研究室からのメッセージ
現在、研究室配属や大学院進学を考えている学生の皆さんに向けて、大学の研究室とはどういうものか、その中で当研究室が現在何を目指しているかを述べたいと思います。
現在、大学の教員をしている私ですが、恥ずかしながら、私が高校生だった頃、大学では何が行われているか、大学生になったら何をしたいか、ということを考えたことがありませんでした。自分の手元には教科書があったからです。数学、国語、英語、物理などの教科があり、それぞれに勉強する範囲が指定されていて、そこから逸脱する範囲のことは今は学ぶ必要ないと手を付けない。それは大学に入学してもすぐには変わりませんでした。その自分の中での常識が通じなくなったのが、研究室に配属された時でした。まず、教科書がない。もちろん、有機化学などの教科書はあるのですが、研究室では教科書に載っていることをしていても全く意味がありません。大学の研究室は、将来の研究者を育てる教育の場としてだけではなく、世界の最先端の科学を実践する研究の場であることも求められているからです。そして、そういう場であるから、終わりがありません。やるべきこと(そして次第に「やりたいこと」に変わりますが)が無限にあります。大学の研究室とはそういうところです。
では、学生の皆さんは研究室で何を目標にしたらよいか。 これは私見ですが、研究者としての自分を自ら育てる、ということです。そしてそれは、「自覚」を持つことのみによって可能となります。私は、研究室の学生の皆さんにはいち早くこの自覚を芽生えさせてもらいたい(もちろんすでに持っている人もいます)と思っています。当研究室では、世界最先端の有機化学を全ての学生の皆さんに進めてもらっています。そして、誰もが学年や立場の違いを超えて議論できる環境を用意しています。最初は私や先輩に言われた実験を行う研究スタイルだったものが、他人と議論し、知識と経験を積んでゆくことで、自らが考え実験を設計し結果を考察するようになる。その成長過程をぜひ楽しんでもらいたいと思います。
有機化学はとても面白いです。原子と原子を結合しまたは切断し、新たな分子を創造していく。どんな生成物が得られるかは実際に反応させてみないとわかりません。目的物が収率よく得られて、それが雪のようなきれいな結晶である時もあれば、副反応ばかり進行し溶けたチョコレートのような液体が得られるときもある。でも実は、そのチョコレートもどきの中に、とても面白い構造を有する化合物が、新反応の原石として存在している時もある。有機化学とはそのような学問です。研究室を作り上げていくのは、教員だけではありません。むしろ、学生の皆さんが主体となります。
学生の皆さんと一緒に、「我々の研究室」、というものを喜怒哀楽しながら構築していきたいと考えています。
松原亮介
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