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宮川栄一の出版

英語で書いたものもありますが、ここでは日本語で紹介します。

中央集権的でないマッチング・ゲーム

Decentralized Matching: The Role of Commitment

エフロシーニ=ダイヤマントゥージ(Ευφροσυνη Διαμαντουδη)・宮川 栄一・リクン=シュエ(薛 立村)

ゲールとシャプレイによる有名なマッチング・モデルでは、安定的なマッチングが必ず存在することが知られている。しかし、モデルの主要な応用例は、各個人が自分の選好を中央に提出し、組合せはアルゴリズムによって計算される、という中央集権的市場であり、しかも、組合せは一度しか行われないという場合である。一方、多くの就職市場(たとえば経済学者の市場)では、組合せを決定する「中央」は存在せず、組合せは分権的に決定される。しかも、組合せが決まった人・企業でも次期の市場に参加してさらに望ましい相手を探すことが可能である。そこで、本研究は無限期間モデルにおいて組合せが毎期分権的に決まるゲームを考える。このゲームでは、毎期、空きポストをもつ企業が労働者にオファーを出し、オファーを受けた労働者は受諾・却下の決定を下す。 一度決まった相手を変えることができるかでゲームが変わるので、本稿は次の3つの場合を考える。(1)だれも相手に束縛されない場合:労働者は他企業に移籍できるが解雇される可能性もある。(2)企業も労働者も相手に束縛される場合:一度相手が決まると労働者も企業も市場から退出する。(3)企業だけが束縛される場合:企業は労働者を解雇できないが、労働者は他企業に移ることができる。それぞれの場合について定常(マルコフ)均衡を調べた。両側とも相手に束縛されない場合、均衡マッチングは安定的であり、しかも全ての安定マッチングは均衡として実現されうる。したがって、企業がオファーを出すというゲームであるにも関わらず、均衡は企業に有利というわけではない。一方、少なくとも片側が束縛される場合、不安定マッチングが均衡として実現されうる。さらに、片側束縛の均衡においては、すべての安定マッチングが労働者にとってパレート改善になる、という場合がある。この場合、解雇法制による労働者保護を撤廃することによって労働者全員の効用を上げることができる。

Games and Economic Behavior, Volume 92 (2015), Pages 1-17.

原稿(PDF)

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MATLABプログラム出力結果

Notice: Copyright and all rights therein are retained by Elsevier Science. The original publication is available in Science Direct at http://www.sciencedirect.com.


新卒一括採用の経済理論:改訂版

日本企業は,正社員を採用する際に新卒者を重視し,既卒者とは厳格に区別する。その理由を数理的に明らかにするゲーム理論モデルを提示する。企業は応募者を面接し,面接結果に応じて採用オファーを出すか否かを決める。オファーが受諾されて労働者を採用した場合,その労働者の能力が低いと判明しても,解雇せずに終身雇用する。既卒者は,就職活動に一度失敗していることから能力が低いと判断され,企業に門前払いを食らう。一方,留年は企業に問題視されない。就職活動の機会費用の分布次第では,新卒と既卒が区別されない均衡が,新卒重視の均衡と併存する。

『国民経済雑誌』第212巻第3号(2015) 近刊

原稿(PDF)


新卒一括採用の経済理論

新規学卒一括採用は日本の労働市場の大きな特徴である.就職市場では厳密な新卒者が優先され,就職できずに卒業するとその後の就職活動で格段に不利になる.なぜ新卒者が好まれるのか,といったことは労働経済学や社会学で議論されているが,経済学の理論モデルを使った議論はほとんど行われていない.そこで本稿では,終身雇用の企業が求職者に面接を行って採用・不採用を決めるゲーム理論モデルを考え,新卒一括採用のしくみを分析する.また新卒と既卒を判別不能にする政策がとられた場合,就職市場ゲームの均衡がどう変化するかも考察する.

