海外実習:ロッテルダム条約第3回締約国会議の視察(2006年10月9日~13日)

 



ロッテルダム条約締約国会議の視察報告


fw_2006-0110月9日から始まるロッテルダム条約第3回締約国会議に参加するため、8日の早朝、関西国際空港から一路ジュネーブに向けて旅立ちました。約13時間後、無事ジュネーブに到着。ビザの関係でジュネーブに宿泊するメンバーを除き、予定通りジュネーブに程近いフランスの町、フェルネ・ヴォルテール(あの有名なVoltaireが住んでいた所です)に宿泊することになりました。毎日国境を越えて、会議場であるジュネーブ国際会議場(CICG)に通うことになります。


写真左:会議初日、いざ会場へ!



fw_2006-02会議はPlenaryという全体会合と、特定の問題について個別に設けられるWorking Group(作業部会。以下WG)が平行して行われます。その中で今回我々が注目するのは不遵守手続に関するWGの交渉過程です。そのためPlenaryの議論をフォローする人を当番制にし、出来るだけ多くのメンバーが不遵守WGに参加出来るようにしました。また交渉主要国である日本、EU、インド、エチオピア(アフリカ地域の代表格)、アルゼンチン(ラテンアメリカ地域の代表格)、そして議長(カナダ)の動きをフォローする担当者を一人ずつ決め、会議中は担当国の交渉姿勢・言動を集中的に視察しました。


写真上:初日のワーキング・グループ。一同着席し、会議に備える。

 

そして会議外のところでも、主張の内容・背景や今後の交渉の進め方などについて担当国代表団の外交官・環境省職員に直接お話を伺い、会議中のその国の言動や交渉姿勢の裏側にあるものを理解し、交渉妥結にむけた水面下での動きをも追えるように努力しました。

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写真上(左):ワーキング・グループでの一場面。
写真上(右):発言のため、「フラッグ」を立てて、議長からの指名を待つジャマイカ代表。


学術的な立場からとは言えども、代表団の方々に質問をぶつけるのは時間的にも状況的にも厳しいことが多く、出来るだけ具体的なお話を聞けるよう質問の内容やタイミングを考えなければならなかったので、困難さを感じるとともに国としての立場を背負って外交交渉の場に臨んでいる外交官の責任の重さも感じることが出来ました。

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写真上:初日の会議終了後、プレナリー会場にて明日以降の戦略を練る。

 

交渉過程で主な争点となったのは、不遵守委員会の構成、会議の公開・非公開、意思決定方法、トリガー、追加的措置の内容などの問題でした。1日目から2日目は各問題に対し各国が主張を述べ、ほぼ意見が出揃ったところで本格的な交渉が始まりました。そのため、本来このWGは3日間の予定で行われるはずだったのですが終了せず、4日目から始まるPlenaryでの閣僚級レベル会合(High Level Segment)に報告書を提出できないという事態になりました。そこで、Plenaryより不遵守WGでの交渉を延長することの許可を得て、交渉が続行されることになりました。

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写真上(左):紛糾するワーキング・グループ。個別論点につき関心国が集い協議。
写真上(右):プレナリーのHigh Level Segment にて記録をとる。

 

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最終日が近づくにつれ、各争点について交渉が進み、対立する意見や妥協できない点が明確になってくると、WGの中でさらに争点毎に結成されるコンタクトグループ(Contact Group)や文言調整・起草を行う起草グループ(Drafting Group)が随時結成され、その問題について特に関心を持っている国やグループ間で個別交渉を行い、妥協点を探るようになります。

写真右:会議4日目。追加的措置の論点に関して、議論を詰める中国代表とEU。

 

 


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そのコンタクトグループをNGOにも公開するかの問題について、これを非公開にすべきだとする代表団の発言に対し、我々KURIMは、会議手続規則の解釈論を展開し、原則として公開されるべきであると発言する一幕もありました。我々KURIMは、会議手続規則上、オブザーバーという地位ですが、会議に参加する権利、すなわち自らの主張を述べる権利を有しており、その権利を実際に行使した貴重な一瞬でした。

 


写真上:会議大詰め。視察の最終日に備え、皆を鼓舞する柴田教授。

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交渉の結果としてはコンタクトグループで作られた草案を元に最後まで詰めた議論が行われ、ブラケット(交渉文書に付いている[ ]のことで、合意ができていないことを示す)が付いていた条項に関し、その多くをはずすことが出来たものの、追加的措置の問題などいくつかの点で妥結出来ず、最終日に次の締約国会議への持越しが決定しました。結局妥結は不可能でしたが、今回の不遵守手続WGの交渉について我々なりの評価を示すため、最終日のHigh Level Segmentにおいて、我々KURIMの代表、中山雄一が壇上に上がり、堂々とステートメントを行いました。


写真上:KURIMとしてのステートメントの内容を協議するメンバー。

 

今回、条約交渉の現場を視察できたことは、この実習でしか経験することのできないとても貴重な体験であり、生の外交交渉の雰囲気や緊張感を肌で感じることが出来ました。また特定の議題について、特定の国々をフォローするといった具体的な内容のプログラムであったため、見る対象が分散せず、外交交渉術を見て学ぶという観点から集中して交渉過程を追うことが出来たので、効果的かつ効率的な実習であり、条約交渉過程に対して関心が深まりました。

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写真上(左):4日目ワーキング・グループの非公式協議。議論の進展状況を追う。
写真上(右):ホスト国スイス政府主催のレセプションにて。スイス代表と意見交換。


オブザーバーとしての事前登録から実際の会議場での実習にわたるまで、何もかもが初めてのことばかりで戸惑うことも多かったですが、大学院での授業に反映させるだけでなく、今後自分の将来においても何らかの形で生かしていくことの出来る、とても有意義な経験だったと思います。


また、環境関連の国際NGOとして有名な「持続可能な開発に関する国際研究所International Institute for Sustainable Development)」のHPに、会議場での我々の実習の写真が載っています。こちらもご覧下さい。

 

インターンシップ・海外実習派遣先の視察と開拓交渉


今回訪問・視察したのは、在ジュネーブ邦人職員会事務局長が勤めておられる国際労働機関(ILO)、バーゼル条約事務局、国際的NGOの"World Vision International"、およびロッテルダム条約第3回締約国会議です。これらの機関とインターン派遣の可能性やその手続きに関して意見交換をし、また、ジュネーブの生活環境や会議視察の意義などについても調査しました。

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写真上:インターンシップ開拓のため国際労働機関(ILO)を訪問。ここでは、在ジュネーブ邦人職員会の事務局長とUNHCRで働く日本人職員と、国際機関で働く日本人職員のネットワークを活用させていただき、インターンに関する最新情報や募集状況を提供いただくインターンシップ・サポート・プログラムの立ち上げについて協議しました。

 

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写真上:バーゼル条約事務局にてインターンシップ派遣について協議しました。バーゼル条約事務局では、常時、3名ほどのインターンを受け入れ、条約が抱える法律問題や技術的な問題について調査・研究してもらっています。大変、競争率の高いインターンシップ先ですが、きわめて有意義な経験ができる場だと感じました。

 

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写真上:バーゼル条約事務局にて。左の事務局職員は過去にバーゼル条約事務局にてインターンを経験した後、現在コンサルタントのポストで働いています。

 

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写真上:国際NGO“World Vision International”を訪問し、日本人職員からお話を伺う。