Dr. Ryuichi Okada

研 究:研究の成果Research: results


最近の研究成果 Recent publication

カシノナガキクイムシ触角の神経応答を記録しました

Male antennae of the ambrosia beetle are more sensitive to the aggregation pheromone than females
カシノナガキクイムシの宿主木の選択に関係していると思われる化学物質に対して、触角の嗅感覚系がどのように反応するかを調べました。すると集合フェロモンに対してオスの方が感度が良いことがわかりました。
発表論文(published as)

Okada R, Ito Y, Yamasaki M (2025)
Antennal responses to volatiles related to host location in the ambrosia beetle Platypus quercivorus (Murayama)
J Chem Ecol, 51: 27.


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ミツバチのダンス情報の符号化と復号化について明らかにしました。

Forager bees search for a food source more precisely than dance information shows.
良好な餌場を仲間に伝えるミツバチの尻振りダンスに着目し、ダンスバチが伝える餌場の位置情報と、位置情報をもらったハチが飛んで行った場所を比べると、教えてもらった情報よりも正確に餌場に飛んでいくことがわかりました。
発表論文(published as)

Wang Z, Chen X, Okada R, Walter S, Menzel R. (2025 (2025)
Encoding and decoding of the information in the honeybee waggle dance
Behav Ecol Sociobiol, 79: 53.



おもな研究成果 Selected publication

これまでに行った研究のおもな成果をまとめて紹介します。

動物の空間認識の脳メカニズム

spatial recognition in the honeybee

例えばミツバチなどの昆虫は、餌場や巣の場所を記憶して採餌活動を行っています。このことはミツバチが 高度なナビゲーション能力を持っていることを示しています。ミツバチがどのように場所を記憶して、 目的地へ移動するのかを行動実験で調べたところ、それぞれのハチが採餌をした時に得た 天空の偏光情報を手がかりにしている可能性が見つかりました。

たとえば (Selected publications)
Kobayashi, Hasegawa, Okada, Sakura. J Comp Physiol A, 209: 529-539, 2023
Kobayashi, Okada, Sakura. J Exp Biol, 233: jeb228254, 2020
Matsubara, Okada, Sakura. Zool Sci, 38: 297-304, 2021

ミツバチの社会性行動に関する研究

social behavior in the honeybee

昆虫が示す行動のうち、最も複雑な行動のひとつは社会性行動です。 ミツバチは8の字ダンスというコミュニケーション手段を用いて、良質な餌場 の情報を巣の仲間に伝え、採餌効率を上げ、その結果としてコロニーを維持してい ると考えられています。8の字ダンスがコロニーを維持するのに実際どれくらい効 果があるのかを行動学的実験で調べた結果、ダンスを阻害すると集めてくる蜜の量 が少なくなることが示唆されました。

たとえば (Selected publications)
Okada et al., J Robot Mechatorn, 35: 901-910, 2023; doi:10.20965/jrm.2023.p0901
Okada et al., Scientific Reports, 4: 4175, 2014; doi:10.1038/srep04175
Okada et al., Journal of Experimental Biology, 215: 1633-1641, 2012

匂い連合学習の神経メカニズムに関する研究

olfactory memory mechanism

嗅覚学習をさせながら同時に脳のキノコ体の神経活動を長時間記録しました。その結果、餌と関係のある匂いと関係ない匂いを区別できたミツバチでは、学習の後、餌に関係ある匂いに対してだけPE1と呼ばれるキノコ体ニューロンの応答が減少することがわかりました。区別できなかったミツバチでは応答が変わりませんでした。現在、この結果から推定される匂い学習に関する神経回路モデルを提唱しています。

たとえば (Selected publications)
Okada, Memory Consolidation, pp.1-13, 2015
Okada et al., Journal of Neuroscience, 215: 1633-1641, 2012

脳の匂い情報処理メカニズムに関する研究

olfactory information processing

ショウジョウバエを用いて、抑制性の神経伝達物質であるGABAに着目して嗅覚1次中枢でGABAを介在する神経連絡を詳細に調べました。その結果、GABAによる情報伝達は嗅覚の1次中枢の局所介在神経と呼ばれる神経群によってのみ行われることがわかりました。さらに解剖学的解析を行い、局所介在神経は従来考えられていたのとは違い、形態学的に非常に多様な形態をしていることがわかりました。

たとえば (Selected publications)
Okada et al., Journal of Comparative Neurology, 514: 74-91, 2009
Silbering et al., Journal of Neuroscience, 28: 13075-13087, 2008
Sachse et al., Neuron, 56: 838-850, 2007

脳の運動制御メカニズムに関する研究

brain motor control

自由行動中のワモンゴキブリのキノコ体の神経活動を記録した結果、キノコ体の出力ニューロンは3タイプに分類できることがわかりました。昆虫の脳の感覚中枢から運動中枢までの神経の基本配線は、多数の並列回路と一部の階層的な回路によってできていることがわかりました。これらの経路と昆虫の行動を対応づけると、並列的な経路は反射や本能行動を司り、階層的な回路は記憶や学習などの高次行動を司る可能性があります。「昆虫の脳の配線と哺乳動物の脳の配線は基本的に同じである」という動物の脳の基本設計に関する仮説を提唱しています。

たとえば (Selected publications)
Okada et al., Journal of Comparative Neurology, 458: 158-174, 2003
Okada et al., Journal of Comparative Physiology A, 185: 115-129, 1999

飛翔行動による行動選択のメカニズムの研究

flight-dependent decision making

森林害虫のカシノナガキクイムシが旧宿主木から飛び立って新宿主木に定住する際、新宿主木の探索・発見・穿孔・定住という過程を経ます。フライトシミュレータを用いた行動実験によって、それぞれの過程に飛翔行動が強く関わっていることがわかってきました。さらに、各過程では、光・匂いなど多くの感覚情報も利用していることも明らかになりつつあります。この研究は京都大の主導のもと、福知山公立大学・兵庫県立農林水産技術センターとの共同研究として進めています。

たとえば (Selected publications)
Okada, et al., J Vis Exp, 138: e57468, 2018; DOI: 10.3791/57468.
Pham et al., Entomologia Experimentalis et Applicata, 168: 928-939, 2020
Pham et al., Journal of Insect Behavior, 30: 318-330, 2017

update on Apr 26, 2025