インクルーシヴな社会をめざす実践的研究

〈CONTENTS

研究の目的と方法

イベント等のご案内

この研究に関連する出版物

実施中の実践的研究

これまで実施してきた実践的研究


【研究の目的と方法】

 この研究は、インクルーシヴな社会をめざす実践の方法と過程をモデル提示することを目的にしています。

 インクルーシヴな社会というのは、誰もが排除されずに共に生きる社会のことです。しかし、社会的排除は、私たちの生活の合理化と並行して起こってきました。それゆえ、インクルーシヴな社会をつくろうとする実践は、矛盾と葛藤に満ちたものにならざるをえません。矛盾や葛藤をどのように扱いながら、私たち個々人の生き方から社会システムに至るまでの壮大な変化を引き起こすことができるのだろうか、ということが基本的な問いです。

 この問いを追究するために、私たちが生きる現場に、共に活動する人たちと考え学びあう実践的な研究のフィールドをつくっています。「のびやかスペースあーち」、よるあーちカフェ「アゴラ」,、学ぶ楽しみ発見プログラム(KUPI)障害者の生涯学習兵庫県コンソーシアム神戸大学付属特別支援学校などが私たちのフィールドです。これらのフィールドで、日々起こる矛盾や葛藤にどう向き合うかということについて、概念や理念に関する研究、実践方法や過程に関する研究を主軸に、研究方法論にまで至る幅広い実践的研究を行っています。

 なお、私たちのいう実践的研究とは、単に実践に役に立つ研究というだけのことを意味していません。実践に内在する課題を実践の内と外の双方から複眼的に捉えることをめざしています。実践の内側から課題を把握するために、私たちは研究者である前に理念を現実化しようとするとともに、日々の細々としたことに翻弄される実践者であろうとしています。また、実践の外からの課題の把捉を保障するために、韓国ナザレ大学をはじめとした海外の実践的研究とのネットワーク、国内の優れた実践との情報交換やディスカッションを通して、研究を遂行しています。



【全国の障害者文化芸術活動の情報

 2020年8月までに収集した情報です。障害者の表現活動に焦点を当てた継続的な実践を集めました。なお、教室としてのみ実施しているもの、事業所の余暇活動として実施してるものは省いてあります。
エンターテインメント(38件)、音楽(25件)、和太鼓伝統芸能(36件)、人形劇(5件)、演劇(22件)、ダンス(16件)、車いすダンス(52件)、サインミュージック(8件)、支援センター(38件)、合計のべ240件の情報です。
 集めた情報を素材として、自律的な収集・発信につながる媒体となることを目的に、アプリを作成しました。ご活用ください。
 アプリURLとQRコード  https://jubilant-giants-6314.glideapp.io/


【イベント等のご案内】


2022年度日韓交流セミナー「障害者の文化芸術活動と生涯学習」(終了)

日時: 2022年12月10日(土) 13:00〜17:15

場所: 神戸大学百年記念館六甲ホール

参加者  関心のある方であれば、どなたでも(市民、当事者、実践家、研究者など)

参加費: 無料
参加申し込みは次のフォームからお願いします。  https://forms.gle/cLKDphgnRZFEXvHq5

 

13:00 開会       あいさつ・総合司会 津田英二(神戸大学)

13:15 劇団ラハプ舞台パフォーマンス(韓国)

13:45 舞台パフォーマンスをめぐる対話(演者たちの学び)韓国当事者+金在恩(社団法人ラハプ)

14:05 東はりまチャンゴサークル舞台パフォーマンス(日本)

14:30 舞台パフォーマンスをめぐる対話(社会に与える学び)新川修平(片山工房)+近野悦子(東はりまチャンゴサークル)

15:00 休憩と片山工房作品鑑賞タイム

15:30 パネルディスカッション 「表現することと学ぶこと」 

    〈登壇者〉 禹周亨(韓国ナザレ大学)、赤木和重(神戸大学)+佐藤知子(神戸大学附属特別支援学校)

                             コメンテイター:大田美佐子(神戸大学)

17:00 休憩

17:15 ライブ 多田駿介、あんだんてKOBE(日本)、劇団ラハプ(韓国)

18:15 終了(19時までに撤収)

 

資料『障害者の文化芸術活動と生涯学習』(PDF)



オンライン国際シンポジウム「障害のある芸術家の活動と生活」
(終了)  
チラシ(pdf) へのリンク

障害者の文化芸術活動は、各国で地道に行なわれており、徐々に注目を集めるようになってきました。今回のシンポジウムは、日本、韓国、イギリス、イスラエルの活動に注目し、相互に実践を伝え合う形をとることにしました。各国の活動動画のオンライン公開とあわせて、世界の動向を実践レベルから捉える機会にしたいと思います。

日時: 2021年12月18日(土) 10:00〜18:00

場所: zoom

参加者  関心のある方であれば、どなたでも(市民、当事者、実践家、研究者など)

参加費: 無料
参加申し込みは次のフォームからお願いします。https://forms.gle/63GQ2v7UEALLPUXf6


当日時間までにご登録いただいたメールアドレスに、zoomのURLをお送りします。

時間 内容 進行
第1部 10:00-10:20 開会 禹周亨、津田英二
10:20-10:50 イギリスの障害者芸術政策の現況
障害者芸術団体運営事例
Jeff Rowlands
Tim Wheeler/Mind Gap
10:50-11:20 イギリスの障害のある芸術家の韓国進出
質疑応答(10分)
朴ユンジョ/イギリス文化院
11:20-11:50 イスラエルの共同体と芸術活動
クパールサイト共同体
李サンフン/イェールト
12:00-13:30 休憩
第2部 13:30-14:00 日本の障害者芸術家の現況 未定
14:00-14:30 韓国の視聴覚障害の事例 李ジュンウ/江南大学
14:30-15:00 日本の障害者芸術のための未来戦略 大塚千枝/厚生労働省
15:00-15:30 韓国の障害者芸術のための支援政策の方向性 李ジョンジュ
第3部 15:30-16:00 質疑応答と休憩
16:00-16:30 事例発表と交流(日本・あんだんてKOBE)
16:30-17:00 事例発表と交流(韓国・ドリームウィンドアンサンブル)
17:00-17:30 事例発表と交流(日本・東播磨チャンゴ)
17:30-18:00 事例発表と交流(韓国・オルス社会的協同組合)
18:00 閉会



【この研究に関連する出版物】

〈本〉

津田英二「支えあう人間」ヒューマン・コミュニティ創成研究センター編『人間像の発明』ドメス出版、2006年10月、pp.287-320

津田英二監修、神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター編『インクルーシヴな社会をめざして』かもがわ出版、2011年

津田英二『物語としての発達/文化を介した教育』生活書院、2012年10月

津田英二「障害者雇用の展開と雇用以前の問題」日本社会教育学会編『労働の場のエンパワメント』(日本の社会教育第57集)東洋館出版社、2013年9月、pp.44-55

津田英二「排除されるいのち、共感するいのち」日本社会教育学会60周年記念出版部会編『希望への社会教育』東洋館出版社、2013年9月、pp.48-64

津田英二「「場の力」を明らかにする」日本福祉教育ボランティア学習学会20周年記念リーディングス編集委員会編『福祉教育・ボランティア学習の新機軸』大学図書出版、2014年10月、pp.278-290

津田英二・久井英輔・鈴木眞理編著『社会教育・生涯学習研究のすすめ』学文社、2015年

Eiji Tsuda and Takako Ueto, The Pradox of Intimacy in Japan: Shifting Objects of Affection, in Rohhss Chapman, Sue Ledger, Louise Townson with Daniel Docherty (ed.), Sexuality and Relationships in the Lives of People with Intellectual Disabilities, November 2014, Jessica Kingsley Pub, pp.99-107

Eiji Tsuda, Community-based after-school care programs in Japan: potential of nonformal education for children and residents, in Kaori H. Okano (ed.), Nonformal Education and Civil Society in Japan, 2016, Routledge, pp.53-70


〈論文〉

津田英二「地域におけるインクルージヴな学びの場づくりの可能性と課題」『日本福祉教育・ボランティア学習学会年報』Vol.11、2006年11月、pp.63-82

清水伸子、津田英二「インフォーマルな形態での福祉教育実践におけるデータに基づく評価枠組み形成モデル〜個人が体験する変容を生み出す〈場の力〉への着目〜」『日本福祉教育・ボランティア学習学会年報』Vol.12、2007年11月、pp.94-115

冨永恭世、清水伸子、冨永貴公、小林洋司、木下克之、阿波美織、高橋眞琴、川上慶子、榊原久直、清水愛孔子、津田英二「インクルーシヴな社会に向けた教育の概念と課題」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第2巻第1号、2008年10月、pp.159-171

津田英二「インクルーシヴな社会をどう実現できるか」『研究紀要』(兵庫県人権啓発協会)第11輯、2010年3月、pp.29-43

劉小賀、榊原久直、中村美智子、江角彩、高橋眞琴、盛敏、清水伸子、津田英二「インクルーシヴな社会をめざす実践における葛藤の積極的な意味〜自閉症児のストレス表出に対する他者の反応をめぐる考察〜」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第4巻2号、2011年3月、pp.39-48

津田英二、伊藤篤、寺村ゆかの、井出良徳「「子育て支援を契機とした共生のまちづくり」実践の意義と課題〜神戸大学サテライト「のびやかスペースあーち」利用実態調査からの考察」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第5巻2号、2012年3月、pp.173-185

津田英二「「場の力」を明らかにする」『日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要』Vol.19、2012年9月、pp.34-43

津田英二「障害者雇用の展開と雇用以前の問題」日本社会教育学会編『労働の場のエンパワメント』(日本の社会教育第57集)東洋館出版社、2013年9月、pp.44-55

津田英二「語りが意味をもつ場の創出へ:障害の問題の社会的共有に向けて」『年報・教育の境界』第11号、2014年3月、pp.61-75

近藤龍彰、柴川弘子、森本彩、赤木和重、津田英二「知的障害のある青年が大学生になることに関する一考察:韓国ナザレ大学リハビリテーション自立学科の調査を通して」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第7巻1号、2013年9月、pp.135-152

津田英二「民間学童保育所における子どもとおとなの学び:関与観察に基づくケーススタディ」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第7巻2号、2014年3月、pp.113-124

津田英二「福祉教育・ボランティア学習におけるインクルージョン理念の含意」『日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要』Vol.23、2014年7月、pp.27-35

