研究内容Research

窒素系配位子ー金属錯体を用いる触媒反応

窒素系配位子(イミダゾール、イミダゾリン)―金属錯体の構造研究とカップリング反応への応用

安定でありながら触媒活性の高いイミダゾールやイミダゾリンなどの窒素系配位子(単座および二座配位子)のパラジウム錯体を中心として、NMRによる溶液中での構造やX線結晶解析により構造を調べ、カップリング反応における触媒構造と反応性との関連について調べています。10

10) a) S. Haneda, Z. B. Gan, K. Eda, and M. Hayashi, Organometallics, 26, 6551 (2007). b) K. Kawamura, S. Haneda, Z. B. Gan, K. Eda, and M. Hayashi, Organometallics , 27, 3748 (2008). c) Z. B. Gan, K.Kawamura, K. Eda, and M. Hayashi, J. Organomet. Chem., 695, 2022 (2010).

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窒素配位型配位子を用いたパラジウム触媒によるカップリング反応の開発

 私たちは有機分子の骨格構築である炭素―炭素結合形成反応用の実用的触媒の開発を行っています。そのためには、高い触媒活性をもつのみならず、取り扱い容易で、空気的に安定かつ、単純な構造で簡便に構成でき、経済的にも優れている必要があります。さらに、種々の反応、基質に適用できるよう、電子的、立体的要因を自在に制御できる置換基の導入が可能な触媒の設計が鍵を握ると考えています。現在までに、報告されている高活性な触媒、配位子としては下に示したものがあげられますが、いずれも、空気に不安定である、あるいは触媒調製操作が煩雑であるなどの欠点を有し、より実用的な触媒の開発が強く望まれています。

 私たちは、非ホスフィン、非カルベン型配位子として窒素配位型配位子を用いた触媒系の開発を行ったところ、2-ピリジルベンズアゾール類を配位子としたパラジウム触媒が溝呂木-Heck反応を促進することを見いだしました。この2-ピリジルベンズアゾール類は私たちが開発した活性炭-酸素系による酸化的環化反応を用いて簡単に合成できます。さらに、配位子の改良を行い、より構造が単純なイミダゾール類あるいはイミダゾリン類を配位子ではパラジウム錯体の形成およびX線結晶構造解析による分析に成功し、それを溝呂木-Heck反応の触媒として用いることで高い反応促進効果が得られることを見いだした。また、 反応性が低いとされている塩化ベンゼンと活性基をもたない一般オレフィンとの反応も、まだ基質が限定されるものの進行することが明らかとなっています。な お、イミダゾリンからイミダゾールへの変換も、私たちが開発した活性炭-酸素系酸化反応プロセスを用いることができます。

 これまでに合成したパラジウム―イミダゾール(イミダゾリン)錯体の構造とそのうちのいくつかのX線結晶構造解析図を下に示します。