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現代の経済、現代と経済Courses

第10回 貧しい国と豊かな国

第9回 世界経済の重要性

  •  前回は、開発途上国への援助に関連して、制度の違いが存在する、というお話しをしました。今回は、制度設計の重要性についてお話しします。
     途上国の問題としては、「情報不足」や「問題の先送り」といった話しを前回しました。そして最近の研究では、こうした問題を個人レベルで回避できる人は「貧困の罠」に陥らないことが分かってきました。とすると、これらの問題は個人の責任なのでしょうか?
     結論から言うと、こうした問題は自己責任とも言えますが、人間の性質としてある意味仕方がない面もあります。そしてこのような問題をさらに悪化させてしまう原因は「貧しい国の制度は脆弱である」ということです。つまり法律や教育、社会的な制度が確立していないため、権力やカネの力が優先され、貧しい人ほど窮地に陥りやすくなります。
     したがって貧しい国々が豊かになるためには、様々な分野できちんとした制度を確立することが不可欠だということです。

     制度の違いがどれほど経済に影響を与えるかというと、北朝鮮と韓国のケース、あるいは改革開放の以前と以後の中国のケースから明らかです。すなわちどちらのケースでも民族や地理、文化はほぼ同一にもかかわらず、国の制度設計が異なると、国のパフォーマンスは非常に異なるものとなります。
     
  •  豊かになるためには、きちんした制度設計が重要です。しかしそれと同時に、「貧困の罠」に陥らないためには、個人の資質も重要であることも明らかになってきました。つまり「問題の先送り」は人間の性質として誰でも持ち合わせているものですが、もし「楽観性」や「将来への希望」、「長期的な目標」などがあれば、人間は問題を先送りしないことも明らかになっています。
     ただし目標や希望があまりにも遠い場合、人々はやる気を失ってしまうでしょう。そのようなときには身近な目標や希望が必要かもしれません。そしてそのような夢や実現を手助けするために、制度が必要となる訳です。

     このように人々が貧困から抜け出すためには、個人の資質とそれを手助けする制度が重要であり、その結果、そうした人々が豊かになる可能性が高まっていくことになります。
     

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講義概要

「経済のしくみ」編
第1回 経済学とは?:市場とGDPのお話し
第2回 お金のお話し
第3回 アダム・スミスという人のお話し
第4回 経済をコントロールするお話し:マルクス、ケインズ
第5回 再び「経済自由化」のお話し:フリードマン
「日本経済の問題」編
第6回 インフレとデフレのお話し:アベノミクスとインフレターゲット
第7回 政府と日銀の経済政策のお話し:財政政策と金融政策と国債
第8回 日本の諸問題:円高と年金問題
「世界経済の問題」編
第9回 世界経済の重要性:途上国援助について
第10回 豊かな国と貧しい国

講義資料

オリエンテーション
第1回 オリエンテーション:経済学とは?+消費税増税について
「経済のしくみ」編
第2回 市場メカニズムとGDPの話し
第3回 お金のお話し
第4回 アダム・スミスという人のお話し
第5回 経済をコントロールするお話し:マルクス、ケインズ
第6回 再び「経済自由化」のお話し:フリードマン、TPP
「日本経済の問題」編
第7回 インフレとデフレのお話し:アベノミクスとインフレターゲット
第8回 財政政策と金融政策と国債の話し
第9回 日本が直面する諸問題:円高と産業空洞化&年金と国債と消費税
「世界経済の問題」編
第10回 世界経済の重要性:途上国援助について
第11回 豊かな国と貧しい国:制度設計の重要性

バナースペース

Koji KAWABATA

GSICS, Kobe University
2-1 Rokkodai, Nada
Kobe 657-8501, Japan

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