津田英二「協働的な自律支援のコミュニティ形成に向けて」『生涯学習・社会教育研究ジャーナル』第7号、2014年3月、pp.81-97

清水伸子、高橋眞琴、津田英二「インクルーシヴな社会をめざす実践におけるインフォーマルラーニングの重層性」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第8巻1号、2014年9月、pp.165-179

村田観弥、近藤龍彰、張主善、盛敏、柴川弘子、金鐘敏、赤木和重、津田, 英二「学生間の相互性に着目したインクルーシブ教育のケーススタディ: 韓国ナザレ大学におけるドウミ制度及び寄宿舎共同生活」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第9巻1号、2015年9月、pp.29-43

津田英二「研究主体と研究対象との多元的関係性の意義」日本社会教育学会編『社会教育研究における方法論』(日本の社会教育第60集)東洋館出版社、2016年9月、pp.124-135

伊藤篤、津田英二、寺村ゆかの、稲本恵子「「子育て支援を契機とした共生のまちづくり」実践の意義と課題〜「のびやかスペースあーち」利用実態調査単純集計からの考察(2)〜」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第10巻1号、2016年9月、pp.93-108

津田英二「格差社会におけるインフォーマルな相互支援の意味:「開かれた公共性」に向けた社会教育の課題」『生涯学習・社会教育ジャーナル』第10号、2017年3月、pp.101-116

津田英二「「障害者の基礎教育保障」は「共生保障」になりえるか」『基礎教育保障学研究』創刊号、2017年8月、pp.36-48

金丸彰寿、大山正博、川手さえ子、張主善、和田仁美、岩崎陽、塩田愛里、高寅慶、金明淑、金英淑、金栄普A津田英二「障害学生の「学び」から見るインクルーシヴな大学教育の意義と課題〜韓国ナザレ大学卒業生のインタビュー調査を踏まえて〜」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第11巻1号、2017年9月、pp.19-36

津田英二「都市型中間施設の効果と課題〜「のびやかスペースあーち」10周年調査の質的データ分析から〜」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第11巻1号、2017年9月、PP.111-119

津田英二「障害者の生涯学習推進政策の概念枠組みと未来社会に関する素描」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第12巻2号、2019年3月、pp.77-89

津田英二、辻合悠「「元気の出る調査キット」作成とその背景〜脆弱性をもつ子どもを見守るボランタリーな組織の形成過程に関する実践的研究〜」津田英二編『子どもの居場所づくり「元気の出る調査」キット』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2019年9月


〈報告書・その他〉

津田英二「地域と連携した大学の新たな展開」『月刊社会教育』No.601、2005年11月、pp.66-71

津田英二「地域と大学との協働による社会的ネットワークの創成」『マナビィ』No.56、2006年2月、pp.20-23

『アートと学び』神戸大学大学院総合人間科学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2006年3月

津田英二「大学発・子育て支援を契機とした共生のまちづくり拠点支援」『月刊公民館』No.594、2006年11月、pp.41-45

『インクルーシヴな地域社会をめざす拠点づくり』神戸大学大学院総合人間科学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2007年2月

『当事者性を育てる〜インクルーシヴな社会に向かう日韓の実践』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2008年2月

『インクルーシヴな社会をめざす実践』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2009年2月

『共に生きる実践の足下を固める』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2009年12月
津田英二「相手にとっての「普通」に耳を澄ませる」『ひょうごの人権教育』Vol.155、2010年7月、pp.5-6

『インクルーシヴな地域社会創成のための都市型中間施設』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2011年3月

『「みのり」プロジェクト〜大学内のカフェ「アゴラ」を活用した知的障がいのある成人の実習と大学生の教育とを組み合わせたキャリア教育プログラム〜』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2011年3月

『発達障がいをめぐる実践と研究の現在』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2012年2月

津田英二「自分らしく生きることと労働〜障がい者就労支援のジレンマ〜」『日本社会教育学会紀要』No.48、2012年8月、pp.43-45

『発達障害者の学習支援』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2013年12月

津田英二「あなたと私の間にある学びをどう描くか」『社会教育学研究』50(1)、2014年3月、pp.95-97

津田英二「地域の中で共に育つ・育てる環境をつくる」『ふくしと教育』17、2014年8月、pp.16-19

『人と情報のプラットフォーム』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2015年3月

『発達障害者が大学で学ぶということ』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2015年12月

津田英二「合理的配慮は福祉教育・ボランティア学習を生み出すか?」『ふくしと教育』第23号、2017年8月、pp.42-46

津田英二「社会教育と社会福祉」『月刊社会教育』No.743、2018年4月、pp.12-15

津田英二「障害者の生涯学習支援推進の考え方」『社会教育』No.870、2018年12月、pp.6-12

津田英二編『子どもの居場所づくり「元気の出る調査」キット』神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2019年9月

津田英二「公民館は障害者の学びに貢献してきたか」『月刊公民館』No.749、2019年10月、pp.12-15



【実施中の実践的研究】

●国立大学の教育資源を知的障害者に開放していく方策に関する実践研究

研究期間: 2019年度〜2022年度(予定)(文部科学省受託研究)

趣旨:

神戸大学人間発達環境学研究科及び国際人間科学部の教育資源を、知的障害者に開放していくことを即時的な事業目的とする。神戸大学人間発達環境学研究科には、“子育て支援をきっかけにした共に生きるまちづくり”をめざす、地域社会に開かれたサテライト施設「のびやかスペースあーち」がある。この施設は、インフォーマル教育の実践的研究・教育の場として機能しており、すでに障害児・者も多くここで学んでいる。また、障害者の就労・実習の場としても機能しているカフェ「アゴラ」を研究科内で直接運営している。国際人間科学部のフォーマル教育資源だけでなく、これらのインフォーマル教育資源も活用したプログラム開発を行う。

また、本事業は、汎用可能なプログラムモデルの作成、スムーズな運営のための組織化を試行し、知見を得ていくことを実践研究の目的とする。そのために、教育委員会・特別支援学校と連携し、特別支援教育の実施によって培われた経験や情報を生かす。同時に、教育委員会における障害者の生涯学習推進の動きとの相互作用を創出することも視野に入れる。

関連ページ(学ぶ楽しみ発見プログラムホームページ

●障害者の文化芸術活動のエンパワメントに関する実践的研究

全国の障害者文化芸術活動の情報
 2020年8月までに収集した情報です。障害者の表現活動に焦点を当てた継続的な実践を集めました。なお、教室としてのみ実施しているもの、事業所の余暇活動として実施してるものは省いてあります。
エンターテインメント(38件)、音楽(25件)、和太鼓伝統芸能(36件)、人形劇(5件)、演劇(22件)、ダンス(16件)、車いすダンス(52件)、サインミュージック(8件)、支援センター(38件)、合計のべ240件の情報です。
 集めた情報を素材として、自律的な収集・発信につながる媒体となることを目的に、アプリを作成しました。ご活用ください。
 アプリURLとQRコード  https://jubilant-giants-6314.glideapp.io/



障害者の文化芸術活動への意識に関する調査
 この調査は、障害者の文化芸術に対する市民の意識を知ることで、障害者の文化芸術活動振興の方策や、障害者の文化芸術活動を振興することの意義についての考察を深めることを目的として行なったものである。
 調査項目はフェイスシートの他に以下のカテゴリーの設問を置いた。回答者自身が行なっている文化芸術活動や文化行動に関する質問、回答者の文化芸術に対する考え方に関する質問、障害者の文化芸術についての意識や経験に関する質問、障害者の文化芸術についての考え方に関する質問、障害の問題に対する考え方に関する質問、障害の問題についての知識を問う質問である。
 また、これらの設問を検討するにあたって、障害者への理解と文化芸術への理解が障害者の文化芸術に対する理解を支えていると考え、次のような仮説を念頭に置いた。
・文化芸術に対する理解が深いほど、障害者の文化芸術活動への理解も深い
・障害の問題への理解が深いほど、障害者の文化芸術活動への理解も深い
・障害の個人モデルに立つ人は、障害者の文化芸術活動への関心が相対的に低い
・文化芸術活動の伝統重視的態度よりも、コミュニケーション機能重視の態度が高いほうが、障害者の文化芸術活動への理解が深い
・社会的諸課題と文化芸術活動との関連への意識が高いこと、障害の社会モデルの観点をもつこと、障害者の文化芸術活動への理解が深いこととの間に正の相関がある
 ただし、本調査は仮説検証を目的とはしていない。上の仮説は、データによって確かめることになるとはいえ、そのこと自体にはあまり意義を見いだそうとは考えない。それよりも、仮説に基づいて得られた調査結果のデータを元にして考察を進めることに意味があると考える。そのため、特にオリジナリティが高いと考えられる分析結果を除き、主要で意味のあるデータ及び分析結果を報告書の形で公開することにした。
 調査は、2021216日〜221日に、株式会社マクロミルに委託したインターネットリサーチとして実施した。被調査者は株式会社マクロミルのモニタ会員であり、男女比と年齢構成を統制した1644名の有効回答を得た。

 調査結果報告書(PDFファイル)


【これまで実施してきた実践的研究

●脆弱性をもつ子どもを見守るボランタリーな組織の形成過程に関する実践的研究研究会

研究期間: 2017年10月〜2019年9月(公益財団法人日本生命財団受託研究)

趣旨

 本研究は、研究代表者らが中心になって実施している「のびやかスペースあーち」における「子どもの居場所づくり」事業をフィールドの拠点とし、脆弱性をもつ子どもへの支援に焦点を当てた全国のボランタリーな組織の事例を参照しながら進める。「のびやかスペースあーち」は神戸大学のサテライト施設であり、神戸市との連携で市民に開かれた施設として2005年から運営してきている。「子どもの居場所づくり」事業は、毎週金曜日の夕方から夜に実施している、学習支援、子ども食堂、遊び場、交流活動であり、教職員や学生の他、一般ボランティア、地域団体、脆弱性をもった子どもや青年、その家族などが集まり、相互支援のコミュニティの形成をめざしている。

 具体的には、次のように研究を進めていく。

1) 「子どもの居場所づくり」事業参加者の中から、実践評価に関心のある人を募集し、参加型研究チームを形成する。このチームにおいて、「子どもの居場所づくり」事業が、脆弱性のある子ども、青年や家族らに対してどのような影響を及ぼしているか、相互支援のコミュニティの形成のためにどのような実践の質的向上が必要であるか、といった関心を共有し、他の実践からも学ぼうとする意欲を喚起する。継続的に研究会を実施し、最終的に実践評価のモデルを作成、試行する。