『国民経済雑誌』第208巻第4号(2013)

原稿(PDF)


1位価格オークションの解法

他人のことがよく分からないという不完備情報のゲームは分析が難しい。そこで本稿では,不完備情報ゲームの中でも応用例が最も多いオークション・競売の解き方を解説する。1位価格オークションとは,入札額を封印して提出する形式のオークションで,ごく一般的に使われているものである。解説は虫食い形式になっているので,答えを自分で考えながら読み進めることが出来る。答えは最後に掲載してある。何度も同じような計算をするので,読み終わるころにはオークション理論が身に付いているであろう。

『経済学・経営学学習のために』平成26年度後期号

原稿(PDF)


じゃんけん癖のゲーム理論

じゃんけんの標準的なゲーム理論分析では,すべての手を等確率で出すという結論になる。しかし,実際のプレーヤーには癖や傾向が存在する。そこで本稿では,「ついついグーを出してしまう」というタイプの癖を理論モデルに取り入れて分析を行う。相手の癖についてはプレーを通じて推測するしかないと仮定する。すると,ゲームの均衡プレーには「前回出した手はあまり出さない」という負の自己相関が現れる。例えばグーを出してあいこになると,次はグーの確率を下げるのである。これは癖があるプレーヤーでも癖のないプレーヤーでも同じである。この結論は,毎回独立に等確率で出すという標準的な結論が必ずしも正しくないことを示唆する。

『国民経済雑誌』第204巻第4号(2011)

抜刷(PDF)

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人気と行列の経済学モデル

レストランに長い行列が出来ていると,そのお店で間違いないと考えて,自分も行列が加わる,ということがよくある。売れているものがますます売れる仕組みである。こうした現象を描写する経済学モデルを紹介する。偶然できた短い行列が長い行列を作り続ける仕組みが明快に分かって面白いモデルである。

『経済学・経営学学習のために』平成21年度後期号

抜刷(PDF)


変則じゃんけんの動学均衡

じゃんけんはゲーム理論の応用例として頻繁に取り上げられる。そこでの分析に共通する点は,じゃんけんを静学ゲームとして取り扱っていることである。じゃんけんを一回限りの選択として分析しているのである。一方,じゃんけんには「あいこ」があり,あいこになると再度じゃんけんが行われるのが普通である。したがって,決着がつくまでのプロセス全体は動学的なゲームとなる。本稿では,じゃんけんを素直に描写した動学ゲームを分析する。動学分析が面白くなるのはプレーヤー間に非対称性がある変則じゃんけんなので,そうしたじゃんけんを一つ取り上げて詳細に分析する。具体的には,片方のプレーヤーがパーを出せないという場合を考える(バルタン星人を思い浮かべると分かりやすい)。教科書風に分析すると,パーを出せないプレーヤーも10%以上の確率で勝てる。しかし,実際にプレーしてみると明らかだが,そんなに高い確率では勝てない。動学ゲームとして正しく分析を行うと,勝つ確率はほぼゼロになる。じゃんけんをすることにわずかでも正のコストが発生する場合,不利な方のプレーヤーは最初からわざと負ける。

『国民経済雑誌』第200巻第6号(2009)

抜刷(PDF)

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観測に費用がかかる繰り返しゲームでのフォーク定理

The Folk Theorem for Repeated Games with Observation Costs

宮川 栄一・宮原 泰之・関口 格

繰り返しゲームの理論では、他人の過去の行動を各個人がどれだけ知っているかに関して さまざまな想定をおいて分析がされてきた。しかし、それらに共通した仮定によれば、 情報の収集は外生的に(自動的に)行われる。実際には、費用を多く払えば質の高い情報が手に入るという関係が存在し、各個人は情報収集レベルを最適に選ぶと考えるのが自然であろう。本論文では、今期の他人の行動を観察するには一定の機会費用がかかると考える。観察行動は私的に行われ、他人には観察できないとする。このように拡張された繰り返しゲームでは、トリガー戦略のような既存の戦略はうまく機能しない。従来の戦略では他人を観察しようとする動機が発生しないからである。本論文では具体的な混合戦略を提示することによって一般的なフォーク定理を証明する。このフォーク定理は、標準的な次元条件をみたすステージゲームすべてについて成立し、 ゲームの途中において明示的な話し合いができない状況でも成立し、 観察の費用がどれだけ大きくても成立する。観察が可能であれば、それがどれだけ費用のかかることだとしても、効率的な協調・共謀が可能になるのである。

Journal of Economic Theory, Volume 139, Issue 1, March 2008, Pages 192-221.

