森
林病理学に用いる研究手法:病理解剖
神戸大学 森林資源学研究室 黒田慶子 Kuroda, Keiko
関
連の研究報告
1.黒
田慶子:病原体の侵入に対する樹木組織の反応」-発病の兆しを検出する- 生存
圏シンポジウム「樹木の健康を診断する」要旨集 79:23-26, 2007 (PDFダウンロード)
2.Kuroda,
K.: Anatomical and noninvasive techniques to
detect the first internal symptom in diseased
trees. Symposium: A Century of Wood
Anatomy and 75 Years of IAWA, Botany 2006,
Chico, California, USA July 29 - August 2. Abstracts
p.11, 2006
3.カ
ラマツ・エゾマツ萎凋病における通導阻害の発生機構 (英文)
4.Kuroda,
K.: Xylem dysfunction in Yezo spruce
(Picea jezoensis) after inoculation with the
blue-stain fungus Ceratocystis polonica. Forest
Pathology 35(5): 346-358. 2005.
5.黒
田慶子: ヒノキ漏脂病の罹病
樹齢
および樹脂流出促進要因の解剖学的検討.木材学会誌 46:503-509,2000
病理解剖
病気に罹った樹木の組織を解剖し,顕微鏡で観察して感染や発病のメカニズムを解明する手法。微生物を樹
木に接種し,感染の初期に起こる現象---微生物の攻撃に対する樹木の細胞の防御反応など---を検出
して,発病の条件などを究明する。
機能解剖学とは
すでに枯死してしまった樹木を解剖しても,壊死細胞と様々な微生物の繁殖が見られるだけで,罹病や発病
の促進要因に関する情報は得られない。病原体の影響を見るには,感染直後の早い段階から観察する必要が
ある。樹木の場合は生体解剖が可能であり, Functional
anatomy(機能解剖学)という手法で宿主組織の機能低下を調べる。
病原体を接種した樹木や苗木を定期的に伐到して解剖を行い,病原体の影響がどのように現れるのか観察す
る。試料は解体し殺してしまうので,同時に多数の個
体に接種して,数日〜1週間ごとに順次採取していく方法をとる。接種後の菌(糸状菌)の伸長範囲は病原体の再分離(宿主組織を培地に載せて,病原体の検出
を行う)により行い,同時に,宿主樹木の細胞の反応を光学顕微鏡による観察で明らかにする。
萎凋病のように樹液の流動が停止する病気の場合,樹幹下部に色素液を注入してから伐到し,染料で樹液流
動部位を染めて,観察する方法もよく用いる。
森林病理学で用いる手法
1.診
断:発病あるいは枯死直後の樹木で病原体を観察する。病原体の検出は,病理学的手法で行う(菌の分離・
培養→同定)。
2.機
能解剖学: 感染直後あるいは人工的に接種した樹木の患部を解剖し,細胞の変化や樹液流動の変化を検出
する。生体解剖。
3.非
破壊的手法による研究: 患部を切らずに,病気の進展や組織の変化,樹液流動の変化を検出する。
MRI(核磁気共鳴画像法)やAE(アコースティックエミッション)法などがある。
4.生
化学的研究: 樹木が外敵の侵入に対して生産した物質(二次代謝産物)を,ガスクロマトグラフィー,液
体クロマトグラフィーなどの分析手法で検出する。