2) 「合理的配慮からの学び」の観点から、脆弱性をもつ子どもを支援するボランタリーな組織の形成・発展を検討する公開研究会を実施する。この研究会には、日本福祉教育・ボランティア学習学会の協力により、福祉教育実践や障害者支援などを専門とした研究者や実践家ら招聘し、また1)の参加型研究チームのメンバーも参加する。それにより、1)の研究の深化をめざすとともに、日本福祉教育・ボランティア学習学会における子どもの貧困にかかわる研究の活性化に貢献し、本研究の関心や研究成果に広がりを持たせる。

報告書:
津田英二編『子どもの居場所づくり「元気の出る調査」キット』(神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、2019年9月)としてまとめました。


【シンポジウム】

●障害学生の「学び」から見るインクルーシヴな大学教育の意義と課題 

 「障害者差別解消法」成立を契機に、大学における障害学生支援の議論と実践に注目が集まっています。そんな中、神戸大学大学院人間発達環境学研究科は、障害学生支援の実績を積み重ねてきた韓国ナザレ大学と、障害のある学生の視点から大学教育を捉え直す共同研究を実施してきています。その成果のひとつとして、「障害学生の「学び」から見るインクルーシヴな大学教育の意義と課題」というタイトルの論文を日韓で共同執筆しました。この共同執筆論文は、韓国の障害学生が大学に受け入れられていった過程を、大学教育の変遷だけでなく当事者運動の視点などを交えて多角的に捉える試みも含んでいます。今回のセミナーは、その成果を土台として、さらに検討を進めるものです。登壇者は、この共同研究に携わった日韓の研究者です。

日 時  2017年12月23日(土)10:00〜17:00

場 所  神戸大学発達科学部大会議室

参加費  無料

話題提供者

 金 英淑 (韓国ナザレ大学)

 ナム・ボラム (韓国ナザレ大学)

 禹 周亨(韓国ナザレ大学)

 金丸 彰寿 (神戸大学)

 大山 正博 (神戸大学)

 稲原美苗(神戸大学)

 河合 翔(日本学術振興会)


●2015年度学術ウィークス・日韓学術交流セミナー「知的障害者が大学で学ぶということ〜多様性を生み出す現場の葛藤から考える〜」 

「障害者差別解消法」成立を契機に、大学における障害学生支援の議論と実践に注目が集まっています。神戸大学でも、この秋から障害学生支援コーディネイターが配置され、支援システム構築の一歩を踏み出しました。
 今回の企画では、障害のある人たちが大学で学ぶ機会にアクセスすることが、大学教育全体にポジティブな影響を与える可能性を探ります。そもそも大学を含む障害学生支援の現場においては、これまで可視化されにくかった諸課題が生起しています。その課題を探ることで、様々な人間の多様性を豊かにする大学教育のあり方を考えていきたいという発想から、本セミナーは企画されました。
 こうした可能性を探るために、発達障害学生との対話を大切にしながら支援を展開している、実績のある日韓の大学の取り組み、及びその大学で学んだ発達障害学生の経験に焦点を当てます。

日 時  2015年12月23日(土)10時〜17時
会 場  神戸大学発達科学部 (神戸市灘区鶴甲3-11)六甲道駅、阪急六甲駅、阪神御影駅より市バス36番系統「鶴甲団地行き」に乗り、「神大発達科学部前」下車すぐ
参加者  関心のある方であれば、どなたでも(市民、当事者、実践家、研究者など)
参加料  無料

話題提供者

 桶谷文哲 (富山大学学生支援センター)

 金 鐘敏 (韓国ナザレ大学自立統合研究所)

 上村 明 (大阪教育大学総務企画課)

 ジョン・ドダム/パク・セウォン(韓国ナザレ大学の発達障害学生)

 金丸彰寿/張主善 (神戸大学人間発達環境学研究科)

コメンテーター

 文 龍洙 (ソウル市立知的障碍人福祉館)

 盛敏/大山正博/近藤龍彰/深川育美(神戸大学人間発達環境学研究科)

コーディネーター

 津田英二(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)


【シンポジウム】

●2013年度日韓交流学術シンポジウム「発達障害者への学習支援」 

日 時  2013年12月21日(土)10:00〜17:00

場 所  神戸大学発達科学部大会議室

参加者  関心のある方であれば、どなたでも(市民、当事者、実践家、研究者など)

参加料  無料

申込み  Eメールにて。1月31日締めきり(お名前、ご所属、連絡先を明記してください)

プログラム

1) 発達障害者への学習支援を検討する意味

    報告者 津田英二(神戸大学人間発達環境学研究科)

2) 日本の発達障害青年に対する学習支援の方法と課題

    報告者 河南 勝(エコールKOBE)

3) 発達障害学生のための地域連携プログラム

    報告者 文 龍洙(ソウル市立知的障害者福祉館館長)

4) 韓国ナザレ大学における発達障害学生支援の方法と課題

   報告者 金 鐘忍(韓国ナザレ大学リハビリテーション自立学科長)

5) 韓国ナザレ大学における発達障害学生の適応と進路

    報告者 金 明子(韓国ナザレ大学大学院博士課程)

 6) 発達障害者への学習支援の理論構築に向けて

    報告者 赤木和重(神戸大学人間発達環境学研究科)

7) 学生間研究交流(英語での討議)

対象者  研究者、大学院生、大学生、一般

主 催  神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター

趣 旨

 OECDの2012年の統計によると、韓国の大学進学率は71%、日本は51%だという。両国とも少子化と国際化の波を強く受ける中で、大学間の競争力強化が重要課題となっており、学生にしっかりした力を身につけさせる教育のあり方が、今まで以上に問われるようになってきている。また近年、両国とも発達障害者に対する関心が社会的に高まりをみせており、支援制度も徐々に整いつつある。ことさら発達障害者の高校卒業後の学習機会保障について、日韓が共有する課題となっている。

 2008年から神戸大学と韓国ナザレ大学との間で毎年交互に行っている学術交流において、発達障害者支援をテーマとするのは今年で3回目となる。今回は高等学校を卒業した発達障害者に対する学習支援のあり方について検討し、相互理解を深める。

 韓国ナザレ大学は、障害学生の受け入れを積極的に行い、韓国随一の障害学生支援を展開し高い評価を受けている。特に知的障害学生、発達障害学生のための特別な学科(リハビリテーション自立学科)が2009年度に開設され、試行錯誤が繰り返されている。世界でも類を見ない取り組みとして注目される。

 日本でも大学における発達障害学生への学習支援の積み重ねはあるが、正規カリキュラムとしての検討される基盤はほとんどない。大学が実施する非正規のプログラムや民間による支援が先行している。日本の大学における発達障害学生支援の実態と、民間団体による発達障害者への学習支援の展開について理解を深める機会としたい。

 この企画において発達障害の語を、知的障害を伴うものも含み広義で用いるものとする。また、学習支援の語は、学校教育のカリキュラムを基準とした支援ばかりでなく、実際生活に即した学習への支援を含み広義で用いるものとする。発達障害者への学習支援をめぐるテーマは、発達障害者の権利保障という側面を中心とするが、そればかりでなくメインストリームの社会に対する課題提起という側面も重要な要素だと考える。


【シンポジウム】

●日韓交流実践&研究教育交流集会「発達障がいをめぐる実践と研究の現在」 

日時 2009年12月23日(水・祝)・24日(木)

場所 神戸大学百年記念館(23日)、発達科学部大会議室(24日)

【23日午前】六甲ホール 9:30〜11:30

セッション1  重度重複障害のある人たちの「本人中心」の学習

 報告1  パク ウンジュ(ソウル市立知的障害人福祉館)

 報告2  高橋眞琴(宝塚養護学校教員)

 コメント 植戸貴子(神戸女子大学)

 司会   高橋 爾(日本福祉教育・ボランティア学習学会会員)

【23日午後】六甲ホール 13:00〜17:00

セッション2  東アジアのformal careとinformal care

 報告   岩橋誠治(たこの木クラブ)

 指定討論 新崎国広(大阪教育大学)

 指定討論 ウ ジュヒョン(韓国ナザレ大学)

 司会   津田英二(神戸大学)

 交流会

【24日午前】発達科学部大会議室 9:30〜12:00

セッション3  大学への障害者受け入れと学生の反応

 報告1  ユ エラン(韓国ナザレ大学)

 報告2  津田英二・泊由布紀(神戸大学)

 指定討論 藤井克美(日本福祉大学)

 司会   朴木佳緒留(神戸大学)

セミナー開催の背景と趣旨

 神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター障害共生支援部門では、2005年度以降実践的研究に取り組んできました。子育て支援をきっかけにした共生のまちづくりをめざすサテライト施設「のびやかスペースあーち」での事業、知的障害のある人たちと学生が相互に関わりながらキャリア開発を行う「みのり」と呼ばれる学内での事業、学童保育事業を中心にインクルーシヴな地域をめざす拠点として設置された「つむぎ」の3カ所を足場に、地域で生きる人たちの息づかいに根ざして、インクルーシヴな社会を構想しようとしてきました。

 その中で、2006年頃から、障害のある学生をたくさん受け入れている韓国ナザレ大学、及び韓国の知的障害者福祉のリーダー的立場にあるソウル市立知的障害人福祉館と、相互の実践的研究に関心をもち、恒常的な関わりをもつようになりました。

 実践的研究の中心テーマは、インクルーシヴな社会に向けた実践を支える理論の構築です。実践に即して考える研究者や実践家が集まり、相互に学びあい高めあうことを通して、少しずつ理論が積み上げられていくことをねらっています。今回は特に「東アジアの風土」をキーワードのひとつとして、人と人との関わりに焦点を合わせます。

 インクルージョンという語も含め、多くの専門用語や概念が欧米から各地へ流れていくという傾向は、根強く残っています。インクルージョン概念は世界的に重要な提起を含んでいることは間違いありませんが、現実の社会との整合を考えたとき、外来の概念を輸入するだけではすみません。

東アジア文化圏においては、伝統的に濃密な人間関係に支えられた地域社会を度外視してインクルーシヴな社会を構想するのは困難です。日本の場合は、この地域社会の崩壊してきている中で、インクルージョン概念と向き合っています。また、障害のある人たちの地域生活という文脈で考えたとき、家族のもつ意味合いが、欧米社会とは大きく異なるということが言われてきています。家族の持つ機能への社会的な期待とその期待に応える家族とが、障害のある人たちの地域生活の根幹を支え続けているように見えます。formal careでさえ、家族によるinformal careを前提にしていたり、あるいは家族によるinformal careの延長にformal careが成り立っていたりします。

