形が決まったため、ようやく2008年春に実戦サイズの試作機を作り、問題点を洗い出すプロトタイプの作成を行った。
実戦投入時に必要とされる能力を搭載すべく、小型モデルより以下の点が変更されている。。
こうしてできたのが、ほむら試作1号機「手習」である。開発名は源氏物語の53帖「手習」からとられた。
しかし、試験走行を廊下で始めた途端、青白い光とともに煙があがった。市販品のモータードライバの許容電流の上限を超えたため、発火したのだった。大慌てで電源を外したが、モータードライバは見事にぱっくりと割れていた。
その後、別のドライバを使うなどしたものの性能が芳しくなかったため、結局FETを使った現在の自作モータードライバへと落ち着くこととなるが、修理に数週間を要した。
ところが、である。ようやく完成した新型モータードライバを搭載して、ようやく動作試験を行ったところ、一部のモーターが正常に動かない。調べてみると、苦労して作り上げた新型モータードライバのFETが破壊されている。
あれ?モータードライバを作る時に失敗したかな?と修理して再度動作試験を行うと、今度はまた別のモータードライバがお亡くなりになっている。
そういったことが、何度か続いた。
モータードライバは、部品は少ないものの、はんだ付けに不慣れな我々にとっては作るのが非常に面倒である。ほとんど泣きたい気持ちになりながら、モータードライバを修理し続けたが、ある出来事によってようやくその原因が明らかとなる。
いつものように動作試験をしようと電源を入れると、コントローラーで操作していないにも関わらずあるモーターが回転し始めた。何が原因か分らなかったが、とりあえず回転を止めようと、そのモーターの電池を抜いた。
ところが・・・モーターは回り続けたのである。モーターへの電源供給はモーター用の電池からしかなされないはずなので、電池がないのに回っていることになる。
よく分からないまま、今度はモータードライバへ信号を送っている、メインボードの電池も抜いた。
しかし、それでもモーターは回り続けたのである。
結局、片っぱしから電池を抜いて、ようやく原因がわかった。モータードライバが機体のフレームを経由してショートしていたのである。別のモータードライバの電源部分がフレームと接触し、フレームを伝って今回のモータードライバに入り、モーターを回していたのだった。
今まで見逃していたが、モータードライバ連続殺人事件もフレームに接触することによるショートで起きていたことが分かった。フレームとモータードライバとのショート対策を講じることにより、ようやくモータードライバが壊れることも減っていった。
モータードライバの問題は乗り越えたものの、動画の通り非常に走行性能は悪かった。これではとても悪路走行などは不可能である。何としてもモーターの性能を改善する必要があった。しかし、使用しているモーターは市販品では最大級の48kgw・cmのトルクのものである。これ以上のモーターは・・・
・・・待てよ。トルクが48kgm・cmもあれば、半径15cmの車輪一つで3kgのものまでは動かせる計算である。たかだか10kg程度の「手習」が、モーター6個でもなかなか動かない、ということはありえない。
そこで、もう一度調べてみると、なんと使っていたモーターは15kgw・cmしかトルクのないシリーズのものであることが分かった。もっと性能の良いシリーズと勘違いしていただけだったのだ。
こうして、モーター性能に目処がついたところで、新試作機の設計が始まった。無論、今度は48kg・cmのモーターでである。