実践的研究に挑戦することで、人々の学びの場面を通して社会的課題を深く知るとともに、その課題解決に貢献できる力を育むことをめざします。そのために、授業や共同的な実践を通して、知識やスキルだけでなく、観察力や対話力、共鳴力など、次のような人間力の向上をサポートします。
・他者を理解するスキル、他者の置かれている状況やその背景を理解するスキル(観察力、想像力、対話力、洞察力)
・省察的実践力(実践を通して考える力、省察を通して実践を向上させる力、省察を通して自己理解を高める力)
・他者に対して開かれた身体の共鳴力、他者を歓待する力、他者と共に楽しむ力
・省察的実践を通した研究を行う実践的研究能力
・意味のある社会的使命を自らに課して、ライフワークを持つことができる仕事人。
・人と人をつなぐ専門性を生かし、インクルーシヴな社会づくりに貢献する省察的実践者。
・世代の繋がりを深く感受し、自分の世代の責任を視野に入れた生き方のできる地球市民。
1 理念
社会にある排除や暴力、貧困、人権剥奪の現象に対する感性を研ぎ澄ませ、そうした現象を乗り越えてインクルーシヴな社会に向かう実践のあり方をめぐって討議します。
2 各人の研究テーマについて
障害の問題を中心的な切り口としますが、さまざまな社会的な問題を縦断的に検討することをめざします。したがって、参加する学生は、障害の問題にコミットしていないからといって引け目を感じる必要はありません。
ただし、どのような問題と対峙するにしても、問題の中心にいる人たちの立場や内面に迫ろうとする意思を大切にしてほしいと思います。事実を押さえ整理することも重要であるが、それにも増して、その事実の中で生きている人間に焦点を当てることを重視してください。そのことを通して、研究対象者と自分自身との関係のあり方について、ひいては自分自身のあり方について省察することを意識してください。
また、研究テーマの設定や追究に際して道標になるのは、文献を読み込むことであります。どのような文献を読むかという選択も重要である。基礎的な文献として津田が考えているものの一部をホームページで紹介しています。同様に、津田がこれまで執筆した文章をめぐる対話や討議も手助けになるかもしれません。これもホームページで一部を紹介しているので参考にしてください。
3 研究方法について
各人の研究テーマや目的に即した研究方法を試行錯誤して探してください。ただし次の点を意識してください。
・極端な客観主義、極端な主観主義に対する批判意識をもつこと。
・先行研究に最大限の敬意を払い、同時にそれらを批判的に検討すること。
・アンケートやインタビューや観察などによって表面的に分かることについてはしっかり押さえつつ、その奧にあること、背後にあることに対して常に問いを持ち続けること。
・アンケートやインタビューや観察などで得られたデータは、そのデータの背景や文脈を大切に扱うこと。
・既成の研究方法論から真摯に学び、積極的に自ら試行してみると同時に、その方法論のもつ固有の課題をよく理解し、研究目的やフィールドの実態にあわせて応用していく力を養うこと。
4 実践との関係について
共同的な実践に対話的に取り組むことは、津田研究室の教育理念の実現にとって重要な要素です。ゼミ生のみなさんには、「あーち」などの取り組みに積極的に参加することを求めます。ただし、実践との距離の取り方は自由です。それぞれ実践との距離の取り方について試行錯誤してください。現場の人たちとのかかわり方、実践現場での自分の存在のあり方、現場で得たデータの扱い方など、倫理面からあるいは研究方法の側面から、深く考えてください。
5 ゼミ運営の方針
可能な限り毎週定時のゼミを実施します。卒論・修論・博論それぞれの進捗に応じて、各人がぶつかっている課題を取り上げます。教員による指導という側面もありますが、みんなで考える場でもあります。積極的に参加してください。オンラインも活用します。
6 その他
・韓国ナザレ大学と10年以上関係を深めてきています。韓国社会を深く知ったり、日韓比較の観点をもったりするのに適した条件があります。韓国との関係に関心のある学生はお話を聞かせてください。
・韓国ナザレ大学、ソウル市立知的障害人福祉館を訪問するスタディツアー、これら両機関との交流シンポジウムともに、次回企画は2019年度になります。
・アメリカのミネソタ州にも、津田研究室がお世話になっている教育・研究のフィールドがあります。隔年でのスタディツアーを計画しており、次回企画は今年度夏あるいは秋になります。関心のある学生はお尋ねください。