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現代の経済、現代と経済Courses

第1回 経済学とはどんな学問なのか?:市場とGDPのお話し

  •  経済学とはどのような学問なのでしょうか?
     簡単に言うと、「(私たちの暮らしを少しでもより良くするために)資源の最適配分を考える」学問です。ここで「資源」というのは、単に天然資源を指しているのではなく、労働時間やお金などを意味します。
     たとえば労働時間を増やせば給料が増えていろんなものを買うことが可能になります。その一方で、労働時間を増やせば家族と過ごす時間や、趣味の時間が減ってしまいます。では「どのように時間配分するのが一番幸せか」、このようなことを考えるのが経済学という学問なのです。
     
  •  経済学には重要なキーワードがあります。そのひとつが「市場(しじょう、いちば)」です。モノの値段や取引量はこの「市場」で決まります。またこの市場を形成する重要な概念として「需要と供給」という言葉があります。「需要」はモノ・サービスを欲しい人、「供給」はそれを売りたい人。この「需要」と「供給」が、「市場」という場で、モノ・サービスの値段や取引量を決定します。

     「市場」や「需要」、「供給」に関しては、基本的な法則があります。
    ・値段が高いと買い手は少ない
    ・値段が安いと買い手は多い
    ・値段が高いと売り手は多い
    ・値段が安いと売り手は少ない

    これらの法則を図にしたものが、「需要供給曲線」です。縦軸をモノ・サービスの価格、横軸をその取引量とすると、需要曲線は右下がり、供給曲線は右上がりになります。
     需要曲線はモノ・サービスを買いたい人の価格と取引量の関係を表します。何か欲しいものがあるとき、値段が高いと買いたい人は少なくなります。だけどその値段が安くなると、その値段なら買ってもいいかな、と思う人は増えてくるはずです。
     一方、供給曲線はモノ・サービスを売る人にとっての価格と取引量の関係を表します。あるモノを売ろうとしてもその価格があまりにも安い時、それを売りたいと思う人は少ないでしょう。だけど、価格が高くなっていくにつれて、その値段だったら売ってもいいかな、と思う人は増えてくるはずです。
     このように右下がりの需要曲線、右上がりの供給曲線が交わるところで、価格と取引量が決定します。

     この需要・供給曲線からさらにもう2つ、法則を導き出すことができます。
    ・売れ残れば値段は下がる
    ・品不足なら値段は上がる

    法則のひとつ目、「ある商品が売れ残る」ということは、ある値段において人々が「欲しい」と思う量(需要)が「売りたい」と思う量(供給)よりも少ないために生じます。このとき、売りたい人々は商品が売れ残っては困りますから、通常、すべて売り切れるように価格を下げます。閉店前のスーパーでお惣菜等が値下げしているのは、このような状態を表しています。これは需要・供給曲線で言うと、均衡点(曲線が交わるところ)より上に位置している状態で、市場が均衡するためには(需要・供給ともに過不足なく、まるくおさまる状態になるためには)、価格が下がることになります。
     一方、法則のふたつ目の「品不足」ということは、ある値段において人々が「欲しい」と思う量(需要)が「売りたい」と思う量(供給)よりも大きいために生じます。このとき買いたい人々は少々値段が高くなっても買おうとしますから、一般的に、「欲しい」と思う人々がある程度少なくなるまで価格が上昇します。これは需要・供給曲線で言うと、先ほどの例とは逆に均衡点より下に位置している状態で、市場均衡のためには、価格が上がることになります。
     
  •  さて、ここ20年、日本はずっと不景気と言われてきました。これは需要と供給の間にギャップがあって、たくさんのモノ・サービスが提供されているのに対し、それを「買いたい」と思う人(あるいは買える人)が少ない状態を反映しています。つまり需要が少なくてなかなかモノ・サービスが売れず、余ってしまう状態がずっと続いているのです。これは結果として、工場や働いている人々が余ってしまい、もう少し生産を減らしましょう、雇う人数を減らしましょう、となって、経済が縮小する状態が長年続いている訳です。

     ではこの不景気や景気といった状態はどのように測られるのでしょうか?
     景気を図る指標のひとつとして経済成長率があります。経済成長率は一般に「GDP(国内総生産)」という統計データを用いて計算されます。ここでGDPとは「一定期間に国内で生産されたモノ・サービスの付加価値合計額」を指します。また付加価値とは「企業等がモノ・サービスの生産過程で新たに生み出した価値」を指します。
     ここでパンを作るときの付加価値の計算例を見てみましょう(以下では、簡単化のために材料費&生産費はゼロとします)。まず農家は小麦を作り、それを50万円で製粉メーカーに売ります。このとき農家は新しい価値を50万円分作り出したことになります。また製粉メーカーは50万円で農家から小麦を買い取り、小麦粉を作って70万円でパン屋に販売したとします。この結果、メーカーは20万円(=70-50)の付加価値を作り出したことになります。さらにパン屋はメーカーから小麦粉を70万円で買い取り、パンを作って100万円で消費者に売ったとします。このときパン屋は30万円(=100-70)の付加価値を生み出したことになります。この結果、農家、製粉メーカー、パン屋の生み出した付加価値を合計すると、50+20+30=100万円となり、この3者の付加価値合計額になります。
     このように日本国内で売買されたすべてのモノ・サービスの付加価値額を合計したものがGDPとなります。一般に、GDPが前年度よりずっと大きくなっていれば「景気が良くなった」、逆に前年度からあまり増えない、あるいは減少すれば「景気が悪くなった」ということになります。
     
第2回 お金のお話し

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講義概要

「経済のしくみ」編
第1回 経済学とは?:市場とGDPのお話し
第2回 お金のお話し
第3回 アダム・スミスという人のお話し
第4回 経済をコントロールするお話し:マルクス、ケインズ
第5回 再び「経済自由化」のお話し:フリードマン
「日本経済の問題」編
第6回 インフレとデフレのお話し:アベノミクスとインフレターゲット
第7回 政府と日銀の経済政策のお話し:財政政策と金融政策と国債
第8回 日本の諸問題:円高と年金問題
「世界経済の問題」編
第9回 世界経済の重要性:途上国援助について
第10回 豊かな国と貧しい国

講義資料

オリエンテーション
第1回 オリエンテーション:経済学とは?+消費税増税について
「経済のしくみ」編
第2回 市場メカニズムとGDPの話し
第3回 お金のお話し
第4回 アダム・スミスという人のお話し
第5回 経済をコントロールするお話し:マルクス、ケインズ
第6回 再び「経済自由化」のお話し:フリードマン、TPP
「日本経済の問題」編
第7回 インフレとデフレのお話し:アベノミクスとインフレターゲット
第8回 財政政策と金融政策と国債の話し
第9回 日本が直面する諸問題:円高と産業空洞化&年金と国債と消費税
「世界経済の問題」編
第10回 世界経済の重要性:途上国援助について
第11回 豊かな国と貧しい国:制度設計の重要性

バナースペース

Koji KAWABATA

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Kobe 657-8501, Japan

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