他方、地域社会での濃密な関係の中で人々が豊かな生活をめざし享受してきたという側面もあります。障害のある人たちを地域の輪の中で見守ろうとする動きは、数少ないとしても東アジア的な特徴をもつ実践として理解することができるでしょう。そうした実践は、formal careのシステム化が急がれる中で看過されてきたように思われます。formal careをシステム化していくことも重要ですが、それをささえる人々の関わりの次元について、より深く考察していく必要があるのではないでしょうか。

今回のセミナーでは、@重度重複障害のある人たちとの関わりを捉えることを通して、相互主体性を原理とする共生の像を批判的に考察し、A共に生きることを実践してきた人の生き様から学ぶことを通して、私たちの日々の生活を振り返り、B共に生きる関わりをつくる実践の場として大学の可能性と役割を探ります。

もう少しわかりやすい趣旨

 障害者福祉の領域では、世界中の人たちがヨーロッパやアメリカに追いつくことをめざしているようにみえます。確かに欧米の近代的な装いや理念は、めざすべき高みをもっているといえるでしょう。

 けれども、社会に生きる私たちの視点から人間の幸せなあり方を考えようとするとき、欧米流に生きることをめざすばかりでは良い結果をもたらすとは思えません。障害のある人たちが社会の中で当たり前に生きるということを考えるとき、当然私たちの足下を土台として考えなければならないでしょう。そして、あらゆる領域で人間の生き方の問い直しが求められている今が、まさにそのことを問題にしなければならない時代なのではないでしょうか。

 社会から排除されている人たちが、どのように社会での当たり前な生活を実現できるか、すなわち私たちは「共に生きる」実践をどのように模索することができるか、ということが大きなテーマです。
日本を含む東アジア文化圏においては、伝統的に濃密な人間関係に支えられた地域社会があります。また、家族も欧米とはずいぶん異なった成り立ちをしています。地域社会も家族も、障害のある人たちを抑圧する力を発揮することがあります。家族の充実した機能に社会が依存しているというような現状もあります。決して東アジアの地域社会や家族のあり方がそのままで、障害のある人たちの当たり前の生活を保障するものと考えることはできません。

 しかし現に、東アジアの風土を背景にして、地道に自分の生き方を模索する中で、自分たちの力で「共に生きる」実践を創り上げてきている人たちもいます。温かい人と人とのつながり、周囲の人たちのおかげで自分たちが生きることができているという生活感覚を土台として、「共に生きる」ことを選択しようとしてきた人たちから、たくさん学ぶことがあるのではないでしょうか。

 今回のセミナーでは、韓国と日本の実践者や研究者に登壇いただき、「共に生きる」とはどういうことか、「共に生きる」実践をどのように創るかといったことをご来場されるみなさんといっしょに考えていきたいと思います。


【シンポジウム】

●公開セミナー「インクルーシヴな社会をめざす実践〜都市型中間施設づくりとその困難に焦点を当てて〜」チラシ  

配付資料 本文

日 時  2009年2月14日(土)10:00-16:00

場 所  神戸大学発達科学部大会議室等

参加費  無料

申 込  お名前、ご連絡先の他、どのような方かが分かるような情報を一筆いただき、郵送、ファックス、メールでお申し込み下さい。
その際、必要な方はお弁当をお申し込みいただけます(飲み物込みで600円)。

スケジュール

10:00-12:00 全体会

 発題者
・山元美和(浜松・いっぽ)「知的障害のある人の自立生活を支える地域の開発とその困難」

・川上慶子(神戸・つむぎ)「学童保育における障害のある子どもの参加とその困難」

・大森八重子(みなと障がい者福祉事業団)「知的障害のある人の関わる喫茶での経験」

・小武内行雄(神戸大学・みのり)「大学における知的障害のある人の就労支援の意義と困難」

13:00-15:20

 分科会1(鼎談と自由討議)    分科会2(本人たちの集い)

  倉本智明(東京大学)       報告者

  三井さよ(法政大学) 竹内妙(浜松・いっぽ)

  津田英二(神戸大学)

15:30-16:00 全体会

問い合わせ・申し込み

 郵送 〒657-8501 神戸市灘区鶴甲3−11 神戸大学発達科学部 津田英二宛

 ファックス 078-803-7971         E-mail zda@kobe-u.ac.jp


●2008年度の取り組み

・「のびやかスペースあーち」の「居場所づくりプログラム」をめぐる実践的研究の継続

・神戸大学発達科学部内に新設されたカフェ「アゴラ」を主なフィールドとした、知的障害のある実習生と学生のためのキャリア教育プログラム「みのり」の実施とその評価

・任意団体「つむぎ」と連携したインクルーシヴな学童保育の実験的な取り組み

・韓国ナザレ大学との共同的な取り組み(9月に神戸でシンポジウム、1月に韓国大田市でシンポジウム)

・2月14日に公開セミナー「インクルーシヴな社会をめざす実践」


【居場所づくり研究会】

●2007年度後半

 インクルージョンに関する文献検討の他、マンチェスター大学や韓国ナザレ大学での研究交流、「たこの木クラブ」との交流などを軸に進めてきました。その後、年度末にシンポジウム開催、共同論文執筆に向けて議論を重ねています。

11月19日〜21日 マンチェスター大学訪問

12月1日 多摩市「たこの木クラブ」訪問

12月10日〜11日 韓国ナザレ大学訪問

第7回研究会 12月3日(月)6時30分〜

第8回研究会 12月17日(月)6時30分〜

第9回研究会 1月7日(月)6時30分〜

第10回研究会 1月21日(月)6時30分〜

第11回研究会 1月28日(月)6時30分〜

第12回研究会 2月4日(月)6時30分〜


【シンポジウム】

●「当事者性を育てる〜インクルーシヴな社会に向かう日韓の実践〜」チラシ  

配付資料 表紙 目次 1-12 13-14 15-33 34-36 37-39 40-51 52 53-54 55-62 63-64

 EUをはじめとした多くの国で、インクルージョンは社会政策上のキーワードとなっています。グローバリゼーションに伴う富や資源の偏在、人々の移動にともなう社会関係の切断、能力主義の徹底、自己決定や自己責任の原則といったさまざまな現代社会のもつ特徴が、大規模で深刻な社会的排除を生み出しているからです。
 今回の企画では、インクルーシヴな社会に向かおうとする日韓の実践を題材として、社会的排除を受けてきた人たち、その周囲にいる人たちが、よりよい社会を構成していく当事者であるという意識をどのように協働して形成していくことができるか、という点に焦点を当て議論します。
 深刻な社会的排除をつくりだす社会は、人と人との関係を分断し、排除される人々に対して個人の責任を問うような冷徹な社会といえます。こうした社会を個々人の連帯や協働によって変革する実践のあり方や哲学について、日韓それぞれの経験をもちより、論じ合い共感しあう場をつくることができたらと思います。

日 時 2008年2月2日(土)10時〜17時
場 所 神戸大学発達科学部B104
登壇者 金  鍾忍(韓国ナザレ大学)
    安里 芳樹(Legal Advocacy for the Defence of People with
Disabilities)
    横須賀俊司(県立広島大学)
    原田 正樹(日本福祉大学)
    李  秀貞(立教大学大学院)
    佐々木信行(ピープルファースト東京)
    尾登 悦子(ピープルファースト東京)
    朴木佳緒留(神戸大学)
    末本 誠 (神戸大学)
  松岡 広路(神戸大学)
    冨永 恭世(神戸大学)
参加自由・無料

 主催 神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター  
 参加申し込み・問い合わせ  〒657-8501 神戸市灘区鶴甲3-11  電話 078-803-7972
               FAX 078-803-7971   zda@kobe-u.ac.jp (担当:津田英二)

プ ロ グ ラ ム

午前10時〜10時30分
あいさつ・基調報告
  津田 英二(神戸大学)

午前10時30分〜12時
シンポジウム1「インクルーシヴな社会に向かう日韓共通基盤を求めて」
 韓国ナザレ大学では、特色ある大学教育の取り組みとして、300名余りのさまざまな障害のある学生を受け入れている(全学生の約6%)。これらの学生が十分に学習や学校生活を楽しむこのできる環境づくりは、教職員、障害のある学生、ない学生といった関係者の協働を不可欠としている。こうした試みの意味や生み出されてきた価値について考えてみる。
 また、韓国には福祉館という施設がある。貧困対策としてつくられた地域福祉の拠点であり、多様な社会福祉サービスの提供を行う傍ら、さまざまな住民が集う場として、それぞれの館で特色ある取り組みが展開されている。渾然一体とした福祉館の実践の実態や可能性から学ぶことで、インクルーシヴな社会に向かう実践のヒントを得ることができるのではないかと考える。
 こうした韓国の実践は、韓国固有の社会的背景に基づいて、インクルーシヴな社会の形成をめざす実践である。私たちはこれまで、欧米の社会福祉システムから多くを学びモデルをつくってきた。しかし、「当事者」「居場所」などといった英訳が困難な言葉がキーワードになったりするように、日本社会の特質や固有の課題から自生してきたモデルも出てきている。韓国も同じような状況にある。社会関係や社会哲学に共通点の多い韓国の真剣な取り組みから学ぶことで、私たちは、欧米とは相対的に異なる東アジア的特質に基づいた実践方法、実践哲学の形成を、共同してめざすことができるのではないだろうか。
 シンポジスト
  金  鍾忍(韓国ナザレ大学)
  李  秀貞(立教大学大学院)
 コメンテイター
  朴木佳緒留(神戸大学)
 司会
  原田 正樹(日本福祉大学)

午後2時〜4時45分
シンポジウム2「当事者性を育てるとはどういうことか」
 当事者という語の英訳には苦労することが多い。無理に英訳すると、個人と個人との対立が際だつニュアンスが出てしまう。日本福祉教育・ボランティア学習学会でも、当事者性をキーワードとして社会変革の方向性が議論されたが、ここでも個人と個人の対立や調整よりも、問題解決に向かう連帯が強調された。
 とはいえ、個々の社会的排除の現象が社会の問題であることに気づいてきたのは、日本においても、排除されてきた人たちの訴えや主張を通してであった。いわゆる当事者運動は、インクルーシヴな社会を構想する際に、欠かすことのできない重要な資源である。社会的に排除されてきた人たちの存在や言葉が、社会に気づきを与え、社会成員が自分たちの問題として社会的問題に取り組んでいくといったプロセスは、インクルーシヴな社会づくりの根幹部分に位置づく。
 この企画では、日本の当事者運動の現状を踏まえ、それが社会にどのようなインパクトをもたらしているか、社会への影響をどのように支援できるか、当事者運動からのインパクトによって人はどう変わりえるかといったことについて論じあう。
 シンポジスト
  安里 芳樹(LADD)
  佐々木信行・尾登悦子(ピープルファースト東京)
  冨永 恭世(神戸大学)
 コメンテイター
松岡 広路(神戸大学)
 司会
  横須賀俊司(県立広島大学)

