中東の予防外交
中東は、紛争多発地帯と言われています。中東は、紛争を予防するという価値観に基づく政策がもっとも必要とされている地域ではないでしょうか。本プロジェクトは、中東において紛争を予防するための国際政治のあり方を模索します。

「予防外交」は、まだ国際政治の専門家以外にはよく知られていない概念にとどまっていますが、予防戦争(先制攻撃)にも対置され、武力を行使せずに紛争を予防する外交政策です。

「予防外交」の手段には、紛争が発生する懸念がある地域や国で、各国政府、国際機構、NGOなどが協力して、監視、情報の収集と分析、早期警戒の体制を構築することがあげられます。また、紛争の発生を予防するために、外交交渉を繰り返したり、軍事力の予防的展開を実施する政策が関連します。さらに、各国の国内体制の変革により、紛争の可能性を低減するように導く国際社会の関与も含まれます。

OSCE(欧州安全保障協力機構)が、「予防外交」の成功例として代表的な国際機構です。また、近年アフガニスタンやイラクで注目を集める「平和構築」活動は、紛争や戦争が一度発生してしまった後での政策に強調点がおかれています。本プロジェクトでは、平和構築の重要性もさることながら、紛争の発生を防ぐという原点を大切にしたいと思います。

紛争における被害者の75%が民間人だと言われます。わたしたちは、起こった紛争に対処するだけではなく、紛争を予防してほしいという中東の人々の願いに耳を傾けます。日本政府が理念として掲げ、国際社会で実現のために尽力している「人間の安全保障」の観点にも、予防外交は適する政策だと言えます。

紛争の解決や予防を中東の人々は強く希求しています。中東においては周知の通り、「冷戦後」も戦争や紛争が多発しています。パレスティナ/イスラエル紛争のように長期にわたり未解決の問題も多い一方で、中東全域が紛争下にあるわけではありません。将来を展望するならば、紛争を予防するという観点が重要になっていると考えられます。

日本は、米国とも、中東各国とも友好関係を維持しなければ、安定と発展を保つことは出来ません。紛争を武力を行使せずに予防する「予防外交」という概念は、われわれ日本人が中東の人々と共感し合える価値観になるでしょう。

本プロジェクトは、予防外交のノウハウを蓄積しているヨーロッパの経験や知恵から学びます。また日本の安全保障にとって不可欠な同盟国である米国との協力の新しいあり方について考えます。

国際政治学の研究者にとっては中東は新しい研究フィールドであり、中東研究者にとっては予防外交は新しい概念です。国際政治学の理論的でグローバルな視点と、中東の紛争研究の実証的でリージョナルな融合することを目標とします。

紛争予防や予防外交という考え方を中東というフィールドに適用しながら深く探究し、日本と広く国際社会に理解してもらうことが、当研究会の目的です。中東政治を考察することを通じて、国際政治に関する日本の視野は、アジアという地域を超え、真にグローバルなものになるでしょう。

MEP:
Preventive Diplomacy in the Middle East

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趣旨と目標