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Research /
Research Overview~3~

膜分離プロセス
Membrane Separation Process

三好 太郎石神 徹松山 秀人

岡村 遼、松浦 弘卓、舛森 裕太

我々は、膜分離を組み込んだ水処理プロセスのより広範な普及を目指し、膜を用いた水処理システムが抱えている問題の解決に取り組んでおります。膜分離法は、一般的に省スペースで優れた水質の処理水を得ることができるなど、様々な利点を有しているにも関わらず、国内外問わず、爆発的な普及に至っているとは言い難いのが現状です。その原因としては、膜分離プロセスは従来の水処理プロセスと比較すると往々にして運転及び維持管理コストが高くなることが考えられます。

我々は、膜を用いた水処理システムにおける運転及び維持管理コストの低減に向け、膜ファウリング低減方策の確立及び水処理システム全体の最適化の両面からアプローチしております。現在の研究テーマのいくつかを以下に紹介します。

膜ファウリング発生機構の解明

膜ファウリングを低減するための方策を合理的に提案するためには、膜ファウリングの発生機構を解明することが不可欠であります。膜ファウリングは膜自体と膜ファウリングを引き起こす物質(ファウラント)が相互作用を起こすことによって発生しておりますので、膜自体の特性だけではなく、どのような物質が主要なファウラントとなっているかも正確に理解しなくてはいけません。ほぼすべての水処理プロセスにおいて、ファウラントを含むろ過原水は様々な物質から構成される複雑系となっており、解析は困難を極めます。三次元励起蛍光スペクトル(excitation emission matrices; EEM)分析、有機炭素検出型サイズ排除クロマトグラフ(liquid chromatogram-organic carbon detector; LC-OCD)法といった包括的な分析手法や2次元電気泳動法(two-dimensional polyacrylamide gel electrophoresis; 2D-PAGE)を用いたタンパク質同定に代表される個々の物質に焦点を絞った分析など、幅広い有機物分析手法を駆使し、困難なファウラント解析に取り組んでおります。

 


膜ファウリングの発生機構(概略図)

ファウラントのEEM(左)及び2D-PAGE泳動図(右)

省エネルギー/創エネルギー化に向けた取り組み

膜を用いた水処理プロセスの大きな欠点の一つとしてエネルギー消費量が多いことが挙げられます。下水処理に適用される膜分離活性汚泥法(membrane bioreactor; MBR)に着目しますと、現在、国内外の様々な研究者が省エネルギー化に向けた取り組みを進めておりますが、それでも現在下水処理において主流となっている標準活性汚泥法及びその変法と比較しますと、MBRを用いて下水処理をする場合一定量の下水を処理するために倍以上のエネルギーを投入する必要があります。我々は、MBRそのものの技術開発だけではなく、浸透圧発電をはじめとする、現在、下水処理においてはほとんど使用されていない技術の適用も視野に入れ、下水処理システム全体としての省エネルギーあるいは総エネルギーを達成できる処理システムの開発を目指しております。