樹 幹注入によるマツ枯れ予防のリスク

黒田慶子   神戸大学大学院農学研究科 森林資源学研 究室

繰り返し注入はすぐに 中止を!!

 

繰り返し予防薬を注入された老木の樹幹断面

  •  樹幹に穴 を空けて薬剤注入すると、その部分では、傷に対する反応として樹脂の分泌が続く。木部に松ヤニが浸 み込む状態となる。
  •  そのため、辺材の仮道 管では目詰まりを起こし、水分通導が減少する。そのマツは必要な水分が得られないため枯死す ることになる。
  • 枯死したけれどもマツノザイセン チュウは検出されなかったマツ、材線虫病とは枯れ方が異なった事例では、このような「予防薬の繰 り返し注入による通水停止」で枯れていることがある。
  • また、注入木には左の 写真のような亀裂が多く発生する。この部位からは乾燥が進み、枯死の一因となる。
通水が止まった部分では、幹 に亀裂ができて虫害や腐朽が起こります。予防薬注入は、永久的に使える方法ではありません。

樹幹への予防薬注入は、マ ツ枯れ防除の中心にできる方法ではありません。左図のような「防除」の考え方を理解して から、期間を限定してこの方法を実施する必要があります。

黒田慶子,剱持章:マツ材線虫病予防薬の樹幹注入に起因 する通水停止と枯死のリスク、樹木医学会21回大会,神戸,2016  

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