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現代の経済、現代と経済Courses

第7回 政府と日銀の経済政策:財政政策と金融政策と国債

第6回 インフレとデフレのお話し

  •  今回は、政府と日銀による経済政策についてお話しします。景気を良くするためには、2つの政策があります。それが政府による「財政政策」と日銀による「金融政策」です。
     まず「財政政策」は主に2つの手段があり、ひとつは公共事業等によるもので、雇用拡大・所得増加を図るものです。もうひとつが所得税や法人税等の減税によるもので、個人の可処分所得増加や企業収益改善を通じて消費や投資を促すものです。
     これら2つの手段は、財源の歳出増加(公共事業等)、あるいは歳入減少(減税)を伴うので、いずれも財源確保が重要になります。もし財源が十分でなければ赤字国債による補填が必要となり、国の借金が増大することになります。
     
  •  次に日銀が実施する「金融政策」について説明します。金融政策は主にマネーサプライや金利を調整することにより、物価の安定や雇用の拡大などを目的としています。
     金融政策の手段のひとつとして、「公開市場操作」があります。これは日銀と一般銀行の間で国債等を売買することによって、マネーサプライや金利を調整するものです。たとえば「買いオペレーション(買いオペ)」と呼ばれる操作では、日銀が一般銀行から国債を買い、その代金が日銀から一般銀行に支払われることによって市中通貨量が増加します。また銀行は手持ち資金が増加する訳ですから、「低い金利でもお金を貸してもいいよ」という状態になり、金利が低下します。
     逆に「売りオペレーション(売りオペ)」と呼ばれる操作では、日銀が一般銀行に国債を売り、その代金を一般銀行から日銀に支払われることによって市中通貨量が減少します。また銀行は手持ち資金が少なくなって「高い金利でないとお金を貸せない」という状態になるため、金利が上昇します。
     通常、「買いオペ」は景気を刺激するために行われ、「売りオペ」は景気が過熱するなど引き締めが必要なときに行います。
     
  •  この金融政策で重要な役割を果たすのが、国債です。通常、国債金利は預金金利より高いため、銀行等は保有しているだけで利鞘が稼げます。したがって銀行などの金融機関は、特に不況時には貸出先に困るので、国債を大量に保有しています。2013年末現在、国債の総計約970兆円のうち、主な保有比率は金融機関63%、日銀15.5%、海外8.5%となっています。

     実はこの国債、発行することは法律によって禁止されています。財政法第4条には「国の予算は国債発行に頼らず、税収で何とかすること」とあります。ただしこの法律にはつづきがあって、「将来、国の財産として残るような建設的なモノであれば、国会での承認のもとに国債発行は可能」とあり、この条文にもとづき「建設国債」が発行されています。
     建設国債発行は例外的に認められているものの、現在の予算はそれだけではとても足りません。平成25年度予算92.6兆円のうち、税収43.1兆円(46.5%)、建設国債5.8兆円(6.2%)ですから、残りの約40%を「赤字国債」を発行することで何とかしている状態です。

     この「赤字国債」は財政法で明確に禁止されています。にもかかわらず、実際には赤字国債を発行しなければ予算を組めない状況です。そこで「特例公債法案」、つまり「今年1年限りの例外的な事なので赤字国債発行を認めてください」という法案を国会で承認して赤字国債を発行している訳です。
     この法案は「1年限りの例外」のはずですが、実際には予算を組むために、国会ではこの法案を毎年毎年、何十年も承認しています。逆に言うと、この法案が承認されなければ、年度予算はストップしてしまいます。そのため「ねじれ国会」等、少数与党の状況では政争の具とされることもあります。
     このように現在の日本の国家予算は、莫大な借金の上に成り立っているのが実情です。
     
第8回 日本経済の諸問題:円高と年金

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講義概要

「経済のしくみ」編
第1回 経済学とは?:市場とGDPのお話し
第2回 お金のお話し
第3回 アダム・スミスという人のお話し
第4回 経済をコントロールするお話し:マルクス、ケインズ
第5回 再び「経済自由化」のお話し:フリードマン
「日本経済の問題」編
第6回 インフレとデフレのお話し:アベノミクスとインフレターゲット
第7回 政府と日銀の経済政策のお話し:財政政策と金融政策と国債
第8回 日本の諸問題:円高と年金問題
「世界経済の問題」編
第9回 世界経済の重要性:途上国援助について
第10回 豊かな国と貧しい国

講義資料

オリエンテーション
第1回 オリエンテーション:経済学とは?+消費税増税について
「経済のしくみ」編
第2回 市場メカニズムとGDPの話し
第3回 お金のお話し
第4回 アダム・スミスという人のお話し
第5回 経済をコントロールするお話し:マルクス、ケインズ
第6回 再び「経済自由化」のお話し:フリードマン、TPP
「日本経済の問題」編
第7回 インフレとデフレのお話し:アベノミクスとインフレターゲット
第8回 財政政策と金融政策と国債の話し
第9回 日本が直面する諸問題:円高と産業空洞化&年金と国債と消費税
「世界経済の問題」編
第10回 世界経済の重要性:途上国援助について
第11回 豊かな国と貧しい国:制度設計の重要性

バナースペース

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