花序構造の多様性と送粉者の行動

個々の花の花序内の配置は、植物ごとに異なっている。この花序構造の多様性は送粉者の花序内の行動と関係していると考えられている。ネジバナの花序には花の配置(花序の捻れの程度)に大きな集団内変異が存在している(Fig. 1)。この研究では野外で見られる集団内変異を利用して、花序の形態がポリネーターの行動や繁殖成功に与える影響を調査した。その結果、捻れの弱い花序ほど、ポリネーターを多く誘引するが、そのような花序ではポリネーター個体による、花序内での連続訪花(隣花受粉)が増加していた。さらに、ポリネーターの行動から予想される通り、花粉の持ち去り率や果実の生産率、ならびに隣花受粉の起こりやすさは、捻れが強い花序ほど小さいことも示された。集団内に捻れの変異が維持されているのは、捻れ具合が及ぼす誘引の効果(+)と隣花受粉の影響(-)に、こうしたジレンマがあるためかもしれない。この研究は、野外集団内の花序の形態変異がポリネーターの行動や繁殖成功に影響を与えることを示した初めての研究であり、ポリネーターとの相互作用が花序形態の進化に影響を与えることを明示したものと言える。

  • Iwata T, Nagasaki O, Ishii HS, & Ushimaru A. (2012) New Phytol. 193:196-

  • Fig. 1 Diversity of Spiranthus sinensis inflorescence architecture. Flowers are spirally placed around the stems, and the degree of twisting varies substantially among individuals. Helical angles of the respective inflorescences are 0° (a), 25.7° (b), 51.4° (c) and 90° (d).


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