午後4時45分〜5時
総括
  末本 誠 (神戸大学)

→以下は、シンポジウム後の主催者による感想です。

シンポジウムでは、たいへんお世話になりました。お陰様で、韓国の方たちも昨夕たいへん満足な表情で帰って行かれました。また、多くの参加者の方たちからたいへん勉強になった、またこうした機会があったら参加したいという声も聞かせていただいております。有意義なシンポジウムにするために、ご尽力いただき、ありがとうございました。

さて、今回のシンポジウムも単なるイベントではなく、これまでの実践や研究をふりかえったり、これからの実践や研究のエネルギーになっていくことを狙ったものですので、どのような成果があったのかということを、整理しておく必要があると思っています。それぞれの参加者によって収穫はまったく異なるだろうと思いますが、私なりに私の感じたことをまとめておきたいと思います。こうしてまとめておくことで、さらにここから多くの方たちとの共鳴が生まれたらとも思います。

当事者性という概念の内包について
・いわゆる「当事者主義」や「当事者運動」といったような言葉で意味づけられた「当事者」と関連づけながら、誰でもがもちえるし、もつことが期待されている、社会的課題に対する「当事者性」という概念の必要と提起は、「当事者運動」に関わってきた人たちからも一定の了解を得ることができたのではないか。
・「当事者性」概念の必要は、特定の社会的課題の理解や取り組みの社会的広がりという方向と、社会的課題の複数性をどう扱うかという方向の2つから説明しなければならないということがはっきりした。
・ひとりの人間の「当事者意識」の複数性が、問題の鍵を握っているように感じた。障害のある人が、「障害者としての当事者意識」をもっていたり育てていくということは重要だが、同時にこの時代を生きる人間として「ジェンダー問題の当事者」としての意識、「環境問題の当事者」としての意識など、多数の「当事者意識」をもちえるという点に着目することが必要ということ。シンポジウムでは、障害者問題の「当事者性」とDV問題の「当事者性」の関連づけという提示ばかりでなく、安里さんが障害者問題の「当事者性」への自覚と、社会福祉職員としての「当事者性」との矛盾、葛藤を表現していたことも、重要だったと思う。もちろん障害のある人にとって「障害者としての当事者意識」は中核を占めることが多いし必要性も高いだろうが、個人の中でそれ以外の「当事者意識」を育て、それぞれの「当事者意識」との関係を調整していくという視点から、実践を組み立てたり見ていく必要があるということか。
・「当事者性」を考える目的について、最終的には社会を個人の意識や行為の次元から変革していくというところにあることは明確だと思う。ただし、どのようなあるべき社会像を描くか、どのような新しい価値を生み出していくか、といった内容は、予め決めるようなものではないだろう。例えば、ナザレ大学で就職につなげることを命題の一つに掲げているが、安易に考えると障害のある人たちに既存の社会一般の価値に適応させることを唯一の価値として認識し、一般就労した卒業生の人数で実践評価がなされてしまう懼れを感じる。しかし、知的障害のある人たちも含めて学生たちが生活や学業をともにすることから、既存の社会的価値の枠組みから期待される成果以外の何かが生み出される可能性がある。この可能性を感じるからこそ、ナザレ大学の実践に私たちはおもしろさを予感するのではないか。つまり、どのような新しい価値、新しい社会像が生み出されるかということは、明確に予見できないし、すべきではないということ。それらは、結果として生み出されるものというように認識するものだということ。
・したがって、「当事者性」という概念は、価値の生産現場に立ち会い、そこで何が起こっているか見ていこうという、実践関与のスタンスを示しているといえる。予め、「こういう人間に育てる」という教育目標のようなものがある実践関与のスタンスとは対極にあることを意味する。
・ただし、ある問題の「当事者性」が育ち、また複数の社会的課題の「当事者性」との葛藤や調整を経験する場や関わりや働きかけは必要である。そうした場や関わりや働きかけのあり方をどのようにつくっていくかということも、実践・研究双方の課題である。

「東アジア」という枠組みについて
・結論から言えば、「東アジア」という枠組みに大きな意味を見出すことはできなかった。朴木先生が指摘したように、市民社会の創成以外のアプローチの探求ということをめざしたが、「当事者性」として議論されたことは、市民社会が想定する市民像そのものではなかったか。
・ただ、やはり日韓という枠組みで考える意味はあると直感的に思うし、共通の文化的基盤は、市民社会の枠組みを越えたおもしろさをもっているとも思う。それが何かということは、今回はまったく追究できなかった。
・ただし、韓国の福祉館のごった煮的なスタイルや、ナザレ大学の学業も生活も一緒といったスタイルに、「東アジア的なもの」を感じた。むしろ、日本側が「東アジア的なもの」を提示できなかった。原田さんと李さんで明示されたが、ごった煮的なものの意味は、実践の渦中にいる人たちにとっては意識されにくく、したがってごった煮から抜け出すために機能分化が進み、個別の権利保障がなされるシステムをめざすということが起こっている。日本でいえば、富山型デイケア、小規模多機能、それをいうなら「あーち」のゴチャゴチャ感を積極的に意味づけ述べていくことが必要といこと。
・ごちゃごちゃ感と「当事者性」の複数性とは組み合わせて論じることができると思う。

まだまだありそうですが、中心的な部分はこんなようなことかと思います。
今後、5月頃に、ソウル市内の障害者福祉館職員の研修を神戸で実施するということや、9月頃にナザレ大学で私たちの実践や研究と関連づけながら、全国規模の障害者高等教育セミナーを実施するということなどを聞いています。また、具体的な共同研究の話もありました。今後さらに関わりは深まっていくものと思われます。ぜひ、みなさまにも部分部分で結構ですので、絡んできていただけたら幸いです。

ありがとうございました。



●2007年8月30日の第2回研究会で、次のような点が合意されました。

1 前提

 科学研究費補助金(基盤B)「インクルージヴな地域社会創成のための都市型中間施設における実践の理論と方法」の一環として実施する研究会である。

2 現状

 8月7日に第1回研究会を実施し、出席者各人の問題関心を述べあった。8名であった。今回は、それぞれの問題関心が重なる部分から研究テーマ、研究目的、研究方法を見いだそうという段階にある。参加者の問題関心として出されたものは次のような多様性があった。

 ・実証性よりも考えることを大切にするような研究。

 ・世界レベルで貧困のもとにある人たちにも視野を広げた研究。

 ・インクルーシヴな環境における障害のない子どもの学び。

 ・近親者による暴力について。

 ・居場所のもつ機能。

3 研究の方向性

 ・グローバルな視点をもちながら、ローカルな実践として何ができるかを考える。

 ・インクルージョンをめざす国内外の多様な実践を視野に入れる。

 ・多様なチャンネルの対話を通して考える研究会をめざす。

 ・社会的に弱い立場におかれた人たちの人権と、その人権を擁護するための方策に焦点を当てる。

 ・社会的に弱い立場におかれた人たち自身のアクションと、相対的に抑圧する側にいる人たちの変容を引き起こす実践をターゲットにする。

4 研究目的

 インクルーシヴな社会形成をめざす実践の理念をグローバルな視点から考察する。

5 研究方法

 「あーち居場所づくり」を思考の拠点としながら、その他の多様な実践と対話を繰り返すことにより、思想を洗練させていく。
   


【シンポジウム】

●知的障害者の地域生活を支える中間施設の意義と方法に関する国際比較研究集会  

2007年2月3日(土)終日 於:神戸大学発達科学部

集会資料集をダウンロードできます。

【趣旨】

 入所施設の解体に伴って元入所者が地域で生活するための基盤づくりが各所で急務となっていたり、障害者自立支援法にみられるようにフォーマルなサービスが困難に直面するなど、知的障害のある人たちの生涯にわたる質の高い地域生活を実現するためのさまざまな戦略的な取り組みが、近年ますます求められるようになってきています。

 他方、国連の障害者権利条約の策定過程で、インクルージヴな地域社会をめざすという理念が謳われ、それの実現のためのインクルージヴな教育という理念や方法について議論が盛んになってきています。障害のある人たちに対する合理的な配慮が社会の責務とされ、その欠如を差別として扱うといった流れの中で、日本において「通常の場における援助付き共生戦略」と理解されるインクルージョン理念は、社会全体の運動として展開されなければならないものと理解されます。

 このような動向を背景として、今回の研究集会では、知的障害のある人たちの地域生活を支える「中間施設」の意義や機能に焦点を絞って議論を展開します。「中間施設」の意味する「中間」とは、フォーマルなサービスとインフォーマルな関係との中間、人やサービスを仲介し関係づけるという意味での中間、学校や職場と家族との中間、専門性professionalと素人性laymanとの中間、あらゆるセクショナリズムの枠を超えるという意味での中間など、多義的な「中間」です。人を分類し、関係を分断し、限られた関係の中で問題解決を図ろうとしてきたこれまでのシステムをさまざまな問題の根源と考え、分散した人や資源をゆるやかに結びつけることで地域社会を変容させていくという戦略的拠点として、「中間施設」を位置づけようと思います。

 「中間施設」という概念の中味は、定義的に述べるのではなく、実際に展開しているさまざまな試みから学ぶことを通して豊富にしていくものと捉えます。そこで、研究集会においては、さまざまな事例から必要に応じて生み出されてきた「中間施設」としての試みを報告してもらい、その上で、それらを国際的な動向のもとで対象化・相対化することを通して、「中間施設」概念の重要性を捉え、その理論的・方法論的課題を検討します。


【プログラム(予定)】

10:00〜10:30 あいさつ・趣旨説明

 国際研究集会の趣旨や集会に至るまでの経緯や蓄積を説明・紹介するとともに、日本における「中間施設」的な取り組みの大まかな把握や課題を述べる。(津田英二)