論文(PDF)

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意志力に限りがある消費者に対する最適販売戦略

Optimal Menu of Menus with Self-Control Preferences

スザンナ=エステバン・宮川 栄一

標準的経済学の世界では、消費者に誘惑は発生しない。消費者は自分の選択を完全にコントロールできると想定されている。この想定によれば、禁煙やダイエットをしたいひとは容易にできるし、意志に反してお金や時間を浪費してしまうということも起きない。しかし、平均的な消費者に誘惑は生じるし、心理的負担のために自制は不完全になりがちだろう。また、そのことを知っている企業はそれを最大限利用するはずである。最近の意志決定理論の発展により、意志力に限りがある消費者の行動を定式化することは可能になった。本論文では、Gul and Pesendorfer (2001) による選好の定式化と、非線形料金(第二種価格差別)の標準モデルを使って、独占企業の最適価格戦略を明らかにする。

その結果のよると、財の限界価値を誘惑が引き上げる場合、完全価格差別が可能である。企業は消費者の選好を知らないのだが、料金体系をうまく設定することによって、完全情報の場合と同じ結果を実現できる。企業はまず、消費者の選好タイプそれぞれについて、余剰を完全に獲得する料金プラン(メニュー)をつくる。しかし、そのままでは企業の想定どおりには消費者が料金プランを選択してくれない。そこで、企業は各料金プランを修正して、想定外の消費者がそれを選ぶと彼らを誘惑で悩ませる選択肢をプランに組み入れておくのである。そうすると、消費者は誘惑を避けて企業の想定どおりに料金プランを選ぶことになり、企業は総余剰を得る。

この完全価格差別の命題は、選好の定式化の細部に依存しない一般的な結果である。また、選好が標準的な選好に限りなく近い状況でも成立する。つまり、誘惑がわずかでも存在すると標準理論は最適戦略を近似しない。また、入場料を課すことは標準的選好のもとでは効果を持たないが、誘惑が存在する世界では企業の利潤に貢献することも明らかにする。

2006年12月18日(初公開 2004年11月4日)

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消費者の誘惑に対する最適非線形料金

Nonlinear Pricing with Self-Control Preferences

スザンナ=エステバン・宮川 栄一・マシュー=シャム

ひとは自分が望む選択肢を選ぶ、というのが経済学の基本的な仮定である。 一方で、したいのにできないということはよくある。 タバコをやめたいけどやめれない、やせたいのに食べてしまう、 貯金したいのに使ってしまう、仕事をしたいのに怠けてしまう、等々。 平均的な消費者を考えるかぎり、誘惑は存在するだろうし、 自制には心理的負担がかかるであろう。 誘惑は存在しない、あるいは誘惑があっても自制コストがゼロである、 という標準仮定は極端である。 自制のレベルは費用と便益によって内生的に決まると考えるのが自然である。

誘惑や自制コストが消費者にあるとすれば、企業はそれを知っているはずである。 この仮定のもと、本論文は企業にとって最適な販売戦略を理論的に明らかにする。 具体的には、独占企業の利潤を最大にする非線形料金を導出する。 標準モデルの場合とちがい、企業には選択肢を少なくして消費者の自制を容易にしようとするインセンティブがはたらく。 我々のモデルにおける最適な料金体系は、標準モデルにおいて価格に上限が設定されている場合の最適料金体系と非常に似ていることが判明する。 ただし、価格の上限は参加条件から内生的に決まる。 この上限のため、自制コストを無視する標準理論の結論と比べると、企業は比較的平らで小さな料金表を設定し、より低需要の消費者を顧客として含む。 また、誘惑の存在が企業の利潤を下げる可能性があることも判明する。 消費者に誘惑があるからといって、それが企業を有利にするとは限らないわけである。

2006年5月13日(初公開 2003年9月24日)

Journal of Economic Theory, vol 135 (2007), no 1, pp 306-336.

