研究テーマ

1.赤外非線形分光(3-パルスフォトンエコー法)による振動状態の揺らぎの観測

溶液中では、分子は周りの分子と相互作用を持ち、熱エネルギーにより揺らいでいます。特に、水やアルコールなどの水素結合性液体中では、水素結合ネットワークによる微視的な構造を形成し、水素結合の解裂や生成、またネットワークの構造揺らぎなど、集団的な運動を繰り返しています。これらの揺らぎは、系のポテンシャルエネルギーの大きな揺らぎを引き起こすものであり、それらを溶媒とした化学反応やタンパク質の機能発現などに重要な役割を演じることが知られています。赤外領域の3-パルスフォトンエコー法は、振動状態に注目し、溶質分子の振動遷移の揺らぎの時間相関関数を厳密に決定することができる方法です。これにより、溶液中で溶質分子がどのように揺らぐのか、どのような溶媒-溶質相互作用が重要なのか、また溶媒のどのような動的な性質がこの揺らぎを決めているのか、調べることができます。

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2.赤外ポンプ-プローブ分光法による水素結合錯体の振動ダイナミクス

水素結合は、共有結合より弱く、ファンデルワールス力のような弱い分子間相互作用に比べれば強い。水素結合により生体高分子等は特徴的な構造を形成することができるが、この中間的な性質のため、水素結合は、構造を形成するという「かたさ」を与える一方、熱的な揺らぎによりその構造を変化させることができる「やわらかさ」を与えます。OH伸縮振動等は、水素結合の生成や相互作用の強弱にそのスペクトルのピーク波数や強度がきわめて敏感であるため、水素結合を調べるプローブとして振動分光法が用いられてきました。振動エネルギー緩和は、注目している分子内の高振動モードと低振動モードの結合に大きく依存し、水素結合では特異な分子間振動が存在するため、これらの系における振動緩和を調べることは大変興味深いことです。

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3.テラヘルツ電磁波による凝縮相の低振動スペクトル

約100 cm-1以下の低振動運動は、分子内に局在された高振動モードと異なり、分子内の大振幅振動や衝振振動(librational)、分子間振動や会合性液体のネットワーク構造の構造揺らぎ、生体高分子等の高分子の集団的な運動、また回転緩和に相当します。これらのエネルギー領域を調べる分光法として、従来法より圧倒的に精度の高い方法が、最近、フェムト秒レーザーパルスを用いて、開発されました。私達の研究室では、特に、タンパク質の低振動運動に興味をもっています。タンパク質は機能を発現する際、大きく構造を変化させることが多く、その運動の特徴的な振動数はテラヘルツ領域にあることが知られています。タンパク質の水和状態や温度により低振動運動がどのように変化するか、テラヘルツ電磁波を用いて調べています。

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→→ 窓材(ガラス・プラスラック)のテラヘルツスペクトル

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