2018年の働き方改革の目玉の一つとされていた「同一労働同一賃金」は,ほんとうに正しい政策なのだろうか。本書は,正社員と非正社員との間の格差が生じる理由を,日本型雇用システムに起因するものとみたうえで,これに対して法はどのような対応をしてきたかを歴史的に振り返ったうえで,現在の法の動き(最高裁の判例も含む)は間違った方向に向かっているのではないか,と警鐘を鳴らしたものである。本書の最後には,デジタライゼーションが進む将来においては,正社員も非正社員もなくなり,格差問題はデジアルデバイドという新たなものに変わっていくことも示唆している。「非正社員改革」とは,非正社員それ自体を改革することではなく,非正社員に対する法的アプローチの仕方を根本的に改革することなのである。
デジタライゼーション・第4次産業革命が進行し,産業社会は大きく変わり,さらに企業内の業務体制も激変が予想されるなか,こうした新しい時代の働き方の未来図を展望した本である。重要なポイントは,企業に雇用されて働くという会社員的な働き方がなくなっていくことである。個人でフリーの自営業者として独立して働くようになるとき,人々は自己責任の世界に放り込まれてしまう。この状況を,いかにして個人が自己実現できる理想的な状況に変えることができるか。この課題に立ち向かうためには,何よりも個人の自助が大切であるが,さらに,それを支える政府による公助(セーフティネットの再編や教育の見直しなど)や人々の連帯による共助が大切である。不確定要素の多い将来に向けて,過度に悲観せず,かといって楽観もせず,自分たちのできることや政府のやるべきことを確認するための指針を提示することを目的とした本である。
藤居学(AIG総合研究所 主任研究員)「日本型雇用システムの『終わりの始まり』~書評「会社員が消える 働き方の未来図~」 ITmediaに,「はしがき」の部分が掲載されました。(川口大司と共編著)
日本の現在の解雇規制が採用している無効ルールは,日本型雇用システムの変容により時代遅れとなりつつある。諸外国でも金銭解決ルールが導入されるなか,日本の解雇規制は要件の不明確性も相まって,突出して厳しい。こうした状況をふまえ,どのような解雇規制が望ましいかを問い直したのが本書である。経済学の知見に照らすと,解雇規制の本質は,雇用終了コストにあり,社会的に最も望ましいコストのかけ方は,解雇された労働者の逸失利益を完全に補償することである。もはや解雇の当不当は論じる必要はない。解雇をしようとする使用者は「完全補償」をするのが原則である。そのうえで,解雇原因への労使の寄与の有無に基づき解雇を四つの類型に分けて,それぞれについて理論的にどのような補償額にするのが妥当かを導き出している。最後は,この理論分析をふまえ,新たな解雇ルールを提案している。法学と経済学の真のコラボにより,世界のどこにもない新たな解雇ルールが生まれた。
2018年4月22日の毎日新聞に,大竹文雄教授の書評が掲載された。
エコノミストの2018年7月3日号に,柳川範之教授の書評が掲載された。
書斎の窓658号(有斐閣)に,八代尚宏教授の書評が掲載された。日本労働研究雑誌698号で,野川忍明治大学法科大学院教授の書評が載された。
2009年の初版、2011年の増補版、2012年の第2版、2014年の第3版,2016年の第4版に続く,第5版。
2007年の初版,2010年の第2版に続く,7年ぶりの改訂第3版。労働法上の重要論点を取り上げて,私なりの問題意識を鮮明にして読者に投げかけ議論を喚起するという姿勢は,初版からまったく変えていない。第3版で扱っているテーマは,初版からずっと扱っているコアなもの,昔から論じられているが,議論のアプローチが変わってきたもの,最新の政策がらみのもの,第4次産業革命などを視野に入れた将来の政策課題に関するものなどバラエティに富んでおり,どれも今日の労働法を深く考えるうえで不可欠のテーマである。本書が,サブタイトルにもあるような労働法再入門のためのテキストとして広く活用され,労働法を表面的な知識だけで満足せず,多角的に深く考えて理解しようとする人が増えていくことを心より願っている。
経営法曹196号で,安倍嘉弁護士の書評が掲載された。
第1次産業革命後に誕生した労働法は,人工知能(AI)やロボットの技術の急速な発展と情報通信技術(ICT)の高度化にともなうデジタライゼーションの進行(第4次産業革命)によって,大きな変革の時代を迎えようとしている。これからは既存の労働法や雇用政策では,国民のニーズに応えることができなくなる可能性が高い。未来のことの予想は簡単ではないが,ある程度,悲観的なシナリオをもって,やるべき政策はできるだけ早く着手したほうがいい。本書は,人工知能を中心とする新たな技術と産業が到来した社会をAI社会と呼び,あるべき労働法の姿を大胆に描いたものである。雇用の流動化(解雇法制の見直しを含む)や労働時間制度の改革といった既に長年政策課題になっているものから,現在注目を集めている,テレワークや自営的就労者(インディペンデント・コントラクター,クラウドワーカー)に対するサポート,さらに将来に向けた,自学中心の職業訓練・教育政策への転換,雇用労働者中心の社会保障制度の見直しも含んだセーフティーネットの再編まで,幅広く論点を提起して政策提言をしたものである。
労政時報のBook Reviewで紹介された。
労務事情1335号のBookshelfで紹介された。
日本経済新聞(2017年3月9日夕刊)で,中沢孝夫氏にご紹介いただいた。 日本経済新聞(2017年3月11日土曜版)の読書欄で紹介された。 改革者(政策研究フォーラム)2017年6月号で,東海学園大学経営学部准教授の南雲智映氏による書評が掲載された。 「10MTVオピニオン」で,イマジニア株式会社の伊藤拓也氏にご紹介いただいた。 日本労働研究雑誌684号の「読書ノート」で,野川忍明治大学法科大学院教授に論評いただいた。2009年の初版、2011年の増補版、2012年の第2版、2014年の第3版に続く、第4版。おかげさまで、順調に版を重ねることができている。
光文社新書の第2弾。前著の『君の働き方に未来はあるか?』の後継書。本書では、働いている人たちがなぜ不幸を感じるのか、ということを、労働法研究者の観点から分析してみたもの。働くうえでの自主性の回復、とりわけ時間に関する決定権(時間主権)をもつことの重要性を強調している。長い職業人生において、いかにして幸福を追求していくかということを真剣に考えている人には、前著と合わせて、ぜひ手に取ってもらいたい。今後の職業人生に参考になることが見つかるだろう。
当初は、人事担当の役員たちが、新幹線で、東京と大阪を往復する間に読めるような本を書いて欲しいという企画だった。扱うトピックがだいたい決まった後、思い浮かんだのは、優秀な女性社労士の活躍というアイデア。知識はないが、人を活かしたよい経営をしたいと考えている青年社長、その社長のブレーンで知識と経験は豊富だが、人を活かすという視点が弱い専務、そして経験はないが、労働法を正確に学び、正義感にもあふれた社労士資格をもつ女性人事部員が繰り広げる論争を楽しみながら、労働法の知識を学べる本。
私自身、楽しみながら書くことができたし、労働法をネタにして発信や表現をする手段はまだまだあるという感触が得られた。
日本経済新聞で,中沢孝夫氏にご紹介いただいた。