実践農学で里山管理を学ぶ
神戸大学 森林資源学研究室 黒田慶子 Kuroda, Keiko
神戸大学の演習科目「実践農学」 森づくりグループ
食農
コープ教育プログラム・ESD
(Education for Sustainable Development)プログラム
樹木医
補認定科目 担当:黒田・庄司
この演習では農林業、農村の抱える課題について科学的観点で情報
収集をおこない、実践可能な事業(プロジェクト)を企画立案・実施します。その成果と課題を地域の
方と共有し、地域の持続的な活動へ繋げます。
森づくりグループの目標
森づくりグループでは、まず森林植生調査の基本から始めます。学内での座学、3回の宿泊演習、演習後の
データ整理とグループワークによって課題を把握します。基礎知識を得る過程で地域の発展につながる企画
案が出てくることを期待しています。昨年に引き続き、次のような演習を実施する予定です。
1.
里山(旧農用林)の生態に関する基礎知識を得る。森林資源の利用再開について考える。
2.
ナラ枯れの起こり方を体験的に学び、被害後の森林の変化を予測する。
3.
竹林(外来植物)拡大、野生獣類による農林被害を知り、里山の資源循環について考える。
篠 山地域にとって、里山林をどう維持するのが望ましいのか、継続的実施が可能なシステム作りに学生がどう 関われるか考える。将来への連続性(次世代にどう渡すか)を考える。
2012年度の実施内容
森づくり班のテーマ:篠山の里山で資源循環を体験し、
考える
最終目標: 篠山の里山をどのように利用すると、森林
の持続、資源循環、
地域振興につながる
のか考えて実行する。
第1回 5月18日 校内: 基礎知識習得
(1)講義:里山林の現
状と管理手法
(2)実施計画
第2回 7月28〜29日宿泊演習
「里山広葉樹林の資源量と植生調査」
・
クヌギ林(伐採予定地)の資源量調査
・
放置に辞林の樹種と下層植生の調査
第3回 9月29〜30日宿泊演習
「里山不健康化の一因『ナラ枯れ』の被害状況とニホン
ジカの生息状況
を把握する」
(1)ナラ枯れ現場の体験と調査
•媒介甲虫の穿入木調査。穿入密度と直径の関係など。)
•ナラ枯れ後の植生変化の予測
(2)夜間のライトセンサス体験
第4回 12月1〜2日宿泊演習
「野生獣類の食資源としての利用と二次林の整備」
(1)
野生獣類の影響について考える
•野生獣類の食資源としての利用(食肉
への加工の見学および試食)
(2)
放置竹林の伐採・整備を手伝うとともに植生を把握する。
第5回 大学内で自主的作業
・
調査データをまとめ、考察する。
・
今後の行動計画を考え、篠山市へのアイデア提案。
・
成果発表の内容を錬り、ポスター発表の準備をする。
第6回 1月26日(土) 13:30~16:30
篠山市・神戸大学大学第7回地域連携フォーラム
場所:丹波広域農業研修センター(篠山市)
•15:00~16:30 ポスターセッショ
ン
里山の健康維持と資源利用について発表
2012年度の成果報告
第7回 篠山市・神戸大学地域連携フォーラム 2013年1
月26日(土)
丸ごと見える、篠山における神戸大の取組み
特別講義: 篠山の里山を次の世代に渡す
ために---実現のための3つのステップ--- 黒田慶子
ポスターセッション 篠山市における
学生・研究者の活動
実践農学受講生,森づくりグループの報告
10×10mのプロット設定
キャンプ場で夕食準備
2013年度の成果報告
第8回 篠山市・神戸大学地域連携フォーラム 2014年1
月25日(土)
実 践農学受講生,森づくりグループの報告
2013年度の調査風景
2013年度の実施内容
第1回 オリエンテーション 2013年5月14日
履修メンバーの顔合わせ、履修動機、安全な演習
についての注意
年間の予定。
第2回 事前学習 ー 演習の前 7月23日
里山林の植生や現状の基礎知識を習得してお
く。
森林調査の手法に関する説明。
第3回 宿泊演習(篠山市1泊、矢代地区) 7月
27〜28日
篠山の里山植生調査、二次林の整備体験(放置
竹林の伐採)
山林所有者の方と懇談
第4回 データのまとめと次回宿泊演習の準備
篠山の里山植生調査のデータから何が読み取れる
のか?
