研究内容Research

創薬を目指して
一酸化窒素ドナー医薬品の開発研究
~一酸化窒素を必要な時に必要な場所で必要な量供給する~
一酸化窒素(NO)は、生体内において環状グアノシン一リン酸(cGMP)合成酵素を活性化し、cGMP濃度を高めるシグナル伝達物質の一つです。cGMPは平滑筋弛緩作用があり、循環系生体作用に深く関わりがあります。この機構を利用している薬剤には例えば、勃起不全薬であるシルデナフィル(バイアグラ)、狭心症薬であるニトログリセリンが挙げられます。またNOは、学習や記憶のメカニズムに密接に関連する神経伝達物質としての役割も知られており、てんかんやアルツハイマー病の病態改善のターゲットとしても注目されています。

NOはガス状分子で取り扱いが困難です。そこで、光を照射するとNOを放出する光応答性NO前駆体が注目されています。光の強度や照射場所をコントロールすることで自在にNO放出を制御することができます(下図)。

我々が着目している分子はフロキサンというヘテロ芳香環です。かなり特殊な構造をしています(下図)。いかにも「これからNOを出します」みたいな面構えをしていますが、実際に一部のフロキサンはNOを出すことが知られていました。しかし、そのNO放出をコントロールする手段は開発されていませんでした。

最近我々の研究室では、フルオロフロキサンの合成法を開発しました(特許出願済み)。そしてフルオロフロキサンに紫外光を照射すると一酸化窒素が生成する現象を見つけました(下図)。

可視光による照射でもNOを放出する分子も開発しております(下図)。

合成法の開発や医薬品・生理実験ツールへの展開、また機能性材料への適用も進めています。

(NOがフロキサンから光で放出される、作:(株)サイエンスグラフィックス)