「ひょうご健康づくり支援システム」を活用した健康施策推進のために


目的
NDB(National Data Base)を活用することで特定健診の結果から見える健康課題を明らかにし、行動科学の立場から実践につなげるための支援情報を提供します。

兵庫県

 
主な対象者
兵庫県の市区町で健康施策の計画・推進を担当している方

 

1.ひょうご健康づくり支援システムを活用し、市区町の特徴をとらえる

ひょうご健康づくり支援システムとは、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のうち「匿名特定健診情報」を市区町単位にデータを集計・視覚化するシステムです。詳しくは兵庫県ホームページをご覧下さい。
ひょうご健康づくり支援システム(兵庫県ホームページ)

 

(1)経年変化分析グラフ作成ツールの概要



ひょうご健康づくり支援システムの市区町ごとのデータを活用し、特定健診6年間(2013年度から2018年度)の結果の経年変化を容易に可視化するエクセルツールを開発しました。ここではその概要を説明しています。



 

(2)データの準備と分析グラフ作成の進め方



経年変化分析ブラフ作成ツールの使用方法について説明しています。下記のリンクから経年変化分析グラフ作成ツールをダウンロードし、各市区町の特定健診6年間の結果をグラフ化しましょう。
経年変化分析グラフ作成ツール


データの作成・分析の進め方

その1:経年変化分析グラフ作成ツールの特徴について


その2:経年変化分析グラフ作成ツールの使い方について


その3:グラフの整え方や分析ワークシートについて


2.市区町の特徴をとらえ、保健事業計画を作成する

(1)データ分析と健康教育プログラムの計画



「ひょうご健康づくり支援システムを活用し、市区町の特徴をとらえる」で作成したグラフをもとに、特定健診結果6年間の経年変化から市区町が抱える課題を確認し健康教育プログラムの計画立案等の保健事業計画につなげます。

次の分析ワークシートをダウンロードし、市区町の特徴を分析しましょう。
このワークシートには、分析シートと媒体検討シートの二つのシートが含まれています。まずは、分析シートで市区町の特徴を分析してみてください。またここでは媒体づくりの検討を行うための媒体検討シートによる健康教育の媒体づくりを紹介しています。事例を参考にしてください。
分析ワークシート

取り組む健康課題のうち優先度の高いものを保健事業計画に取り入れ、具体的な検討を進めます。
検討を行う際には、次の3点を明確にする必要があります。(Green et al. 2022)
「課題の達成に必要なプログラムの構成要素や具体的な介入内容(介入戦略)」
「プログラムを実施するにあたっての実現可能性や資源(実践戦略)」
「プログラムや政策の達成度を評価する評価基準や評価方法(評価戦略)」
  計画作成後は、PCDAサイクルに乗せながら保健事業を展開しましょう。


 

2)事例紹介

データ分析にもとづき、媒体づくり(ポスター、リーフレット)を行った事例を紹介します
 

1)神戸市中央区

神戸市中央区の分析(pptx)

 

2)播磨町

播磨町の分析(pptx)

 

3)南あわじ市

南あわじ市の分析(pptx)

コラム:保健事業計画作成のための理論モデルの紹介

プリシード・プロシードモデル (Green et al. 2022)

  • プリシード課題:健康教育や健康政策における測定可能な目標とベースラインの明確化
  • プロシード課題:健康教育や健康政策の実施状況へのモニタリングと継続的な質の改善
 
プリシード・プロシードモデル
プリシード・プロシードモデル

プリシード・プロシードモデル(事例)
プリシード・プロシードモデル(事例)

 
プリシード・プロシードモデルとは?+
プリシード・プロシードモデルは、健康政策を実施する枠組みとして活用されている理論モデルです。大きな枠組として二つの課題に対応するプリシード(第1段階から第4段階)とプロシード(第5段階から第8段階)から構成されています。