篠山市への提案・・・演習の最終までしっかり考
える。
第5回 宿泊演習(篠山市1泊) 10月4〜5日
①
ナラ枯れ(伝染病)の被害調査
②
ニホンジカの生息調査(ライトセンサス)
③
クヌギ伐採後の萌芽発生の調査
第6回 宿泊演習(篠山市1泊) 12月14~15
日
①
伐採業者によるコナラ、アベマ大径木を伐採。
伐採木を短く切ったあと、皆で斜面の下まで降す。
②
シカ猟師さんによる括りわな実演とシカの解体
③
地元関係者と夕食&意見交換、 鹿肉試食 、
龍造寺本堂建築材見学
④
シカの解体食肉工場の見学
第7回〜
演習を通しての成果に関するディスカッション
プレゼンおよびポスター作成
ポスター発表(ポスター賞一位獲得)→
2014年度の実施内容
第1回 履修者決定とオリエンテーション 2013
年4月18日
履修メンバー14名とTA2名が決まりました。
第2回 事前学習
里山林の植生や現状の基礎知識を習得してお
く。
森林調査の手法に関する説明。
第3回 宿泊演習(篠山市1泊、矢代地区と東木之
部) 5月31〜6月1日
昨年の植生調査地(矢代)で,篠山の里山林の
生態を確認
シカ防護柵のある東木之部で,食害の無い場合
の植生調査
第4回 データのまとめ
第5回 宿泊演習(篠山市1泊、矢代地区と東木之
部) 10月3〜4日
①ナラ枯れ(伝染病)の被害調査
②ナラ防護柵の効果と植生の再生
第6回 宿泊演習(三重県、吉田本家)12月13〜
14日
充分に管理された針葉樹人工林の特徴を知る
第7回 神戸大学地域連携フォーラム
2015年1月24日(篠山市) ポ スター発表→
2015年度の実施内容
第1回 履修者決定とオリエンテーション 2013
年4月22日
履修メンバー13名とTA2名が決まりました。
第2回 宿泊演習(篠山市1泊、矢代地区と今田)
5月23〜24日
実施内容:
①ナラ枯れ被害の現状を知る。カシノナガキクイム
シ穿入木の枯死率調査
②里山林の植生と資源量を調査する。昔はアカマツ
が多かった里山林の現状を把握する。
健康化と若返りのために伐採が必要なので,資源利
用を前提に基礎データを得る。
調査地:篠山市矢代,青木ファームの山林,今田の
山林
矢代地区の里山林では、カシノナガキクイムシ穿入木は多数で
あったが、枯死率は低い。土壌条件などの要因について調べる必要がある。
今田地区の山林は、伐採後の萌芽再生に失敗しており、管理手法
に問題があると判断された。ボランティア団体が整備作業を行ったようであるが、薪を採取した後の枝が散
乱し、また、種コマ打ちに失敗したほだ木が放置されているなど、整備とは言えない状態である。指導者の
不在が問題であろうと思われる。
第3回 演習 里山の伐採樹木の資源化手法
(神戸市北区キーナの森)10月17〜18日
趣旨と内容
神戸市の森林公園整備にあたって伐採された樹木
が路肩に積み上げて放置されている。このような伐採木放置は病虫害発生や事故にもつながるため,本来は放置して
はいけない。しかし焼却処分には産業廃棄物とする必要があり,未対応のままとなっていた。
里山管理の重要な課題は「森林資源の利用と再
生」であることから,
この演習では放置樹木を「廃棄物扱い」ではなく資源(エネルギー)として活用することを提案する。木炭化すると伐採木の重量が大幅に減り,搬出・運搬が容
易になる。生産した木炭は、災害時のための備蓄に適するという考え方もある。
近年,ドラム缶を利用した炭焼き窯の開発があり (松村式),設置が容易で安価であるため,その実践者に講師を依頼し,ドラム缶炭焼き窯の作成方法も含めて実地 指導を受けた。
矢代地区の里山林、シカの食害とナラ枯れが発生
神戸市北区 キーナの森で
ドラム缶炭焼き
2016年度の実施内容
第1回 神戸市北区有野町下唐櫃地区 2016年
5月28日,6月5日
里山林の植生と資源量を調査する。
昔はアカマツが多かった里山林の現状を把握す
る。
資源利用を前提に基礎データを得る。
第2回 宿泊演習(篠山市1泊、矢代地区)
2016年10月29〜30日
調査地:篠山市矢代の山林
①ナラ枯れ被害の現状を知る。カシノナガキクイム
シ穿入木の枯死率調査
② 健康化と若返りのために伐採が必要なので,資
源利用を前提に基礎データを得る。
③ 宿泊先の龍蔵寺本堂の建築材について学び,伐
採林分を見学
第3回 宿泊演習 篠山市矢代 2017年1月
8〜9日(予定)
①ナラ枯れ被害木のプロによる伐採→カシノナガキ
クイムシの穿入状況の調査
②資源として使うための検討
③今年度演習のまとめと地元への提案の検討→1月
21日の発表会の準備
2017年度の実施内容
第1回 神戸市北区有野町下唐櫃地区 2017年
5月28
里山林の花木に注目して植生調査
里山散策ツアーを企画する・・・散策マップや森
林案内情報などを作成
第2回 下唐櫃地区 2017年10月7日
里山林:秋の植生調査→散策ツアーの秋バー
ジョン作成
「六甲山シンポジウム」参加
黒田慶子: 植生から見る六甲山の自然観察
・ハイキング利用の可能性と課題
第3回 宿泊演習 篠山市
2018年1月6〜7日(予定)
①里山における獣害を観察する・・・矢代地区
②山林・農作物の被害を減らすためには野生獣類の
頭数管理が重要
捕獲したニホンジカを食資源化する体
験・・・猟師さんの指導で解体
③今年度演習のまとめと地元への提案の検討→1月
20日の発表会
今田地区の里山活動跡の散乱と、
萌芽再生の失敗・・・これでは困る!
ナラ類の炭の断面