内容の論文を、フランス語で公表した(Participation japonaise aux operations de maintien de la paix de l'ONU, Perspectives asiatiques No.6 (1999))

 最近では、アメリカ国際法学会主催の共同研究プロジェクト「国際組織のアカウンタビリティー」に参加し、国連軍事活動への参加を規律する各国国内法政の比較検討にも着手している(1998-2000年)。この研究の成果も、将来、出版される予定である。

(3)国際法理論と環境条約交渉のインターフェイス

 2009年度から3年間の計画で進められていた、挑戦的萌芽研究「国際法理論と環境条約交渉のインターフェイス−『学者外交官』の実践」(研究代表者・柴田明穂)は、無事終了しました。本研究は、国際法理論と環境条約交渉のインターフェイスを分析することを通じて、形成途上にある条約制度がそれを基礎づけ枠づける(はずの)国際法の理論的支柱とどのように関連づけられて交渉されたのか(されなかったのか)を、動態的に解明することを目的としていました。本研究の理論的問題関心は、国際法の断片化現象(fragmentation)にあり、その態様を自立的制度が形成されるプロセスにおいて、どの程度国際法の一般理論が省察されているかを分析し、国際法の学としての一体性論への萌芽的貢献の一助とすることありました。そのため、本研究では、条約交渉に参加する「学者外交官」の思考と実践をとおして、その経験値を積み上げていくという研究手法を採用しました。つまり、断片化の原因とされる自立的環境条約制度の形成過程に「入り込んで」、そこにおける国際法理論の機能を、交渉と理論を一体的に体現しうる「学者外交官」の実践をとおして考察したものです。

 最終年度では、第1に、「責任と救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書」の交渉過程を政府代表団の一員として追い、一般国際法理論たる「責任liability」概念の役割につき検討を行いました。第2に、有害廃棄物に関するバーゼル条約における「条約改正発効要件条項の解釈」に関する議論をNGOとして会議に出席して追い、条約解釈に関する国際法の一般理論の役割について検討を行いました。以上の2つの事例の検討を通じて、国際環境法の断片化現象の実態につき課題提起的な考察を行うことができました。「責任と救済」制度については、関係専門家との共同研究の結果(Akiho SHIBATA ed., The Nagoya-Kuala Lumpur Supplementary Protocol on Liability and Redress to the Cartagena Protocol on Biosafety (Routledge, 2014)、EU法で導入された責任に関する「行政的アプローチ」を国際版に「改訂」して、責任概念の転回を図ったことが明らかになりました。これは責任概念の断片化ではなく進化(evolution)と位置づけることができると思われます。他方で、バーゼル条約における発効要件条項の解釈は、結果的にコンセンサスで採択され、形式的には条約法条約第31条3項(a)の諸要件を満たしうるとは言え、現場の交渉状況を反映した政治的判断にて「合意」が成立したと言えるでしょう。つまり、国際法理論との整合性よりも政治判断が優先された結果としての断片化の現れであると言えるのです。