プリシードでの課題は、「健康教育や健康政策における測定可能な目標とベースラインの明確化」です。つまりプリシードは、現状について診断的評価を行う過程であり、診断的評価から得られた情報は、計画を立てるための情報源となります。この情報源に基づき、健康プログラムや健康政策における測定可能な目標とそのベースラインを明らかにします。このモデルでは、QOLの改善が目ざすべき最終目標です。そこではじめに、社会的診断(第1段階)により指標となるQOLを確認します。指標となるQOLの例として、健康寿命などを上げることができます。

次に疫学的診断(第2段階)により、QOLに関連する健康状態や、健康状態に関わる遺伝、行動、環境に関する要素について、診断的評価を行います。QOLを評価する指標として、健康寿命をとらえたとき、これに関連する健康状態として、生活習慣病やメタボリックシンドロームの状況を上げることができます。このような健康状態、つまり生活習慣病やメタボリックシンドロームの状況には、遺伝的要素に加え、生活習慣としての行動、そして人々を取り巻く環境が関連します。環境としては例えば、公共の交通機関が不便であることから、移動のために車の利用頻度が高く、身体活動の程度が低くなっていることなどもあげられます。

さらに教育診断と環境診断(第3段階)により、行動や環境に関連する前提要因、強化要因そして実現要因について診断します。前提要因としては、知識、態度、信念、ものの見方などがあります。たとえば生活習慣病に関する知識や、特定健診に参加することに対する個人の信念などが含まれます。強化要因は、行動の継続や習慣化を促す要因で、報酬や満足感、大切な人からの嬉しいフィードバックなどがあります。実現要因は、行動を実行するために必要な要因で、個人のスキルや地域の資源などがあります。例えば、個人のスキルとして健康な食事を準備するためのスキル、地域の資源として地域にウォーキングをする場があることなどがあげられます。なお前提要因、強化要因、実現要因への具体的な支援につながる理論モデルの一つに、トランスセオレティカルモデルがあります。
トランスセオレティカルモデルとは
 
そして第1段階から第3段階の診断から得られた情報に基づき、健康教育や健康政策の開発(第4段階)を行います。つまり担当者は、プリシードにおける診断により必要性が明らかになった前提要因、強化要因、実現要因のうち、優先度の高いものを健康政策に取り入れ、保健事業の立案を行います。こうして「目的とする変化に必要なプログラムの構成要素と具体的な介入内容(介入戦略)」「プログラム実施における行政上、組織上、管理上の実現可能性や活用可能な資源(実践戦略)」「プログラムや政策の達成度を評価する評価基準や評価方法(評価戦略)」の3点について明らかにします。第4段階は、診断的評価を行うプリシードから実践評価を行うプロシードへの折り返し地点でもあり、評価戦略で確定した評価は、第5段階から第8段階であるプロシードへとつながります。そしてプロシードでは、モニタリングにより継続的に、取り組みの質の改善を図ります。
プリシード・プロシードモデルの枠組みから、特定健診により診断評価されている内容について見てみましょう。
特定健診では、検査値等によりメタボリックシンドロームの状況が疫学的診断評価されます。また標準的な質問票においては、体重の変化や歩く速度から推定される体力などが評価されています。さらにメタボリックシンドロームに関連する食習慣、運動習慣、睡眠、喫煙、飲酒などの行動への疫学的診断評価が行われています。また生活習慣改善に対する行動変容ステージや保健指導を受けることに対する行動意図も教育診断評価されており、前提要因である態度に関する情報も得ることができます。

つまり特定健診では、生理的な指標などによる健康への評価に加え、標準的な質問票により行動、さらには態度といった前提要因に関する情報も得ることができます。したがって標準的な質問票を丁寧に読み取ることで、面接をはじめ情報提供を行う支援を行うにあたって、対象者への深い理解を準備することができます。
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参考文献

  • Green, L.W., Gielen, A.C., Ottoson, J.M., Peterson, D. V., & Kreuter, M. W., Health Program Planning, Implementation, and Evaluation: Creating Behavioral, Environmental and Policy Change. Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2022.


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