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地球環境変動研究室地球環境変動研究室(大串研)
Quaternary Paleoceanography and Global Environmental Change Research Laboratory
所属:
神戸大学大学院人間発達環境学研究科
人間環境学専攻環境基礎論講座
Graduate School of Human Development and Environment
Kobe University
学部:神戸大学国際人間科学部環境共生学科

 当研究室では底生有孔虫化石に基づく古海洋環境変動の研究を行っています。また近年では総合地球環境学研究所との共同研究として河川の水環境の研究にも取り組んでいます。このため地域の河川の水環境マップ作成に取り組みたい学生も求めています。大学院生の所属は,神戸大学大学院人間発達環境学研究科人間環境学専攻です。神戸でいっしょに研究しませんか?興味ある方はぜひ大串までご連絡ください。大学院募集等に関する情報は研究科ホームページの以下のリンク先をご確認願います。
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研究テーマ:地球環境変動の復元
第四紀の海洋環境変動(北太平洋中層水および深層水の循環変動)
マルチアイソトープによる河川水の水環境マップ構築と水循環の研究
北太平洋における深海生底生有孔虫群集の変遷

研究分野:地質学,環境学,古海洋学,古生物学,地球化学
研究のキーワード:古海洋,古気候,古環境,古生物,化石,第四紀,地質,底生有孔虫,深海,中層水,酸素同位体比,水環境,炭素循環,生物生産,深層水循環,温暖化,エアロゾル

第四紀の海洋環境変動の研究について
人類の進化に関わった過去258万年間は第四紀と呼ばれています。第四紀は寒い氷期と暖かい間氷期の繰り返しを特徴とする時代です。第四紀の環境変動は人類のたどってきた道のりを知る上でも重要な時代ですが,将来の地球環境がどのように移り変わってゆくのかを考える上でも科学的に重要な時代といえます。しかし,第四紀の環境変動は未だに謎が多く,特に急激な気候変動がなぜ起こるのかといったメカニズムがまだ明らかになっていません。第四紀の環境を知る手法として海底の地層を分析する手法があります。海底の地層には多くの微少な化石が含まれており,その化石から海洋環境変動を復元することができます.地層から環境変動を読み解くには長大な時間を要する地道な作業を伴います。しかしながら,海底堆積物には過去に起きた急激な環境変動が克明に記録されている場合があり,それを解読出来たときには現在の環境問題の理解に役立つ重要な発見につながります。私どもの研究室では,深海底堆積物から有孔虫と呼ばれる小さな化石を抽出し,その群集組成や化石殻の酸素同位体比分析を行う事により,第四紀の氷期・間氷期の気候変動に伴う海洋大循環の変化を復元する研究を行っています。