10:30〜11:00 報告1「あとからゆっくり」(大阪府大東市)新崎国広・高橋爾

 自立生活センターの取り組みから偶発的に生まれた、知的障害のある人たちを中心とした地域における居場所の意義や機能と、その居場所における活動の展開について報告する。

11:00〜11:30 休憩

11:30〜12:00 報告2「メインストリーム協会」(西宮市)横須賀俊司

 身体障害のある人たちの自律的な地域生活をめざす活動の中で、必要に応じて生まれてきた中間施設的機能についての分析的に紹介する。

12:00〜12:30 報告3「ゆらねっと」(仙台市)植戸貴子・司東・後藤

 知的障害のある人たちの自律的な地域生活を実現するための中間施設の試みにおける、本人たちの自発的なグループ活動と地域社会との関わりを報告する。

12:30〜14:30 昼食・交流

 昼食の歓談を利用して、参加者どうしのコミュニケーションを促進する。

14:30〜16:30 パネル・ディスカッション「国際的な視点からみた日本の現状」

パネリスト:Rohhss Chapman、文龍洙、末本誠

 イギリスのピープルファースト、韓国の福祉館、フランスのアニマシオン活動を参照しながら、知的障害のある人たちの地域生活支援の現状や課題、日本における中間施設における実践の試みを意味づけ、評価し、理論的・方法論的に検討する。

【海外からの招聘研究者】

Rohhss Chapman氏(英国・マンチェスター大学教員) 英国でも唯一の「知的障害学講座」に所属。ピープルファーストグループの支援者でもあり、オープン・ユニバーシティの「知的障害者社会史研究会」の主要メンバーとしても活躍。編著書にExploring Experiences of Advocacy by People with Learning Disabilities, Jessika Kingsley Pub., 2006など。

文 龍洙氏(韓国・ソウル市立精神薄弱人福祉館事務局長) 韓国の地域福祉の展開を支える福祉館の発展に献身的に寄与している。ソウル市の知的障害者の地域福祉に関してオピニオンリーダー的存在であり、広範なネットワークをもっている。


知的障害者の地域生活を支える中間施設の意義と方法に関する国際比較研究集会のまとめ

 今回の国際研究集会では、参加者の感想等をうかがう機会がなかったため、企画者が全日程から感じ考えたことを叙述することで、報告に代えたいと思います。

 第一に、今回もまた浜松、名古屋、三重といった遠方からの参加者があり、知的障害のある人たちの地域における居場所についてのニーズの高さや、そうしたことについて話し合う場の少なさを感じました。地域の居場所の必要性については、社会的に承認されているとは言えない中で、実践者が地域で孤立感をもつことがあるのではないかと想像されます。小規模作業所に代表されるように、住民の地道な努力によって形成されてきた居場所が、現在曲がり角に来ていることを考えると、こうした意見交換や交流の場を継続し、孤立している実践者をネットワーク化していくことが必要だと感じました。

 第二に、国際比較を方法とした集会だったわけですが、制度化の進度には国によって違いはあるものの、問題の本質は共通であるという思いを新たにしました。特にいのちへの共感、抑圧の経験という次元では、国や文化を越えて交流できること、またそうした次元での交流にこそ意味があるのではないかということを感じました。どのような制度が優越しているかということよりも、深刻な問題を前にして人間が何とかしようとさまざまなオロオロと取り組んでいるというところでの連帯にこそ、価値があるという確信が生まれました。

 第三に、知的障害のある人たちという対象設定のやむをえなさと、それゆえの問題設定の狭さという難しさを感じました。報告には、身体障害のある人たちの実践に基づくものや、外国人のエンパワーメントに即したものがありました。問題意識からして、対象者や実践方法などを限定しない実践が重要であるという点に着目しているにもかかわらず、その出発点として排除されている人たちの属性を特定し対象化することを不可欠としています。大切なことは、問題を社会から押しつけられているのは特定の人たちだけではないことを再確認し、広い視点を持ちながら足下の問題に取り組むという姿勢なのだということなのでしょう。

 第四に、実践における「当事者」の位置づけが、第二のテーマとして自然にあぶり出されてきたことにおもしろさを感じました。地域での居場所づくり実践に際して、「当事者」の参画や自己決定を中心に実践を組み立てることの重要性が、実践者の多くに実感されているのだろうと推察されます。「当事者」中心であることを軽視し、支援者の思いばかりが先行した居場所づくりは、結果的に対象者を限定して、「かれらのための実践」という形になってしまい、広がりをもたないばかりか、実践が「当事者」の社会への適応を一方的に求めるものになりかねないということなのだろうと思います。「当事者」中心の場づくりという筋を通すことで、実践の創造性を広げることができるのかもしれません。

 第五に、現代において、多様な人びとが集まり関係を形成するということが、決して自然なことではないということを確認した思いです。インフォーマルな場でロスさんから聞いた話なのですが、イギリスではボランティアをしようとする人は全員犯罪歴を警察に調査されるのだそうですし、プライバシーへの過度の配慮義務が実践に不都合を生じさせていることということもあるのだそうです。近代化が進み、制度が整うことで、「ともに生きる」ということがいっそう難しくなるのだということを改めて思い知らされました。「先進国」イギリスから多くのことを学ぼうとしたのとは逆に、反面教師として考えさせられたという経験をしました。人と人を結びつける実践の重要性が改めて確認された思いです。ロスさんが、「あーち」での居場所を見学されて「目を開かされた」と言われたのは、私たちにとって嬉しいことであるのと同時に、私たちが日々の感覚から得ている問題意識に基づいて、足下から実践を積み重ねていくことの重要性を再認識しました。

 この他にも、私自身は別室にいたのですが、知的障害のある人たちの意見交流の場において、一人暮らしをしている「当事者」の話が、知的障害のある多くの参加者に衝撃を与え、共感の輪が広がったということなどにも、集荷の意味として考えなければならないポイントが含まれていると感じます。この研究集会では、多様な問題(ストーリー)が複線的に語られた場であるので、もっといろいろな意味づけができると思います。とりあえず、私の主観的な体験として、この集会を語り報告とさせていただくことにしました。(津田英二)


インクルージョン学習会 (今年度はすべて終了)

 「のびやかスペースあーち」での「障害児者居場所づくり事業」と連動させて、インクルージョンという語の理解を深める学習会を開催します。社会的排除をどう捉えるか、社会的排除に抗する実践の理念としてソーシャルインクルージョン(社会的包摂)の試みは具体的にどうあるべきなのか、個別的なケアとインクルージョン理念との関係はどうなのか、といった論点を考えていきます。

 場所: 神戸大学発達科学部ヒューマン・コミュニティ創成研究センター、第4回のみ神戸青年学生センター(阪急六甲駅より徒歩2分)

第1回 10月14日(土)15:30-17:30ゲスト:松友了さん(全日本手をつなぐ育成会)
  松友氏は全日本手をつなぐ育成会の要職にあって、インクルージョン概念をいち早く日本に紹介されました。氏はインクルージョンを「通常の場面における、支援付きの共生戦略」と説明しています。その説明がもつ具体的な提案を、ご自身が障害のあるお子さんをもつ親の立場から、また世界の動向も背景にしながら語っていただきます。

第2回 11月6日(月)18:30-20:30ゲスト:松波めぐみさん(大阪大学大学院博士課程)
  2006年秋の国連総会で論議される「障害者の権利条約」においても、教育はインクルージブであるべきだとされています。この草案を策定する過程に立ち会った松波氏をお招きして、国々の代表者の利害対立などをリアルに伝えていただきながら、主に教育・学習におけるインクルージョンについて、その概念と動向を語っていただきます。

第3回 12月4日(月)18:30- ゲスト:末本やすみさん(居場所づくりコーディネイター)
  障害のある子どもたちの教育に長年関わってこられた末本氏が、インクルージブな場づくりをめざそうとする「居場所づくり」のコーディネイターとして、欠かすことのできない視点や方法などについて語っていただきます。

第4回 1月15日(月)18:30- ゲスト:横須賀俊司さん(県立広島大学) この回だけ、場所が神戸青年学生センターになります。
  身体障害のある人たちの運動の経験から、知的障害のある人たちのインクルージョンについて語っていただきます。横須賀さんは、西宮にあるメインストリーム協会に深く関わる社会福祉学を専門とする研究者です。


障害のある人たちが地域で当たり前に生活するためのたまり場づくりセミナー開催  

 障害のある人たちが、生涯を地域で生活していく基盤として、地域における居場所づくり、地域交流の拠点づくりに取り組む組織や個人が増えてきています。
 ただ、こうした活動は、経済的な課題をはじめ、地域との関係形成、関わるスタッフの養成、コンセプトの共有などの点で、常に困難を抱えている場合が多いようです。
 さまざまな課題について話し合い、問題意識を交流することを目的としたセミナーを開催します。障害のある人たちの生涯にわたる地域生活の基盤としてのたまり場づくりの重要性が社会的に認知され、また必要だと考えている人たちが試行する土台となる情報の集積、ネットワークの形成もできたらと思います。

日時   2006年2月12日(日) 10時30分〜16時

場所   のびやかスペースあーち(神戸市灘区神ノ木通3−6−18)

対象   関心のある実践家、障害のある本人や家族、職員、市民、学生など

参加費  無料(ただし、昼食は各自ご用意ください。)

話題提供者

 沼館園子(わっはの家)
 丹羽康子(くじらハウス)
 高橋 爾(解放の家)
 森 太輔(解放の家)

コーディネイター

 津田英二(神戸大学)
 上村和子(国立市議会)

お問い合わせ・事務局

 〒657-8501 神戸市灘区鶴甲3−11
 神戸大学大学院総合人間科学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター
 担当者(津田・濱岡)
 TEL 078-803-7972   FAX 078-803-7971
 e-mail zda@kobe-u.ac.jp
 http://www2.kobe-u.ac.jp/~zda/zda.html

話題提供していただく「たまり場」

わっはの家
 神戸市東灘区にマンションの一室を賃借し、2003年からスタート。知的障害のある人たちの親が自主的に集まって開いた勉強会から発展。親と本人たちがメンバーである「チャレンジひがしなだ」という団体が母体。メンバーどうしの親睦を深める他、宿泊訓練、料理教室、地域交流企画などに取り組んでいる。母親たちが話し合って会の方針を決めたり、共同で管理・運営に当たっている。宿泊訓練などのプログラムは、学生や地域住民、社会福祉関係職員がボランティアとして支えている。

くじらハウス
 東京都国立市で、目の前に公園と図書館がある好立地の一軒家を賃借し、1998年からスタート。学校週5日制にあたって、障害のある子どもたちの土曜日の居場所づくりに取り組む「国立五日制の会」を母体として発展。障害のある人の親とその他の市民がメンバーの「くじら雲」が運営するしている。当初から、宿泊プログラム、放課後活動、きょうだいの居場所づくりなど多彩な活動を行ってきたが、2001年にNPO法人となり、事業所として多様な地域福祉サービスの拠点ともなっている。

