研究成果紹介
基盤C 23550226 基盤C 26410073
基盤C 23550226
ブルーブロンズM0.3MoO3は常温で1次元金属,低温では金属-半導体転移を起こしCDW 状態を取り,CDWの滑り運動に由来した非線形電気伝導やメモリー効果などの興味深い物性を示す物質です.最近はそのCDW 状態が光に応答して変化することで注目されており,コヒーレント長程度のサイズの結晶では,CDWがサイズ効果を受け,バルク結晶とは異なった特性を示すことが期待されています.
我々は,水熱条件下で起こる固相反応に特異的に見られる“結晶の細片化”(下図参照)を見出しており,この"細片化"とその後の“方向選択的な結晶成長”を利用して,機能性酸化物であるブルーブロンズをナノメートルサイズの太さと数百ミクロン以上の長さをもつ針状単結晶(ナノリボン)試料として育成する方法を確立することを目指して研究に取り組みました.
{Mo154}
これまでの研究により,上に示した水素モリブデンブロンズを出発物質とするブルーブロンズの生成反応には以下に示すような競合する副反応(出発物質の分解反応)が存在することが分かっています.出発物質である水素モリブデンブロンズは固相反応で調製されるため,その組成は不均質になり易く,平均的には同一の還元度の試料でも還元状態に不均一性が存在すると分解反応が顕著になり,単一相のブルーブロンズの調製は難しい。また,出発物質や目的物質は還元状態にあるため,反応時のこれらの酸化を抑える必要があり,以前の研究では,2か月以上エージングを行って均質化した出発物質をグローブボックスなどを使い酸素除去した環境で反応容器に詰めて水熱処理をすることにより単一相のブルーブロンズ調製を行っていた.しかし,この調製方法では手間がかかり,"細片化"とその後の“方向選択的な結晶成長”を厳密に制御する処理法の条件出しが難しかった.
{Mo154}
そこで,固相反応でありながら出発物質を均質に調製する新しい方法と大気中でも処理中の試料などの酸化を抑える添加物を詳細に検討することにより,グローブボックスや真空ラインなどの特別な設備を使用することなく,大気下の合成により,調製後すぐの出発物質から還元体といえるK0.3MoO3ブルーブロンズの単一相の試料を合成する方法を確立することに成功しました.
そして,この方法を用いてさらに条件を詰めることによって,単一相のブルーブロンズ・ナノリボン(SEM像とXRDパターン参照)を調製することにも成功しました.
得られたブルーブロンズのナノリボンがブロンズの電気伝導方向に沿って伸長していること(TEM像とSAEDパターン参照)とバルク試料とは異なる振る舞いを示すこと(磁化率-温度プロット参照)も確認しています.
{Mo36} building block
[T. Nishida, K. Eda, K. Takahashi, T. Sakurai, H. Ohta, and M. S. Whittingham, Chemistry Letters, 42, 1514-1516 (2013)](http://dx.doi.org/10.1007/s11051-018-4134-5)
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