01.兼題[双六/絵双六]
双六や いつかはきっと ゴール来る
双六や いのちまかせる サイコロに
双六も カルタもみんな 冬眠か
(二〇二五年一月八日)
02.兼題[初鏡]
初鏡 今年も見るか わが心
姿見る 前も後ろも 初鏡
初化粧 紅引く筆に 祈り込め
(二〇二五年一月一五日)
03.兼題[寒椿]
竹藪に 二輪交わり 寒椿
雪が舞う わが庭の華 寒椿
寒椿 咲いて短い いのちかな
(二〇二五年一月二二日)
04.兼題[コーヒー]
喫茶店 いまはコンビニ 紙コップ
豆を挽き お湯を注いで さあどうぞ
コーヒーや 香りと味と 黒に酔う
(二〇二五年一月二九日)
05.兼題[薄氷(うすらい)]
薄氷を 割って食べたる 陽だまりで
薄氷を 足でたたいて 水遊び
薄氷を 手にして落とす モンスター
(二〇二五年二月五日)
06.兼題[春セーター]
春色の 買ったセーター まだ早い
セーターに 春を詰め込む ショッピング
セーターを 替えて楽しむ 春の陽に
(二〇二五年二月一二日)
07.兼題[梅]
紅白の かそけき梅の 山に咲く
梅の下 咲く花びらに 暖を見る
残る寒 梅見楽しや 紅と白
(二〇二五年二月一九日)
08.兼題[春泥]
春泥に 身を寄せ合わす 子どもかな
春泥や 今年はじめの 水遊び
雪が融け 水が流れて 土なじむ
(二〇二五年二月二六日)
09.兼題[囀り(さえずり)]
囀りに 目覚めしわれは 巣箱かけ
あちこちに 囀り渡り 森響く
囀るも 山はまた雪 立ち止まる
(二〇二五年三月五日)
10.兼題[卒業]
いまここに 業を卒する 別れかな
卒業は 学婚人の 区切りなり
卒業の 遅い早いの 違いあれ
(二〇二五年三月一二日)
11.兼題[田楽]
田楽や 阿蘇高森に 姿あり
囲炉裏端 つるのこ芋を 焼いて食う
火が起こり いま田楽を 串にさす
(二〇二五年三月一九日)
12.兼題[スリッパ]
スリッパや 今日から夏に 衣替え
スリッパの 合わぬ異国の 大男
羽田にて 草履を買いし 異国人
(二〇二五年三月二六日)
13.兼題無し
見物に 九十九曲り 山ザクラ
山ザクラ 咲いていいかと 聞きにけり
甘酒を お代わり重ね 山ザクラ
(二〇二五年四月二日)
14.兼題[アスパラガス]
フキノトウ アスパラガスに 何を見る
大阿蘇や ツクシ芽を出し アスパラ続く
天ぷらは アスパラガスの 一点盛り
(二〇二五年四月九日)
15.兼題[海]
舷の下 照らし輝く 海ボタル
八月の 恋する海に 抱かれて
白い帆に 風をはらませ 海の上
(二〇二五年四月一六日)
16.兼題[桜・花]
風吹いて わが家のさくら 舞いにけり
花びらが 庭一面を 隠したり
空から地 薄桃色の 大変化
(二〇二五年四月二三日)
17.兼題[燕]
軒下で 急ブレーキの 親ツバメ
ツバメの巣 土とわらとに 唾液混ぜ
空中で 旋回披露 芸ツバメ
(二〇二五年四月三〇日)
18.兼題[麦の秋]
金色の さらさら揺れる 麦の秋
幼き日 食べた麦飯 とろろかけ
麦の秋 青と緑の 空と山
(二〇二五年五月七日)
19.兼題[空]
青春の 空を見上げて 勇気湧く
探しても 空にあるもの 見つからず
病む体 空も病むのか 聞いてみた
(二〇二五年五月一四日)
20.兼題[祭]
遠くから 祭りのはやし 聞こえくる
日暮れて 祭りに集い 綿菓子を
思い出は あの日あの夜の 祭りの音
(二〇二五年五月二一日)
21.兼題[自転車]
自転車の 操作伝授の バトン継ぐ
自転車や 歩きを越えて 空を飛ぶ
自転車で きずな深める 父と子の
(二〇二五年五月二八日)
22.兼題無し
枯木から 葉を出す緑 陽に光り
栗の花 散りて間もなく 梅雨入りか
新緑や 雨に洗われ 輝きぬ
(二〇二五年六月四日)
23.兼題[氷水]
風に揺れ たなびく旗の 「氷」かな
どれ選ぶ 「氷」にかける 蜜の色
味よりも 体凍らす かき氷
(二〇二五年七月九日)
24.兼題[雲]
雲流れ 雲たなびきて 雲湧きぬ
見上げても 子のときに見た 雲はなし
どこへ行く どこから来たの その雲は
(二〇二五年七月一六日)
25.兼題[滝]
しぶきあげ 滝に清める 身とこころ
朝もやの 滝音聞いて 目を覚ます
はね返す 肩に重たい 滝水を
(二〇二五年七月二三日)
26.兼題[虹]
雨上がり 東の山に 色の橋
七色の 円弧を描く 幾何模様
誘われて 虹を渡れば そこはどこ
(二〇二五年七月三〇日)