第56号(2009年7月号[09/7/1発行])
ロコモティブシンドロームをご存じですか?
先月の井上理学療法士によるリウマチ教室での講演で取り上げられましたロコモティブシンドロームについてお話します。内臓脂肪型肥満によって、さまざまな病気が引き起こされやすくなった状態であるメタボリックシンドローム、略して「メタボ」は、ウエスト回りが気になる年齢層の皆様には、すでに聞き覚えのある言葉だと思います。しかし、ロコモティブシンドローム、略して「ロコモ」は、まだ多くの皆様はご存じないのではないでしょうか。
ロコモティブ(locomotive)とは、英語で「移動力がある」あるいは「機関車の」を意味する形容詞で、 ロコモティブシンドロームとは、日本ロコモティブシンドローム研究会の定義によると、「運動器の障害のために要介護となる危険の高い状態」のことを言います。運動器とは、筋肉、骨格、神経などの身体の運動に関わる組織や器官の連合のことで、主に整形外科が治療対象としています。
ロコモティブシンドロームは、高齢化によりバランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもりや転倒リスクが高まった状態である「運動器不安定症」や、寝たままでいることにより身体の機能が低下してしまった状態である「廃用症候群」とも関連しています。高齢の方で、変形性関節症、脊椎症、骨粗鬆症など複数の運動器の病気が複合することによって、移動能力が低下して、ロコモティブシンドロームになると考えられています。関節リウマチもその原因のひとつになりますので、ロコモティブシンドローム/運動器不安定症を防ぐために、リウマチ患者の皆様や高齢者の方は、適度な運動を行いましょう。
運動方法のひとつとして「ダイナミックフラミンゴ療法」というご自身で簡単に実施できる体操があります。ダイナミックフラミンゴ療法は、その名の通り、鳥のフラミンゴのように、片脚で立つ運動のことで、片方の脚を床につかない程度に上げ、反対側の脚で1分間立つことを、左右それぞれについて行います。バランスが上手く取れず転びそうな場合には、安定した机などに手をついて支えながら行って下さい。転倒して怪我をしまっては本末転倒ですので、つかまることのできる机などがある場所で、また、非常に不安定な場合には、誰かにいつでも支えてもらえるような状況のもとで、1分間続かなくても構いませんので、できる範囲の時間、頑張りすぎないように実施して下さい。
ヒュミラ®の長期処方可能になりました
2008年4月に承認された抗リウマチ生物学的製剤である、完全ヒト型抗TNFα抗体製剤アダリムマブ(商品名ヒュミラ®、製造販売:アボットジャパン・エーザイ)が、発売後1年が経過したため、今月1日から14日を超えて長期処方を行うことが可能になりました。そこで、エンブレル®同様に、一定期間トレーニングを行った後、患者さんご自身あるいはご家族により自己注射を行っていただくことにより、受診を月1回にすることが可能です。ヒュミラ®の自己注射をご希望の場合には、主治医までご相談ください。
新規生物学的製剤の治験のご案内(再掲)
整形外科リウマチ診療部門では、 国内外で開発が進められている新規抗リウマチ生物学的製剤に対する治験を、昨年末から行っております。当科では皆様のご協力のおかげで順調に参加登録を頂いておりますが、まだ全国での定数に達しておりませんので、ご参加頂ける患者さんを引き続き募集しております。新しい抗リウマチ薬を誕生させるためには、リウマチ患者さんとご家族の協力による治験の実施が必須です。治験への参加に興味を持たれた患者さんには、治験コーディネーターから、詳細をご説明させて頂きますので、主治医にお気軽にご相談下さいますようによろしくお願いします。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催しております。
教室は、12月を除く毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、他の週に変更させて頂いております。お手数ですが、最新のリウマチだより(整形外科外来中待合のラックからご自由にお取り下さい)、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予め確認の上、ご来院いただけますように、お願い致します。
教室は、予約不要で参加費無料です。他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さんやご家族、医療、教育関係者の方々もご参加いただけます。教室では、毎回、さまざまに異なった話題を取り上げております。どなたでも気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果や薬のリスト、レントゲン写真などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものや処置はできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、当科での治療をご希望の場合は、かかりつけ医を通じて初診予約を取って頂いた上で、水曜日の整形外科リウマチ外来を受診していただきますようにお願いいたします。
さて、7月のリウマチ教室では、栄養管理部の篠原由梨香管理栄養士から、リウマチ患者さんに有用な食事療法に関する講演を行っていただく予定ですので、是非ご参加ください。8月は整形外科外来の日高副看護師長らによる「リウマチ患者さんと家族のおしゃべり会」を、9月は杉根看護師から足の手入れに関する講演をそれぞれ予定しています。皆様のご出席をお待ちしております。
梅雨のまっただ中で、湿度の高い日が続きます。関節のこわばりや痛みが強い日は無理をせず、ゆっくりとご自宅で過ごしましょう。エアコンを使って除湿する場合には、室温が下がりすぎないようにご注意ください。
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