ナラ枯れ(ナラ類の集団枯死)

神戸大学 森林資源学研究室  

黒田慶子 Kuroda, Keiko

 

ナラ枯れとは

  1. ナラ枯れは、菌(カビ)による伝染性の萎凋病(感染木が急激に枯死する病気)です。

  2. 病 原菌をカシノナガキクイムシという養菌性キクイムシが媒介します。つまり、感染して枯死した樹木から健康な樹木に病原菌を運ぶ役目をしています。カシノナ ガキクイムシは直径10cm以上の樹木で繁殖効率が良いため、大径木ほどたくさん羽化し、翌年の被害拡大につながります。そのため、高齢のナラ林で被害が 激しくなります。

  3. 昔の薪炭林は20年前後の若齢林のため,カシノナガキクイムシの繁殖は,ほとんど見られませんでした。

基本情報は下記をクリック  

ナラ枯れの原因とメカニズムの概要」

(A4で印刷してご利用下さい。)

病原菌

Raffaelea quercivora

←感染木では辺材が変色し,水分通導が停止する。

  1. カシノナガキクイムシは枯死木中で繁殖して初夏に羽化し、健康なナラ類(ミズナラ、コナラなど)、シイ、カシ類などの樹木樹幹に穿入し、病原菌を感染させます。感染木は梅雨明け直後(7月後半)から枯れ始めます。

  2. ブナ科の中で,ブナ属以外の属の樹木は枯死の記録があります。ミズナラが最も枯れやすいのですが、それ以外のナラ類(コナラやクヌギ)、シイ、カシ類も多数枯れているため、安心はできません。

  3. 気温が上昇したことが病気の蔓延に直接つながったのではありません。なによりも、大径木が増えたことと, 感染して枯死した木を処理せずに放置したのが被害拡大の原因です。病気に感染した樹木は、水不足や高温が続いた場合(今年の夏の状況)に早く枯れる傾向があります。

  4. 地球温暖化の影響については、議論のためのデータが不十分です。温暖化の影響の大きさについて議論しても問題解決(被害軽減)にはつながらないため、具体的な対処方法についての議論を優先しています。

  5. 大径のナラやカシ・シイ類を残して細い木や下層木のみを伐採する「公園型整備」(写真右)では,カシノナガキクイムシの飛来や繁殖が活発になり,被害を広げます。この手法での里山整備は絶対に行わないで下さい。→「里山整備に関わる前に」のページをご覧下さい。

  6. さらに詳しい説明は、下記小冊子等を参照して下さい。

←感染木組織の顕微鏡観察

病原菌が道管から樹細胞内に侵入している。

関連の報告

  1. 黒田慶子:特集ナラ枯れの原因と防除対策,ナラ枯れのメカニズムと対策,グリーン・エージ 2012年8月号 4-7,2012.08

  2. 黒田慶子:特集 農業の枠を広げる新しい挑戦,「里山保全の新しい課題.ナラ枯れ対策とバイオマス・エネルギー利用」,農業と経済2012年6月号,44-50,昭和堂出版,2012.06

  3. 黒田慶子:ナラ枯れの発生原因と対策,植物防疫 65:162-165, 2011

  4. 黒田慶子:「ナラ枯れ」の増加から,里山との向き合い方を考える,「森林環境2011 国際森林年 森の明日を考える12章」森林環境研究会編,朝日新聞出版,131-140,2011.03

  5. 黒田慶子:里山資源の積極的利用で、健康な次世代里山を再生する,森林と林業11月号:12-13,日本林業協会,2010.11

  6. 黒田慶子:近年の里山管理の問題点 —資源循環をともなう管理の必要性と住民の役割—,山林No.1517:2-9,2010.10

  7. 伊東宏樹,大住克博,衣浦晴生,高畑義啓,黒田慶子: 滋賀県朽木のナラ類集団枯損被害林分の林分構造.  森林総合研究所研究報告 7:121-124, 2008

  8. Kuroda, K.: Responses of Quercus sapwood to infection with the pathogenic fungus of a new wilt disease vectored by the ambrosia beetle Platypus quercivorus. J. Wood Science 47: 425-429, 2001 (PDF ファイルダウン ロード

  9. 黒田慶子,山 田利博: ナラ類の集団枯損にみられる辺材の変色と 通水機能の低下 . 日本林学会誌, 78 (1), 84-88, 1996

  10. ナラ類の集団枯損機構 ---Raffaelea属菌感染に対する樹幹組織の生理的反応--- 森林総合研究所 所報 No.11 2002 -2 研究解説

  11. ナラ枯れのナゾを解明 ---病原微生物と樹木の関係---  農林水産技術会議事務局・農林水産主要研究成果(平成13年度)84-85,2003

など

被害防除のための解説書、小冊子など

  1. ナラ枯れの解説書「ナラ枯れと里山の健康」林業改良普及双書 157(黒田慶子編著)

  2. 全国林業改良普及協会発行,ISBN978-4-88138-199-1 (2008)

  3. ナラ枯れ増加から見えてきた「望ましい里山管理」の方向 ---枯れる前に資源として使う.  森林技術 8月号 809:2-7(2009.08) ファイルのダウンロード

  4. 解説冊子「ナラ枯れの被害をどう減らすか---里山林を守るために---」 2012年改訂版 pdfダウンロード

   改訂版ができました。印刷物も配布できますので,森林総合研究所関西支所にご連絡ください。

↑ 「受光伐」「整理伐」といわれる 里山二次林の管理。太いコナラだけが残され,整備直後にカシノナガキクイムシの加害を受けた。(篠山市)

媒介甲虫

Platypus quercivorus

目次

研究内容の紹介

入門編