なぜ古環境を研究するのか
不確かな未来を予測することは簡単なことではありません.しかし,人類が長期にわたって地球上で生存していくために,そして子供たちの未来の環境を守るためには未来をみつめ備えを充実し,未来の環境をデザインしていく必要があります.現在地球は人間の活動により急激に温暖化していると言われています.温暖化が今世紀中の間ずっと進行するならその流れを食い止めることは容易ではないと思われ,特に高緯度地域で著しい気温上昇にさらされ,低緯度地域においても海水準上昇に伴う海水面付近の低地で生活する人々の生活圏の縮小,そしてサンゴ礁など多様な海洋生物をはぐくむ生態系が大きなダメージを受けます.一方で,温暖化懐疑論に代表されるように人為起源の温室効果ガスによる地球温暖化はしていないという意見もあります.地球という空間スケールの大きさ,そしてそこに気候変動に関わる諸要因(変数)の多さという観点から見ても環境変動は複雑系です.そして時間スケールの長い気候変動を考えた場合,これまで記録として残っている気温などの物理的な環境記録も過去150年程度に限られています.このため,気候変動のような長い時間を扱った環境変動の研究では誰もが納得する明確な解を得ることは容易ではありません.人間活動の影響のある場合とない場合の自然変動を比較するためにも,人間が環境に顕著に影響を与える以前の環境変動の仕組みをよく理解する必要があります.その上で,過去の地球環境を知ることが意味をもってきます.
 過去の環境変動を研究する上で問題となるのが,時間と環境の復元です.地層の正確な年代を知る必要があります.精度よく年代を決めたいがそう簡単には知ることができません.このため数百年や数千年の誤差があったら過去の環境変動を研究する意味がないという人がいるかもしれません.しかし,2011年の東日本大震災や白亜紀末の隕石衝突による恐竜絶滅で代表されるように,時には人の想像を超える出来事が起きてしまうことがあります.これまで経験したことがないような未知の変動を理解するためには地層に記録されたイベントを丹念し調べ想像力を発揮して解釈していくことがとても大切なのです.長期にわたって持続可能な人類の発展を考えたなら,極地や海に出かけて,地層等様々な環境試料を採取し環境データを収集し,様々な分野の研究者と学際的に研究を進めていく若手研究者が必ず必要です.地球の長い歴史から鑑みると,大なり小なり環境は移り変わっていくものです.移り変わりゆく未来を予測し,適応策をデザインしていく未来人が多く育ってほしいと思います.私の研究室でもそのような学際研究・人材育成への貢献の一翼を担えたらと思っています.ぜひ私どもといっしょに古環境研究をしませんか?

深海の小さな化石からわかる地球環境の未来
 第四紀には4万年または10万年程度の周期で氷期と間氷期が交互に訪れる気候変動が繰り返してきました.この氷期と間氷期の気候変動に伴い深海底に生きる有孔虫群集にも大きな変化があったことがわかっています.しかしながら,氷期の深海底ではどのような環境変化があり,その環境変化の要素のうち何が群集変化の要因になったのかを明らかにすることは容易ではありません.  1970年代の大西洋の研究では深海底に生きる底生有孔虫の群集が氷期と現在とでは分布が異なるという結果が得られ,その分布が違う理由として,氷期の深層水循環が現在とは異なっていたという魅力的な解釈が発表されていました.私が深海生底生有孔虫に興味をもち研究を始めた1990年代に入ると,欧米ではえさの量の変化,つまり有機物量の変化が有孔虫の分布に影響するのではないかと解釈する論文が多数でるようになりました.私はそれらの論文に刺激を受けて氷期には北太平洋においても群集の分布が現代とは違っていたのではないかと思い研究に着手しました.幸運にも博士課程在学中に,北西太平洋のシャツキーライズの海底コアを研究する機会が得られました.シャツキーライズは,黒潮が日本の本州沿岸を離れて黒潮続流という流れになって太平洋を横断する途中に通過する海域にあります.シャツキーライズでは氷期には生物生産性の高い寒流が南下するため,現在よりも氷期に生物生産量が増加した海域であると推定されています.この生物生産性の増加の影響は,海底コアの有機物量の増加からも支持されています.私は,シャツキーライズの海底コアの底生有孔虫群集を解析し,過去30万年間の群集変化を明らかにし,その群集変化の要因として生物生産量の変化が関わっている可能性を指摘しました.  私の研究している専門分野を化石の観点で分類すれば微古生物学と呼ばれる分野です.環境変動の観点では古海洋学と呼ばれる分野でもあります.その分野の潮流として1990年代当時は高時間分解能の研究へと移りつつあるときでした.そのきっかけとなっているのが,グリーンランドアイスコアの解析でわかった急激な気候変動です.一人の人間の生きている時間スケールで5℃以上の気温上昇がグリーンランドで起きた可能性があるのです.そのような変動がどうして起こったのかを明らかにすることは日本列島の気候状態にも影響のある問題です.現在もこの最終氷期から現在にかけての環境変動の研究に取り組んでいます.

河川の水環境

北太平洋

北極海

有孔虫

モルジブ

参考図書


研究論文等
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