神戸大学 森林資源学研究室 黒田慶子 Kuroda,
Keiko
神戸大学 森林資源学研究室 黒田慶子 Kuroda,
Keiko
里山整備に関わる前に必要な知識
里山の現状
里山
(里山林)は、人里に近い山林のことで、数百年以上にわたって、日常生活に必要な燃料や肥料(緑
肥)を供給してきました。農用林とも呼ばれます。
人々
は、薪炭林で頻繁に伐採し、枝葉も採取して資源として利用しつつ、切株からの萌芽(ヒコバエ)によ
り、林をまた再生して来ました。伐採は15〜30年程度と短い周期で行われたため、大木はありませ
んでした。しかし、1950年代以降は燃料などに使うことも無くなり、放置されて大木や藪のような
林になっています(写真右)。
現在 はこのような広葉樹林(雑木林)が「天然林」に分類されているため、「自然に任せて成り立った林」 という誤解があり、伐採への批判につながることもあります。
里山の不健康化
放
置された里山では、ナラ枯れ(カビによる伝染
病)やマツ枯れ(マツ材線虫病)などの被害が拡大
し、里山を構成する生物の構成が大きく変化しています。
「自
然に任せる」、「見守る」だけでは、 里山林は
うまく維持されないことがわかってきました。昔のように定期的に伐採して資源として利用すると森林として持続します。
な お、スギ・ヒノキ林は植栽された人工林で、里山林には含めない場合があります。こちらも、間伐等の 手入れがされないまま、病虫害などで材質が低下した林が多くなっています。
里山の管理方法
里
山の環境を守りたいという里山整備活動が近年活発になっています。しかし活動の代表者やボランティアに
基礎知識が無い場合、その善意が必ずしも森林の保全に結びつきません(写真右)。
不
適切な整備方法や植林、伐採木の放置などが、里山を壊すことになったりナラ枯れの発生を招きます。
広
葉樹林を間伐してきれいにする「公園型整備」は(写真上)、森林を持続させるのに望ましくない手法です
が、現在各地で実施されていることが大きな問題です。
マツ林の維持
海
岸のクロマツ林や山地のアカマツ林は 「マツ枯れ」(マツ材線虫病)という外来の伝染病で激しく枯れて
います。これは手入れ不足による枯れでは無いのですが、「手
入れをして助けたい」という活動が活発です。
と
ころが、いくら努力をしても、適切な薬剤の利用がないと伝染は止まりません。「マツ林再生」はきわめて
難しく、大変な費用がかかります。この点を理解して、計画をたてる必要があります。
今後の取り組み
里 山林を維持していくには、里山の樹木の性質や成長の仕方について、基礎的な知識が必要です。また、地域 により環境が異なるので、それぞれの里山林の成り立ちの歴史や伝統的な利用方法について、知っている必 要があります。 里山整備に興味のある方は、ぜひ勉強しつつ管理に関わってください。
公園型整備の例
整備したときは美しいが、森林としては持続しない
企業CSRによる整備の例
広葉樹の苗を社員が植栽したが、植えた後一度も見に来
ないまま、草原になってしまった。
植えただけでは育たないことが多い。
企業CSRによる整備の例
ソメイヨシノという園芸品種やモミジ(品種不明)、さ
らにこの地域で見かけないクヌギやケヤキを植えている。植えることで満足では本末転倒。
広葉樹を植えたいという希望が多いが,「針葉樹はダメ, 広葉樹なら良い」という思い込みはやめるべき。
激しく枯れた海岸のクロマツ林
再生したいという希望であるが。。。
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