Home    新 着   クイズ   基 礎   論文・本   森林病害と防除   樹 木生理と生態系の健康
 マツ枯れ・・・マツ材線虫病 神戸 大学 黒田慶子

 
マツ枯れとは? 枯死の原因 

 マツ枯れと呼ばれるマツの枯死の大部分は,「マツノ ザイセンチュウ」という線虫(写真上,長さ約1mm, 線虫 の動画) が起こす伝染病によるものです。枯れたマツの中で増えた線虫を,「マツノマダラカミキリ」という甲虫が健康なマツの若枝を食べた時に感染させます。このカ ミキリの雌の卵巣は,マツ組織を食べないと成熟しないのです。
  以前は,大気 汚染がマツ枯れの原因という説もありましたが,多数の研究によってその説は否定されています。病原線虫は約 100年前に北米から持ち込まれたようです。 1905年に,長崎でマツが集団で枯れたという最初の記録があります。 日本産のアカマツ,クロマツはこの外来の病気には極めて弱く,感染すると枯れる場合が大半です。
 
   「マツは弱っていたから病気に罹った」と考える人も あります。しかし元気なマツでも,感染の機会が多い地域(枯死木が多数ある場所)では枯死する本数が多くなり ます。
  「林床の落ち葉や腐食層を除去(地がき)すればマツは元気 になる」といわれますが,地掻きをしただけで,マツ材線虫病に強くなることはありません。枯死木を増やさないためには,た とえばインフルエンザの流行と同じような感染防止対策が必要です。環境改善で天然更新をしたマツも,10年生前後から感染・枯死が増え,や がて激害となります。



病原体:マツノザイセンチュウ

   Bursaphelenchus xylophilus

線虫の媒介者、マツノ マダラカミキリ

実務者・樹木医向け の解説文
 黒田慶子:マ ツ枯れはなぜしぶといのか,森林技術857, 8月号, 2013   (8 月号全部ダウンロード:ここをクリック
 黒田慶子:最 近のマツ枯れの傾向と対策を考える,グリーン・エージ2016年6月 号,2016  (pdfダウンロード:ここをクリック)

講習会 など

松保護士更新 講習会(マツ保護士対象に毎年開 催   場所:大阪府社会福 祉指導センター
  1. 松枯 れの現状と対策~関西地域の特徴について~ 

研究報告

抵抗性アカ マツの解剖学的特徴

  1. 浅井美帆・黒田慶子 :マツ材線虫病抵抗性アカマツ品種における木部樹脂道の構造特性と線虫移動阻害の関係,樹木医学研究17:7-8, 2013  展 示ポスターのダウンロード

  2. Asai M. and Kuroda, K. : Size and density of resin canals are not factors preventing pathogen activities in Pinus densiflora cultivars resistant to pine wilt. The 3rd meeting of IUFRO Working Unit 7.03.12 "Alien invasive species and international trade", Tokyo, Japan, 10-13 June, 2012  ポスターpdf のダウンロード


  3. マツ材線虫病感染木のエンボリズム検出

  4.   ・Kuroda, K.: Monitoring of xylem embolism and dysfunction by the acoustic emission technique in Pinus thunbergii inoculated with the pine wood nematode, Bursaphelenchus xylophilus.   J. Forest Research 17:58–64,  2012

  5.  ・Kuroda, K.: Pine Wilt Disease, Zhao, Futai, Sutherland, Takeuchi (Eds.),  Part V Host Responses and Wilting Mechanisms, 20 Introduction, 21 Physiological Incidences Related to Symptom Development and Wilting Mechanism. Springer, 202-222 2008 

  6. Kuroda, K.: Pine Wilt Disease: A Worldwide Threat to Forest Ecosystems, M.M. Mota, P. Vieira (eds.), Part 6 Defense Systems of Pinus Densiflora Cultivars Selected as Resistant to PineWilt Disease. Springer, 315-322, 2008 

  7. 黒 田慶子,大平峰子,岡村政則,藤澤義武:マツ材線虫病抵抗性 クロマツ家系の苗木における線虫分布と増殖.日本森林学会誌 89(4):241-248,2007  

  8. 黒 田慶子:マツ枯れのメ カニズムと抵抗性マツの特性.H19年度海岸林学会静岡大会 シンポジウム「海岸林と沿岸環境の保全」 要旨集 13-16,2007 (PDFダウンロード)  