解放の家
 大阪府大東市で、身体障害のある人たちの自立生活の実現をめざす「あとからゆっくり」が母体。2001年にNPO法人となり、多様な支援費事業にも取り組んでいる。「解放の家」は、1986年にアパートの一室を賃借し、たまり場をつくったところ、知的障害のある人たちをはじめとした多くの地域住民が集まり居場所となった。これをモデルとして、同様のたまり場づくりを四条畷でも計画中。

コーディネイター紹介

上村和子
「くじらハウス」立ち上げに関わった市民のひとり。1999年から国立市議会の議員として、地域福祉の充実などに関して幅広く活動を展開。特に、障害者福祉に関係する施策の「当事者参画」に力を入れ、身体障害者だけでなく知的障害者や精神障害者の参画も実現している。
http://homepage2.nifty.com/uemura_kazuko/

津田英二
「くじらハウス」立ち上げに市民として関わった後、1998年から神戸大学教員。障害のある成人の学習活動に関する研究・教育を行っている。一昨年あたりから、「のびやかスペースあーち」の立ち上げ、管理運営に追われる日々。本セミナーの主幹・事務局を担当。http://www2.kobe-u.ac.jp/~zda/zda.html


障害のある人たちが地域で当たり前に生活するためのたまり場づくりセミナーのまとめ 

 近畿圏だけでなく、中京や関東から、50名以上の方々に集まっていただきました。たまり場を求めている人、たまり場をつくろうと思っている人、実際にたまり場を運営している人など、また障害のある本人や親、社会福祉協議会職員、事業所等職員、学生など、いろいろな立場の人たちが、それぞれに思いを語る会になりました。

 地域生活をしていく上でたまり場のようなものが不可欠であるという認識は強まっているものの、たまり場の性格上、社会的認知を得にくい上、公共的性格を帯びにくいため、運営面で厳しい状況に置かれるということが語られ、その上で、社会的認知を高めることの必要性、運営上のやりくりや心構えといったことが論議されました。

 こうした会は継続してほしいという声も聞かれ、今後につながる集まりになりました。

【スケジュール】

午前中、話題提供者4名から、それぞれたまり場をつくった経緯や思いを語ってもらった。午後は約2時間、午前の話に基づいて3つのグループに分かれ、参加者それぞれの立場や悩みなどを出し合い討議した。3時から「颯爽JAPAN」という団体のよさこいソーランのパフォーマンスを鑑賞して、3時30分から約30分のまとめの全体会を行った。

【出された意見など】

●利用者の属性によってたまり場になる条件が異なってくる。どこにどういうたまり場があるのかという情報を集約して欲しい。

●特定の属性に限定する場と、誰でも来ることができる場のどちらが緊急度が高いのか。障害のある人以外にも、地域には居場所のない人たちがたくさん存在する。

●知的障害のある人たちの生活の場を考えると、入所施設と地域との間をとりもつ中間施設が必要。

●放課後の子どもの居場所を確保したい。

●たまり場の必要性は高いが、必ずしも社会にその必要性が認知されているわけではないところに難しさがある。

●たまり場をつくる際に、近隣の人の理解や協力をどのように得ていくか。地域にいかに貢献していくことができるかということが重要か。

●なるべく敷居を低くすること、そのために気軽なコミュニケーションが成立している喫茶店のような場所がよい。

●たまり場は突き詰めていくとプライベートな空間であるところに意味がある。それゆえに市民に開かれた公共性とは相反する部分がでてくるのではないか。

●何かをするというのではなくて、自然に任せてなるようになっていくのがたまり場。特に仕掛ける側はやりすぎないことが大切。


【第1回研究会】

日時: 2004年9月17日(金)14:00〜

場所: わっはの家

コミュニティハウスの実践者(チャレンジ東灘の親の方たち)が6人、施設関係者が4人、大学教員2人の計12人で、初回研究会を行いました。

研究会の趣旨説明を行った後、簡単な自己紹介をし、研究計画について話し合いました。

趣旨については、コミュニティハウスの概念について議論がありました。その結果、インフォーマルなサービスを自由に展開できること、地域社会に向かって働きかけていく可能性をもっていること、さまざまな人たちが出入りできる空間であることなどの要件が議論されました。高齢者や子どものためにつくられた施設も視野に入れますが、対象者だけを抱え込むようなタイプの施設ではなく、地域の多様なニーズに応える可能性に開かれている施設をターゲットにしようという意見などもありました。

研究計画については、次のようなことが確認されました。しばらくの間の取り組みとして、第一に身近なケースである「わっはの家」を取り上げ、意義・可能性・課題を整理していくこと、第二に全国のコミュニティハウスの事例を収集していくことという二本立てで進めます。

「わっはの家」のケーススタディについては、次回研究会で、テーマごとのフリーディスカッションから始めることにしました。事例収集については、とりあえずメンバーが知っているものをファイリングしていくことから始めることにしました。


【第2回研究会】

日時: 2004年10月23日(土)10:00〜

場所: わっはの家

コミュニティハウスの実践者(チャレンジ東灘の親の方たち)が7人、施設関係者が2人、大学教員2人の計11人で、第2回研究会を行いました。

「わっはの家」の理念についての議論を中心に行いました。また、若干の事例についても資料収集ができてきたので、ファイリングして「わっはの家」に常備しました。

「わっはの家」の理念については、ワークショップ形式で論点を整理していきました。

コーディネイター(植戸&津田)が、事前に準備してあった次の7項目の「理念」を提示しました。

なお、この会では「理念」を「わっはの家をどんなハウスにしていきたいか」と表現しました。

 ・ボランティアの人たちに、たくさん関わってもらいたい

 ・社会福祉サービスの充実を行政に働きかけていきたい

 ・子どもたちの間の信頼関係を築く場にしたい

 ・親たちが気軽に助け合う場にしたい

 ・子どもたちを地域に受け入れてもらうきっかけにしたい

 ・事業所としての認可を受けたい

 ・子どもたちが地域に貢献するきっかけにしたい

これらの「理念」に加えて、参加者からの意見を出してもらいました。次のような「理念」が出てきました。

 ・いろいろな人に出入りしてもらいたい

 ・宿泊訓練の利用を増やしたい

 ・本人の親からの自立の場にしたい

 ・あたたかい雰囲気、親と子どもたちがホッとできる場にしたい

 ・ファミリーサポートの場にしたい

 ・年齢を超えて本人たちで話をする場をつくりたい

 ・地域の人たちと普段着のつきあいをできる場にしたい

 ・グループホームをつくる拠点にしたい

こうして出された合計15個の「理念」を、話し合いと多数決によって次の9個に絞りました。

 ・子どもたちの間の信頼関係を築く場にしたい

 ・親たちが気軽に助け合う場にしたい

 ・子どもたちを地域に受け入れてもらうきっかけにしたい

 ・本人の親からの自立の場にしたい

 ・あたたかい雰囲気、親と子どもたちがホッとできる場にしたい

 ・ファミリーサポートの場にしたい

 ・年齢を超えて本人たちで話をする場をつくりたい

 ・地域の人たちと普段着のつきあいをできる場にしたい

 ・グループホームをつくる拠点にしたいかい雰囲気、親と子どもたちがホッとできる場にしたい

これらの9個の「理念」に参加者個々人が「ダイヤモンドランキング」によって優先順位をつけました。

参加者各人の順位付けを発表し、気づいた点を話し合いました。次のような論点が出てきました。

 ・グループホームづくりが上位の人と自立の必要が上位の人とがいる。→目標重視か、普段の活動重視か

 ・短期的目標・中期的目標に分けた話し合いが必要である。

 ・メンバーの中での関係に意識が強くある。

 ・「メンバーのあたたかい支え合い」「本人の自立」「地域とのつながり」という3グループに分かれる。

 ・「仲間づくり」がまず大切であるが、もっといろいろな人たちに支えられている。本人たちも疲れて帰ってきたときにホッとできることが大切。そこからさまざまな活動が生まれる。その流れの中で自立が生まれてくる。

 ・もうすでにあたたかい雰囲気なので、大きな目標にはならない。

 ・「わっはの家」では、自由に活動を進めていくことができるが、活動の意味を見つけていくことが大切である。


【第3回研究会】

日時: 2004年11月26日(金)13:00〜

場所: わっはの家

コミュニティハウスの実践者(チャレンジ東灘の親の方たち)が5人、施設関係者が1人、大学教員・研究者3人の計9人で、第3回研究会を行いました。

前日(11月25日)に見学した「よりみちクラブ」の報告や検討からコミュニティハウス実践分析の視点、およびコミュニティハウスと外部NPOとの連携・協働のあり方について議論しました。

「よりみちクラブ」の実地見学から

コミュニティハウス研究会のメンバー8名で11月25日に実施しました。長田区四番町第三集会所でのスタッフからの説明と活動見学および母体の被災地障害者センターでの交流を行いました。

「よりみちクラブ」の概要はこちら。被災地障害者センターの概要はこちらをご覧下さい。

出された意見には次のようなものがありました。

・サービス中心の発想での場づくりと、個人中心の発想での場づくりでは異なる。サービス中心だと対象者を限定して同一のサービスを継続していくことを考えるが、個人中心だとひとりの個人の成長・発達に伴ったニーズの変化に対応してサービスの内容を変化させていくことになる。両者のよい面を引き出していくことを考える必要がある。(コミュニティハウスはいわゆる「当事者」が負担しあってつくるという概念があるので、個人中心の発想が強くなるが、サービスの継続性や社会性という点でサービス中心の発想も取り入れていく必要があるのではないか。)

・放課後活動をサービス内容としたコミュニティハウスが多いようだが、学齢期対象の事業の方が当事者が負担しやすいのだろうか?もしそうならそれはなぜか?ニーズの緊急性、親の組織づくりの仕方についての世代間格差などを原因として考えることができるのだろうか。(ただし、情報収集がWEB検索に頼っているので、情報の偏りがあるかもしれない。イメージとしては成人対象の事業が発展して児童対象のものへ移っていくというのもある。)

・ボランティアの関わりが重要である。ただ、ボランティアを労働力として見るだけでなく、ボランティア自身が成長したり、その場を必要としたりすることがないと、長続きしない。コミュニティハウスには、どのようなボランティア確保・役割付与をしている事例があるのだろうか?

