研究内容Research

全合成研究

全合成研究
~自然から教えてもらった分子を創る~

全合成とは、ターゲットとなる(通常は複雑な構造を有する)分子を、試薬のカタログで売られているような入手容易な単純化合物からコツコツと作り上げていく研究です。天然から発見された薬効成分や動物のつくり出す微量生理活性物質などが対象となります。
全合成では、有機化学の経験と知識、勘を総動員して分子を育てていきます。途中、光や空気に不安定、自分同士で反応してしまう、溶媒に溶けない、など、悩ましい性質を持つ "じゃじゃ馬"中間体にも出くわします。予想だにしなかった副反応(望みでない反応)もしょっちゅう起こります。それらの難題を乗り越え、最終化合物を目指します。

蟻の生態に迫る
~昆虫フェロモンの合成~
(神戸大学尾崎研究室との共同研究)

蟻は社会的生物で、コロニーを形成します。コロニーの違う蟻同士が出会うと、たとえ同種の蟻でも敵対行動を示します。神戸大学大学院理学研究科生物学科尾崎まみこ教授は、この謎の解明に挑み、蟻の体表面のフェロモンの違いを蟻が認識していること、そのフェロモンが数十種類の有機化合物の混合物で、出身コロニーによりその割合を変化させていることを突き止めました。
我々は現在、その有機化合物を人工的に全合成することで蟻の社会行動や生態の解明に協力しています。