論文(PDF)

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操作不可能な資源配分ルール

Non-Manipulable Division Rules in Claim Problems and Generalizations

ジュ=ビョンギー(朱 丙起)・宮川 栄一・坂井 豊貴

資源を配分する場合、個人の特性が考慮に入れられるのが普通である。 たとえば、破産企業の財産を債権者に配分する場合、当然のことながら各債権者の債権額が考慮に入れられる。そのため、 配分ルールを誤ると、複数の個人があらかじめ自分たちの間で特性を移転することによって自分たちの受取総額を増やすことが可能になる。 本論文では、そういった移転操作が決して得にならない配分ルールとはどういったものかを明らかにする。 本論文の結果は、破産問題・費用配分問題・所得再分配問題・効用が譲渡可能な場合の社会選択問題などに応用可能であるし、 「個人」を「状態」に読みかえることによって、確率分布を更新する問題や、 各個人が持っている確率的予想を一つの予想に集計する問題にも応用できる。 確率の更新・集計問題において操作不可能性が意味することは、問題とする事象へ割り当てられる確率が、 その事象がどれだけ詳細な状態の集合として表現されているかに関係なく決定される、という情報的効率性である。 本論文の結果から、具体的な配分問題における既存の結果(特に比例配分ルールの公理化)や新しい結果が数多く得られる。

Journal of Economic Theory, vol 132 (2007), no 1, pp 1-26.

論文(PDF)

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消費者の誘惑を利用した競争的価格設定

Temptation, Self-Control, and Competitive Nonlinear Pricing

スザンナ=エステバン・宮川 栄一

標準的経済理論では消費者に誘惑は生じないと仮定されているが、 実際には誘惑は存在し、企業はそれを最大限利用するはずである。 この論文では、消費者の誘惑を明示的に考慮し、 複数の企業が競争関係にある状況における均衡を明らかにする。

Economics Letters, vol 90 (2006), no 3, pp 348-355.

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標準形ゲームにおけるフェアプレー均衡

Fair Play Equilibria in Normal Form Games

宮川 栄一・長久 領壱・須賀 晃一

社会規範が社会に受け入れられるためには ある程度の首尾一貫性・手続き的公平性がなければなければならないだろう。 倫理学において普遍化可能性とよばれている原理によれば、 ある特定の個人の特定の状況における特定の行動についての道徳的判断は、 他の個人の同じような状況における同じような行動に普遍化することができなければならない。 本論文では、この普遍化可能性原理が社会の均衡行動に及ぼす影響を明らかにするために、 ゲーム理論の枠組みのなかで社会選択理論の公理を適用する。 社会規範とは他人の行動に対してどういう行動で反応することが社会的に正しいのかを判定する。 フェアプレー均衡とは、社会規範の制約のもとにおいて各個人が最適に行動している状態である。 すると、普遍化可能性原理を満たす社会規範のもとでは、すべてのゲームにおいて フェアプレー均衡の集合がナッシュ均衡の集合と合致する。 したがって、社会規範が普遍化可能性原理を満たすことと 社会的に望ましい行動を誘引することとは緊張関係にあることがわかる。

2005年6月7日(初公開 2003年1月22日)

論文(PDF)


