長野県木曽町開田高原の採草地における草原性生物の減少

火入れや採草など、人の管理により維持されてきた半自然草原は、かつては多様な草原性生物が生育する環境だった。近年、世界的に、機械化による牛馬の不要化、化学肥料による緑肥の不使用などから草原自体の利用価値が低下し、さらに管理者の高齢化も相まって、草原管理の放棄・簡略化(管理方法の変化)が進行している。これまで管理方法の変化によって生物多様性が減少しているという報告が多くなされているが、その多様性減少メカニズムについては十分には解明されていない。

 開田高原では、木曽馬の飼い葉生産のための採草地として、火入れと草刈りを二年に一度行う伝統的管理によって半自然草地が維持されてきた。しかし、近年、牛馬使用の減少に伴い、採草地の管理放棄や方法の簡略化が進行している。同時に、草原性生物が減少していると言われるようになってきた。この研究では、管理放棄や管理形態の変化が、草地の環境変化(植生高・土壌条件の変化)をもたらし、植物多様性を減少させているという仮説をたて、その検証を行っている。これまでの調査より、管理頻度の変化に伴う植生高の変化(減少・増加)が、植物多様性減少と関係していることが明らかとなった。また、植物の多様性減少が植食性昆虫の多様性減少を引き起こしている可能性について調査を進めている。

Uchida et al. 2016 Agric Ecosyst Environ 221:156-
研究について2012年に地元・松本平タウン情報の紙面上で詳しくご紹介いただきました。
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