第57号(2009年8月号[09/8/1発行])
リウマチの食事療法
先月のリウマチ教室で、栄養管理部の篠原管理栄養士にリウマチの食事療法について講演していただきましたので、その要旨についてお話します。まず、食事はバランスがとても大切ですので、主食、主菜、副菜を揃えるように努めて下さい。主食とは、ご飯、パン、めん類など、炭水化物を多く含み力や熱になる食品のこと、主菜とは、肉類、魚介類、卵、大豆など、たんぱく質を多く含み体を作る食品のこと、副菜とは、野菜やきのこなど、ビタミン、ミネラル、食物繊維を含み体の調子を整える食品のことを言います。外食をすると偏りがちになるとあきらめておられる方もおられるかもしれませんが、メニューの選び方でバランスアップすることも可能です。
一方、関節リウマチでは関節に炎症がおこり、痛みや腫れが生じることから、関節の負担を軽くすること、関節の痛みによる運動量の減少や、治療に必要なステロイドなどのお薬の影響による肥満、糖尿病、骨粗鬆症、脂質異常症(高脂血症、高コレステロール血症)などが起こりやすくなることから、炎症や痛みを抑える作用のある食事と、合併症や薬の副作用に対応した食事を、リウマチの患者さんは考慮していただく必要があります。n-3系多価不飽和脂肪酸は、青身の魚(鯖、秋刀魚、鰯)や植物油(紫蘇油、えごま油、亜麻仁油)に多く含まれるDHA、EPA、α-リノレン酸などのことで、炎症を抑え、動脈硬化や血栓症を予防する作用があります。一方、肉の脂身や生クリームなどに多く含まれる飽和脂肪酸は痛みや炎症を増強する作用がありますので、飽和脂肪酸を減らして、不飽和脂肪酸の摂取を増やすことが、関節の炎症を抑えるのに効果的であるとされています。
合併症である骨粗鬆症に対しては、牛乳、乳製品、小魚、海藻、大豆製品などカルシウムを多く含む食品だけでなく、鮭、秋刀魚、鯖などビタミンDを多く含む食品と、納豆、ブロッコリー、海藻など、ビタミンKを多く含む食品が有効です。また、脂質異常症に対しては、卵黄、魚卵、レバーなどはコレステロールが多く含まれるため食べる量や回数を減らすとともに、コレステロールを下げる作用がある食物繊維をたくさん摂ることが有効です。そして、肥満に対しては、カロリーゼロの食品を上手く使いましょう。ただし、ゼロと表示されていても全くエネルギーがないとは限らないのでご注意下さい。また、エネルギーや栄養成分などをコントロールした宅配弁当などもありますので、検討されてみてはいかがでしょうか。食事療法を長く続けるには、具体的な、でも、高すぎない目標を立てることと、ご家族や友だちなどに協力して貰うことがこつです。ご希望される患者さんは、大学病院の栄養管理部で栄養相談を受けることもできますので、まずは主治医にご相談ください。
レミケード®の増量と投与間隔の短縮が可能になりました
日本で最初に承認された抗リウマチ生物学的製剤であり、既に3万5千人ものリウマチ患者さんが使用されている、キメラ型抗TNFα抗体製剤インフリキシマブ(商品名レミケード®、製造販売:田辺三菱製薬)の用法と用量が2009年7月に改訂されました。これまで、初回投与の2週間後に2回目を、2回目の4週間後に3回目の投与を行った後は、8週間ごとに体重1kg当たり3mgのレミケード®を使用してきました。しかし、生物学的製剤といえども、患者さんにより十分な効果が得られなかったり、あるいは、初めのうちは良く効いていたのに途中から効果が減弱してくる場合があります。そこで、4回目の点滴以降に、効果が不十分だったり、効果が減弱してきた場合には、レミケード®の量を、通常の体重1kg当たり3mgから最大10mgにまで増やすことと、通常の8週間から最短で4週間にまで投与間隔を短縮することが承認されました(ただし、間隔を短縮した場合の増量は体重1kg当たり6mgまで)。これらレミケード®の増量や投与間隔の短縮は、段階的に行う必要があります。レミケード®の投与にメトトレキサート(リウマトレックス®)の併用が必要なことには変更はありません。詳しくは主治医にお尋ねください。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催しております。
教室は、12月を除く毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、他の週に変更させて頂いております。お手数ですが、最新のリウマチだより(整形外科外来中待合のラックからご自由にお取り下さい)、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予め確認の上、ご来院いただけますように、お願い致します。
教室は、予約不要で参加費無料です。他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さんやご家族、医療、教育関係者の方々もご参加いただけます。教室では、毎回、さまざまに異なった話題を取り上げております。どなたでも気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果や薬のリスト、レントゲン写真などをご持参ください。
さて、8月のリウマチ教室では、新しい試みとして、整形外科外来の日高副看護師長ら看護スタッフによる「リウマチ患者さんと家族のおしゃべり会」を開催する予定ですので、暑い時期ではありますが、是非ご家族ご友人と一緒にご参加ください。9月は杉根看護師から足の手入れについて、10月は都成医療ソーシャルワーカーから高齢者施設について、11月は澤村義肢製作所の義肢装具士と整形靴技術者から、リウマチの足底装具や靴型装具について、それぞれ講演を予定しています。皆様のご出席をお待ちしております。
梅雨明けが遅れて冷夏とは言いますが、暑い日が続きます。熱中症にならないように水分の補給を心がけて頂きますとともに、新型インフルエンザも終息しておりませんので、帰宅した際には、手洗いとうがいを徹底して頂きますようにお願いします。
翌月のリウマチだよりはこちら
リウマチだよりのリストに戻る
神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)