  9. 黒 田慶子:材線虫病抵抗 性のマツを利用したマツ枯れ防除に期待 する  ---発病および抵抗性メカニズムに関する研究成果から---.林木の育種,224:11-12,2007

  10. 国 際シンポジウム:Pine wilt disease: a worldwide threat to forest ecosystems. 10-14 July 2006, Lisbon, Portugal 発表要旨

  11. 線 虫感染により発生 するアコースティックエミッション(シンポジウム2006)  

  12. Kuroda, K., Kuroda, H. and Lewis, A.M.: Detection of embolism and acoustic emissions in tracheids under a microscope: Incidence of diseased trees infected with pine wilt. The 4th Pacific Regional Wood Anatomy Conference, Proceedings, New Horizons in wood Anatomy, ed. by YS Kim, Chonnam Nat'l Univ. Press, Kwangju, Korea, 372-377, 2000      

  13. Kuroda, K.: Acoustic emission technique for the detection of abnormal cavitation in pine trees infected with pine wilt disease. International symposium on pine wilt disease caused by pine wood nematode. China, Proceedings 53-58, 1996. (PDF file download)

  14. 黒 田慶 子伊藤進一郎:クロマツに侵入後のマツノザイセンチュウの動きとその他の微生物相の変遷. 日林誌, 74(5), 383-389, 1992

  15. Kuroda, K., Yamada, T. and Ito, S.: Bursaphelenchus xylophilus induced pine wilt: Factors associated with resistance. Eur. J. For. Path. 21, 430-438, 1991

  16. Kuroda, K.: Mechanism of cavitation development in the pine wilt disease. Eur. J. For. Path. 21, 82-89, 1991 

  17. Kuroda, K:  Terpenoids causing tracheid-cavitation in Pinus thunbergii infected by the pine wood nematode (Bursaphelenchus xylophilus).  Jpn. J. Phytopathol. (日植病報) 55, 170-178, 1989  (PDF file download)

  18. Kuroda, K., Yamada, Mineo, K. and Tamura, T.:Effects of cavitation on the development of pine wilt disease caused by Bursaphelenchus xylophilus.  Jpn. J. Phytopathol. (日植病報) 54, 606-615, 1988 (PDF file download)

このページの目次(以下のタイトルをク リックしてください)
1. マツ材線虫病とは(このページ)
2. マツ枯れに関する解説資料(A4版2枚)
3. マツノザイセンチュウの動画
4. 樹幹注入剤(予防薬)による枯死の発生 
5. マ ツ樹幹内で起きていること :感染するとなぜ枯れるのか 
  1. 6. 木部の樹液流動が止まって枯れる
  2.  ❖ 接種木で見られる病徴と水 分通導阻害の画像

  3.  ❖ 水分通導停止のメカニズム(解 説)

  4. 7. 抵抗性とは?

  5.  ❖ 抵抗性の 種とは

  6.  ❖ 抵抗性のアカマ ツ・クロマツを植える

  7.  抵抗性マツの種 類と樹形

  マツ枯れを減らすのに大事なことは,線虫を運ぶマツノマダラカミキリの数を減らすことです。つまり,枯死木の中 のカミキリの幼虫や,羽化して健全木の枝を食べに来たカミキリを殺虫することが重要になります。殺虫剤を効果的に安 全に使うには充分な知識が必要です。また,殺虫剤を使わずに,枯死木をチップ化(厚さ6mm以下の小片に粉砕)して 殺虫するなどの工夫も行われています。
 
  病気で枯れた木が多数放置された場合には,上記のような対応策ができなくなります。マツ林を今後 も残せるのか,あるいは広葉樹林に転換(遷移)させた方が良いのか判断する時期が来ます。

  近年では,激害地で生き残ったアカマツやクロマツか ら抵抗性のやや高いマツを選抜育種し,枯れにくいマツの苗を生産し始めました(研究報告:黒田2007参照)。 しかし,「枯れないマツ」ではないので注意が必要です。マツノマ ダラカミキリが多数生息する場所では,感染の機会が多いこともあり,抵抗性品種でも枯れる事例が多数あります。抵 抗性の発現メカニズムについては,現在研究を進めています。詳細は目次5以降の項目をクリックしてご覧ください