神戸大学農学部生命機能科学科
応用生命化学コース
動物資源利用化学

研究内容

具体的には、3人のスタッフがそれぞれ以下のような研究を推進しています。

1 脂質及び脂質関連酵素に関する研究(白井グループ)

生体反応の多くは、分子レベルでの反応の連続で成り立っています。細胞の中で起こるこれらの反応(細胞内情報伝達)には、様々な酵素とその活性を調節する脂質メッセンジャーが大変重要な働きをしています。

その中でも、我々は脂質によって活性化されるプロテインキナーゼC(PKC)と、PKCの活性を間接的に調節する脂質代謝酵素であるジアシルグリセロールキナーゼ、さらに両酵素の活性を制御する脂質に着目し、色々な病態あるいは細胞応答における脂質及び脂質関連酵素の機能を調べています。

具体的には、蛍光プローブを用いた細胞レベル、個体レベルでのライブイメージング、生化学的手法による解析、遺伝子操作動物の作製などを駆使して、以下のような研究を推進しています。

主なテーマ
  • 神経系(記憶並び感情障害)におけるDGKの機能解析と記憶及び感情障害改善薬・食品への応用
  • 小脳が司る協調運動におけるDGKとPKCの機能解析と老化を予防する機能性食品への応用
  • 糖尿病性合併症におけるPKCとDGKの機能協関解析とその機能性食品及び創薬への応用
  • ヒスタミン分泌におけるPKCとDGKの機能協関解析とその機能性食品及び創薬への応用
  • 皮膚におけるPKCとDGKの機能協関解析とスキンケアへの応用
  • 脂質シグナルの可視化による細胞周期制御及び癌化における核内脂質とDGKαの機能解析

2 細胞ストレスと栄養に関する研究(上田グループ)

筋細胞は運動器官の役割に加えて、エネルギー代謝、ホルモン産生、恒常性維持など多様な機能を担っています。筋肉量は、成長期を過ぎた頃より鍛錬を行わなければ減少に転じます。加齢に伴う病的な筋力低下は、サルコペニアと呼ばれ、高齢者の日常生活の動作を著しく低下させます。また、高齢者に限らず、低栄養、運動不足、過度な細胞ストレスは、健常者であっても筋力の減退を引き起こし、様々な病気の原因となります。筋肉の量と質の維持は、我々の健康に欠かすことはできません。また、筋肉を対象にした細胞工学は、再生医療、食料生産、培養食肉など、話題に事欠かない分野です。

我々は、筋細胞の細胞内シグナル伝達に着目し、「加齢」、「細胞ストレス」、「サイトカイン」、「脂質」、「細胞外マトリックス」などをキーワードに、遺伝子工学・細胞工学的な研究手法を駆使して、以下のような研究を推進しています。これら研究の成果を通して、食と健康への貢献を目指しています。

主なテーマ
  • 細胞ストレスに対するヒートショック蛋白質の細胞保護機能の解明
  • 細胞老化に関わるタンパク質の探索とその応用
  • 動物性脂質の健康機能に関する研究
  • 異所性脂肪の発生に関わる分子機構の解明

3 腸内細菌叢に関する研究(福田グループ)

食品成分は、消化管上部で消化・吸収されて標的組織で生体反応を起こすことでその機能性を発揮するほか、消化管上部で消化されず、吸収されなかったものは大腸まで到達して、腸内細菌叢による代謝を受けたものが吸収されたり、また腸内細菌叢に影響を及ぼすことで免疫賦活活性や記憶の改善などの機能を発揮するものもあります。腸内細菌叢のバランス改善や維持に役立つプレバイオティクスは、オリゴ糖や食物繊維が一般的ですが、糖脂質や難消化性タンパク質についても注目が高まっています。

そこで、これらの食品成分及びその代謝物について腸内細菌に着目してその機能および作用機序を調べています。食品由来の成分を始め、大腸まで到達する可能性のある様々な物質が腸内細菌叢の構成とその代謝産物におよぼす影響と、物質そのものの代謝や動態を解析することにより、その機能性や安全性の評価を行っています。

主なテーマ
  • ファイトケミカルの腸内動態と腸内環境および生体におよぼす影響の解明
  • 難消化性タンパク質のプレバイオティクス効果の検証とその応用
  • 腸内細菌叢に着目した糖脂質の機能性に関する研究
  • 腸内細菌叢代謝物が腸上皮細胞バリア機能におよぼす影響の解明