観測費用つきの繰り返しゲーム

Repeated Games with Observation Costs

宮川 栄一・宮原 泰之・関口 格

本稿は、繰り返しゲームのなかでも他のプレーヤーの過去の行動を観測することに費用がかかる場合を考察する。 過去を観測するかどうかの決定自体は他のプレーヤーに観測されないと仮定するため、 協調的・効率的な均衡を構築する上で、観測するインセンティブをプレーヤーに与えることが重要になる。 所与の利得ベクトルが、観測費用が十分に小さければ均衡として近似的に達成可能であるための十分条件を本稿は提示する。 さらに、この条件を使って様々なステージゲームについて近似フォーク定理が成立することも示す。 具体的には、囚人のジレンマの一種やパートナーシップゲーム、 プレーヤーが自己の利得を微調整できるゲームにおいて近似フォーク定理が成立することを示す。

2003年1月27日

論文(PDF)


簡略型メカニズムデザイン

Reduced-Form Implementation

本稿では、資源配分メカニズム(制度)を簡略的な定式化を使って考察する。 本稿のアプローチでは、メカニズムの状態の集合、 各状態において各個人が引き起こすことができる結果の集合、 各状態においてメカニズムが許容する結果の集合、 の3つを指定するものとしてメカニズムを定式化する。 このメカニズムの定式化には、従来のゲーム型のみならず、 多数決制度や市場メカニズムの古典的な定式化も含まれる。 所与の社会選択関数(対応)が何らかのメカニズムの均衡として 実現可能であるための必要条件として従来から考察されてきた 単調性という条件は、本稿の定式化のもとでは必要十分条件となる(一般的な枠組みにおいて)。 本稿の主要命題では、純粋交換経済を考え、局所性という条件 (個人の「選択肢集合」が他人の初期保有ベクトルから独立であるという条件) を満たすメカニズムについては、もしそれが常に均衡としてパレート最適配分を実現するものであれば、 そのメカニズムの均衡配分はコア配分であることを示す。 また、メカニズムが匿名性をも満たすのであれば均衡配分は競争均衡配分であることも示す。

コロンビア大学経済学部ディスカッション・ペーパー第0203-09号

2002年9月3日改訂

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ルームメート問題における安定へのランダム経路

Random Paths to Stability in the Roommate Problem

エフロシーニ=ダイヤマントゥージ・宮川 栄一・リクン=シュエ

本稿では、ルームメート問題において近視眼的な逸脱(ブロック)の連続が安定マッチングにたどり着くかどうかを考察する。 任意のルームメート問題において、もし選好に無差別がなく、 安定マッチングが存在するのであれば、出発点となるマッチングを任意に選んでも、 近視眼的な逸脱の有限の列で安定マッチングに到達するものが存在することを本稿は証明する。 この定理によれば、逸脱をして(近視眼的に)得をする2人組を無作為に選ぶ確率過程は、 初期マッチングが任意であっても、安定マッチングに確率1で到達することになる。 無差別がない問題においては、本稿の定理から Roth and Vande Vade (1990) と Chung (2000) の定理が導き出せる。

Games and Economic Behavior 48(1): 18-28 (2004)

論文(PDF)

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実現可能性とコアとの関係

The Relation Between Implementability and the Core

本稿では、パレート最適性を実現する資源配分メカニズムに関する一般的で簡明な定理を証明する。 初期から保有していた財ベクトル(貨幣を除く)をそのまま受け取ることになった個人については 金銭の支払・受取がないようなメカニズムを標準的なメカニズムとよぶことにする。 すると、標準的メカニズムのなかでナッシュ均衡配分がつねにパレート最適であるものについては、 ナッシュ均衡配分はコア配分であることを示す。 非貨幣財の非分割性が大きい資源配分問題であれば本稿の定理は一般的に成立する。 代表的な具体例はマッチング・集団形成問題である。

