こころの健康教育


目的
特定保健指導では、生活習慣を整える支援がひとつの大きなテーマとなります。そして食生活、身体活動、運動、休養、睡眠などの生活習慣は、こころの健康と密接な関連があります。そのため生活習慣を整えるには、こころの健康に注目する必要があります。例えばストレスが原因で過食が続いているなど、こころの健康を崩すことによる生活習慣の乱れが語られることもしばしばです。ここでは生活習慣を整えるための一つの方法として、こころの健康の維持増進に役立つ情報を提供します。

主な対象者
こころの健康に注目して、生活習慣を整えたい方

 

 

1.こころの健康状態を知る

こころの健康状態を知るためにこころの健康度を見える化してみましょう。

 

こころの健康度をチェックしてみましょう

過去30日の間にどれくらいの頻度で次のことがありましたか。
合計点を計算してみてください。
(全くない:0点、少しだけ:1点、ときどき:2点、たいてい:3点、いつも:4点)
 
質問 点数
①    神経過敏に感じましたか    点
②    絶望的だと感じましたか     点
③    そわそわ、落ち着かなく感じましたか    点
④    気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか   点
⑤    何をするのも骨折りだと感じましたか     点
⑥    自分は価値のない人間だと感じましたか    点
合計   点

いかがでしたか?
次の評価基準を参考に、合計得点からこころの健康度を確認してみてください。
K6の評価基準
  合計点が9点以上であれば、うつ病や不安障害などの可能性が高いとされています。
但し点数が低くても心の支援が必要なことがあります。気になることがあったら相談を。
Frukawa (2008)を参考に作成



 

2.“からだの健康”と“こころの健康”の関係

先ほどの質問で心の健康を数字にすることができました。それでは、もし心の健康を損なっている状態が続くとどうなるでしょうか。ストレスやうつは心の健康だけでなく、身体にも様々な影響を与えます。例えば心筋梗塞などの冠動脈疾患との関連が分かっています(Vieweg et al., 2006)。

心の状態は身体に影響を及ぼしますが、逆に身体の状態が心に影響を及ぼすことも示されています(Prince et al., 2007)。このように、心と身体の健康は密接に関わっており、身体の健康には心の健康を保つことが欠かせないことが分かります。
 


 

3.リラクセーション法でこころを健康にする

(1)リラクセーション法とは

代替文字
リラクセーション法とは、ストレスによる心身の反応を緩和する方法の中でも身体的側面へ介入していくものです。自分の心身の状態に気づき、自分で調整する練習をすることで、不調の再発防止や自己制御力を育成するとされています(松岡, 2006)。リラクセーション法は一時的な効果だけではなく、日常生活をより快適に変えていく可能性を秘めていると言えます(富岡, 2017)。
 

(2)リラクセーション法の効果

心を健康にする法としてここでは、呼吸法と自律訓練法をご紹介します。
呼吸法の効果には精神の安定・自律神経を整える・心肺機能向上・脳の疲労改善などが、自律訓練法の効果には自己受容感や肯定的認知の上昇・疲労感の減少・不安や抑うつの緩和などが明らかにされています。

このようにリラクセーション法に取り組むことで、心や身体が健康になることが科学的に示されています。

 

(3)リラクセーション法の実践

動画で呼吸法と自律訓練法を実践してみましょう。
1)こころゆったり呼吸法

① 解説編
呼吸法の解説をしています。

呼吸法とは



② 実践編
動画を見ながら、呼吸法を実践してみましょう。

こころゆったり呼吸法1 呼吸を感じる



呼吸法2 呼吸に集中する



呼吸法3 呼吸をコントロールする

 
2)自律訓練法

① 基礎編
自律訓練法の解説をしています。



② 実践編
動画を見ながら、自立訓練法を実践してみましょう。

 

 

引用文献

  • 古川 壽亮・大野 裕・宇田 英典・中根 允文 (2003). 一般人口中の精神疾患の簡便なスクリーニングに関する研究. 川上 憲人 厚生労働省厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業平成14年度総括・分担研究報告書心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究
  • Prince, M., Patel, V., Saxena, S., Maj, M., Maselko, J., Phillips, M. R., & Rahman, A. (2007). No health without mental health. The lancet, 370(9590), 859-877.
  • 榊原 雅人・寺本 安隆・谷 伊織 (2014). リラクセーション評価尺度短縮版の開発. 心理学研究, 85(3), 284-293.
  • 松岡 洋一 (2006). 最新の治療法: リラックス法. 臨床と研究, 83(3), 393-398.
  • 下田 芳幸・田嶌 誠一 (2004). 中学生に対するストレスマネジメント教育に関する研究:「リラクセーション感」によるリラクセーション技法の検討. 九州大学心理学研究, 5,  171-181.
  • 徳田 完二 (2011). 心理的リラクセーション尺度 (ERS) の利点と基準関連妥当性: 大学生を対象とした調査から. 立命館人間科学研究, 23, 1-9.
  • 富岡 光直 (2017). リラクセーション法. 心身医学, 57(10), 1025-1031.
  • Vieweg, W. V. R., Julius, D. A., Fernandez, A., Wulsin, L. R., Mohanty, P. K., Beatty-Brooks, M., ... & Pandurangi, A. K. (2006). Treatment of depression in patients with coronary heart disease. The American journal of medicine, 119(7), 567-573.
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