●コミュニティハウスと外部NPOとの連携・協働について

東灘区に拠点のあるCS神戸を題材として取り上げました。

CS神戸についてはこちらをご覧下さい。NPOサポートセンター機能が中心だそうです。(なおここでNPOとは、NPO法人に限らず、小規模なグループも含めた組織のことだそうです。)無料で、さまざまな相談にのってもらえるということです。

出された意見には次のようなものがありました。

・コミュニティハウス側が、ちゃんとした方針をもっていないと、外部NPOに引きづられてしまう可能性がある。

・連携するにしても、コミュニティハウス運営の中核部分への関与と、コミュニティハウスが提示する部分的な事項への関与とでは、意味が異なる。後者が基本であるべきだ。

・コミュニティハウスと外部NPOとの関係のもちかたは多様である。例えば「よりみちクラブ」は外部NPO主導で始まった事業が、徐々に当事者主体になってきている例である。この場合、運営委員会レベルで外部NPOと当事者との協働がなされている。CS神戸の場合、運営レベルではあくまで当事者主体であり、その支援を外部NPOが行うという形での連携・協働となる。どういう形での連携・協働が、コミュニティハウスを性格づけるのかという視点をもつことができるだろう。


【第4回研究会】

日時: 2005年1月20日(木)13:30〜

場所: わっはの家

コミュニティハウスの実践者(チャレンジ東灘の親の方たち)が9人、施設関係者が1人、大学教員・研究者2人の計12人で、第4回研究会を行いました。

内容は、コミュニティハウスの理念を実現するための戦略についてというものでした。

はじめに津田が、コミュニティハウスの再定義とコミュニティハウスの比較材料を以下のような形で提起しました。

******

1 再度、コミュニティハウスとは何か

●研究会発足趣旨にある定義 → コミュニティハウスとは、セルフ・ヘルプ・グループ等がメンバーの負担によって設置し、自分たちのニーズ充足を保障するとともに、自発的に地域の多様なニーズに応じるサービスの拠点として運営されるスペースである。

〈この定義の課題〉

・設置主体をもう少し明確にする必要があるのではないか。

・「地域の多様なニーズ」をもう少し明確にする必要があるのではないか。

●一歩前進した定義の提案

→ 特別なニーズをもつ人たちが生涯にわたって質の高い地域生活を送ることができるようにするための、地域住民を巻き込んだインフォーマルサービスの拠点。インフォーマルサービスの性格上、次の条件を満たすもの。

・就労支援や社会福祉事業といったフォーマルサービスを主たる目的としない。あるいは、これらに対して独立性を保っている。(インフォーマルサービスの個別性・機動性は、フォーマルサービスのもつ画一性・安定性と相容れない部分があるため。)

・セルフヘルプ活動を含んでいる。(インフォーマルサービスは、個別のニーズに応じて、身近な人たちの間からはじめていかなければならないため。)

・受益者を限定しない。(インフォーマルサービスのニーズは、生活条件によって変動するため、受益者を予め特定できないため。)

●なお、インフォーマルサービスとは、行政が直接・間接に提供するサービスでは充足されない「隠れた」ニーズに対応するサービス。もう少し明確にするならば、

・制度化されていないサービス。例えば、サービスの根拠となる法がない、税金によって賄われない、担当の職員がいないなど。

・対応するニーズが、社会的課題として社会に認知されていないサービス。あるいは社会的認知の過程にあるニーズに対応するサービス。

●フォーマルサービスとインフォーマルサービスとの関係

 インフォーマルサービスは、個別の状況に応じて生起するニーズに対応するものであり、一律に運用されるフォーマルサービスとは相容れない部分がある。しかし、インフォーマルサービスのニーズが多くの人たちに共有されると、フォーマルサービスとして認めることが要求される。ガイドヘルプサービスは、インフォーマルサービスがフォーマルサービス化した身近な例。

●設置主体について: 当事者・地域住民・施設職員等の三者のバランス

2 事例検討

設置主体とコミュニティハウスの性格・理念

名称 当事者 地域住民 施設職員等 会の性格
くじらハウス ボランティア=運営主体 ボランティア=運営主体 ボランティア=運営主体・求めに応じる専門家 ボランティア団体+事業所(NPO法人)
地域生活ネットワークサロン 会員・利用者 ボランティア 事務局・求めに応じる専門家 当事者参加の事業所 (NPO法人)
わっはの家 運営主体・利用者 ボランティア ボランティア 当事者団体

【参考1】「地域生活ネットワークサロン」設立趣旨書(2000)

1、趣旨

 私たちは障害をもつ子どもの親として、または障害当事者として、あるいは支援者やその仲間として、一緒に地域で生きようと共に歩んできました。そして、それぞれの活動を通して地域で暮らすことの大変さや不安を強く感じてきました。
 例えば、閉鎖的な環境の中で情報に振り回されながら子育てに不安を感じている母親たち。とりわけ子どもに障害がある場合には更に不安は強く、生きる力を失うこともたびたびです。そして、障害をもっているというだけで、幼児期から施設や特殊教育の場など、特殊な社会の中で生きることが当たり前になってしまう現実。学校教育を終えた後には生活の場も居場所も保障されていない現実。更に、根強い社会の差別や偏見。一方では、日々報道される子どもたちの荒れや犯罪が示すように、障害のあるなしや年齢、性別や立場に関わらず、誰もが生きることへの危うさや不安を抱えています。

 しかし、私たちは今までの活動を通し、どんな人も自分の人生を自分の手で創り上げる「力」を持っていることを確信しています。今、不安でいっぱいの現実の中にあって、ひとりひとりの力は小さく、できることも限られているかもしれません。でも、ひとりひとりがまた誰の代わりでもなくかけがえのない存在として、何かができることも確かです。私たちは地域で生きる中でぶつかるたくさんの壁に目をそむけず、諦めることなく、それらの問題を解決しようとする主体となることを決意しました。

 誰もがいきいきとした生活をおくることのできる地域となっていくためには、人が集い、人が繋がり、情報が集まり、そこから新たな知恵が生まれる必要があると考えます。地域生活支援ネットワークサロンは、どんな人でも思いを語り元気を充電できる集いの場を提供し、そこに集う人たちを結びつけ、集まった情報をコーディネートします。そして、ひとりひとりの思いに応え、夢を着実に実現するために、釧路地域の「人」や「知恵」を総動員できるような、人と情報のネットワークを創っていく「強い意志を持った事業体」として構想し、設立します。

2、申請に至るまでの経過

 1993年3月発足した子どもたちの健やかな成長を願う「マザーグースの会」から2000年に4月に事業体として独立。それまでの主なテーマであった障害児の子育てに限らず、広く福祉のまちづくりを目指すため、6月7日に地域生活支援ネットワークサロン設立準備会を開催し、各方面から意見をまとめ、その後地域生活支援ネットワークサロンの総会で討議決定すべき議題の整理、事業活動計画や予算案を作成し、総会を開催し、設立の運びとなりました。

【参考2】「地域生活ネットワークサロン」紹介ページより

地域生活支援ネットワークサロンは NPO(特定非営利活動法人)です。 地域で誰もが生き生きとした生活をおくるために、地域のニーズ(悩み・不安・迷いなど)に対して相談・直接支援・情報管理・イベント・集いなどを通してニーズを具体化・体系化し、施設などの社会資源・サービス・システムといった有形のものから、人材・地域力・ネットワークといった無形のものまでを生み出し・創造し住みやすい地域づくり(夢の実現)を行う活動をしています。

【参考3】設立当初のくじら雲の目的と活動内容(1998)

障害をもつ子ども、障害をもつ市民、その他必要のある市民の余暇活動をサポートする。

 @さまざまな市民との交流の機会を提供する。

 A市民の要望を把握し、可能な限りで対応する。

 B市民の余暇活動をサポートする理解者を増やす。

 C参加しているすべての市民が楽しめる場を提供する。

活動内容

 1 国立五日制の会*の活動を企画・運営面からサポートする。

 2 ガイドヘルパーを提供する。

 3 障害をもつ子ども、障害をもつ市民の兄弟姉妹をサポートする。

 4 その他、必要に応じた活動を行う。

*国立五日制の会: この会は、国立在住の障害児(者)、その保護者が、地域ボランティアや行政の協力を得て活動している会です。週五日制に伴って、地域や家庭に戻った障害児(者)が、豊かに過ごせる活動を目的にしています。(活動内容)第二土曜日に音楽の広場、第四土曜日にスポーツ教室、その他。

【参考4】特定非営利活動法人くじら雲 目的および業務(2001)

 この法人は、ともに生きる社会をめざし、障害をとわず地域で生活できる社会の実現を図るため、理解ある市民づくりに関する事業を行い、ノーマライゼーション社会の実現に寄与することを目的とする。この法人は、上記の目的を達成するため、次の種類の特定非営利活動を行う。1)福祉の増進を図る活動、2)社会教育の推進を図る活動この法人は、上記の目的を達成するため、特定非営利活動に係る事業として、次の事業を行う。1)障害のある市民の活動の企画・運営のサポート事業、2)ガイドヘルパー(送迎)を提供する事業、3)障害者(児)の生活支援事業、4)様々な市民との交流の機会を提供する事業、5)福祉に関する啓発活動、6)その他、この法人の目的を達成するのに必要な事業

*****

このあと、問題提起をふまえた自由討議が行われました。出された意見には、次のようなものがありました。

・コミュニティハウスが根ざすべき地域とは何か?生まれ育った場所を中心に考えるならば、例えばグループホームは地域にあるわけではない。

・人間関係の成立している場所が、本人にとっての地域ではないか。人間関係には、サポートしてくれる人もいるし、友だちもいる。

・持続した人間関係を形成していく場がコミュニティハウスの意義だと思う。

・さまざまな場面の経験、例えば他者にお願いをすることの経験を積み重ねることができる場であることが重要だと思う。

・親が抱え込むのがしんどいときに、サポートを求める場であってほしい。

・友だちがいることがしんどいこともある。この場に来て食べるというのが楽しみというだけの場であってもよい。

・メンバーであるにもかかわらず、来ることができない人たちのニーズを考えることが大切ではないか。


この実践的研究に関わる研究費一覧

2004〜2006年度科学研究費補助金(若手研究B)

2006年度科学研究費補助金(基盤研究C)

2007〜2010年度科学研究費補助金(基盤研究B)

2012〜2016年度科学研究費補助金(基盤研究B)

2017〜2019年公益財団法人日本生命財団委託研究

2018〜2022年度科学研究費補助金(基盤研究B)

2024〜2028年度科学研究費補助金(基盤研究B)