コロンビア大学経済学部ディスカッション・ペーパー第0102-64号

2002年7月

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部分ゲーム完全均衡における交渉解の実現

Subgame-Perfect Implementation of Bargaining Solutions

本稿では、2人交渉問題の様々な解を部分ゲーム完全均衡点として実現する4段階ゲーム型群を提示する。 交渉決裂の場合の効用が0で最大効用が1となるように各個人の(vN-M)効用関数を標準化したあとで、 単調・準凹関数を最大化するような交渉解であれば、本稿のゲーム型の一つによって均衡点として実現できる。 代表的な具体例はナッシュ解・カライ=スモロディンスキー解・相対的功利解である。 本稿のゲーム型は、メカニズムデザイン理論で頻繁に使われる「整数ゲーム」を使用せず、 オファーを交互に出しあう構造をもつ。

Games and Economic Behavior 41(2): 292-308 (2002)

論文(PDF)

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複数割り当て問題における操作不可能性・連帯性・整合性

Strategy-Proofness, Solidarity, and Consistency for Multiple Assignment Problems

ベティーナ=クラウス・宮川 栄一

本稿では、非分割財配分問題のなかでも個人が複数個の非分割財を消費することを望む可能性があり、 金銭の移転が行われない場合を考察し、経済・社会的観点から望ましい性質をもつ配分方法とは何かを検討する。 具体的には、パレート最適性や操作不可能性に加え、 連帯性に関する2つの条件(置換単調性・人口単調性)や整合性を満たす配分方法の特徴付けを行う。 これらの条件の組み合わせの多くの場合において、条件を満たす配分方法は順次独裁制のみであることを証明する。

International Journal of Game Theory 30(3): 421-435 (2002)

論文

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家配分問題における操作不可能性とコア

Strategy-Proofness and the Core in House Allocation Problems

本稿では、L. Shapley and H. Scarf (1974, J. Math. Econ. 1, 23-8)によって定式化された家配分問題を考察する。 操作不可能性・匿名性・初期保有からのパレート改善性・ノンボッシネスの4つの条件を満たす社会選択関数が、 一意に存在するコア配分をつねに選ぶ関数と、初期配分をつねに選ぶ関数の2つしかないことを本稿は証明する。 この命題は、操作不可能な社会選択関数のなかで「面白い」と言えるものがコア関数のみであること、 それがパレート非効率な配分を選ぶ関数まで含めても言えることを示している。

Games and Economics Behavior 38(2): 347-361 (2002)

論文(PDF)

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金銭移転が可能な場合の家配分問題

House Allocation with Transfers

Shapley-Scarfによって定式化された家配分問題において金銭移転が可能な場合を本稿は考察する。 操作不可能性・初期保有からのパレート改善性・収支均衡性・ ノンボッシネスの4つの条件を満たす社会選択関数の特徴付けが本稿の主要命題である。 この4条件を満たす社会選択関数においては、すべての財の価格が事前に固定され、 その価格ベクトルのもとで導出されるShapley-Scarf経済のコア配分によって財が配分される。 すべての価格がゼロの場合が、金銭移転のない場合を考察したShapley-Scarfのコア関数に対応すると考えられる。 これらの社会選択関数がグローブズ・メカニズムと比べて望ましい点は、 結託をある程度防ぐ効果のあるノンボッシネスを満たし、収支を均衡させるところである。

Journal of Economic Theory 100(2): 329-355 (2001)

論文(PDF)

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図書館配置問題

Locating Libraries on a Street

Hotelling (1929) は競争関係にある2企業がその位置を決定する問題を考察した。 本稿では、2つの同一の公共施設(例えば図書館・公園・橋)の位置を計画者が決定する問題を考え、 施設をどこに建設すべきかという規範的な問題を検討する。 消費者間の連帯性という概念を定式化した置換支配性という条件とパレート効率性を満たす社会選択関数の特徴付けを本稿は行う。

Social Choice and Welfare 18(3): 527-541 (2001)

論文

出版社によるページ

【注意】パレート集合の描写のところにタイプミスがあります(531ページの4段落目の4行目です)。 個人 i と j の理想点はどちらも [x, y] に入っている必要があります。 論文のその他の部分はこれによって影響されません。 このタイプミスを指摘してくれた Lars Ehlers に感謝します。

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