第52号(2009年3月号[09/3/1発行])

今年は花粉の当たり年です

 3月に入ってから寒の戻りが来ていますが、通院中の皆様の体調はいかがでしょうか。本格的な春の訪れももう目前です。寒さが病気に悪影響を与えるリウマチ患者さんにとって、暖かくなることは、本来とても喜ばしいことなのですが、花粉症をお持ちの患者さんにとっては、悩みの時期でもあります。特に、今年のスギ花粉の飛散は、西日本では、例年より多いと予想されていますので、花粉症でお悩みの皆様は、かかりつけ医か耳鼻咽喉科などのクリニックで処方して頂いた抗アレルギー薬を、花粉症の症状が出る前に飲み始めることをお勧めします。また、どんなに暖かくても、季節の変わり目は、気温の変化が激しいことから、風邪を引きやすい時期でもあります。ですので、寒い時期と同様に、外出から帰宅されましたら、こまめにうがいと手洗いをしていただきますとともに、汗をかいたら、できるだけ早く下着を着替えて体を冷やさないようにお願いします。


骨粗鬆症の薬を上手く飲めていますか?

 関節リウマチの患者さんには、骨がやせる病気である骨粗鬆症がしばしば起こります。骨粗鬆症は、(1)リウマチの原因物質である炎症性サイトカインにより、古くなった骨を処理する働きを持つ破骨細胞が活性化されることにより関節周囲の骨に生じた傍関節性骨粗鬆症、(2)リウマチの痛みのために動くことが減ることにより筋肉の萎縮とともに全身に生じた廃用性骨粗鬆症、(3)リウマチの治療に用いられるステロイド剤の副作用によるステロイド性骨粗鬆症、(4)閉経後に女性ホルモンが急激に減ることによって生じた閉経後骨粗鬆症、などが組み合わさって生じます。骨粗鬆症に対する適切な治療をしないと、ちょっと転んだだけで、簡単に骨折してしまい、また、その骨折もなかなか治りません。特に、下肢や背骨の骨折だと、骨折のために動けないことから、さらに骨粗鬆症が悪化してしまいます。

 そこで、リウマチ患者さんは骨粗鬆症を予防することがとても大切です。予防するには、(1)リウマチ自体をしっかりと治療し、(2)カルシウムを十分に摂り、(3)骨や筋肉の痩せを防ぐための適度な運動を行い、(4)適度に日光を浴び、(5)骨塩定量検査を定期的に受けて自分の骨の量に注意を払う、などが効果がありますが、閉経後では、多くの場合、それだけでは不十分で、お薬の内服が必要になります。現在、最も良く使用される骨粗鬆症のお薬は、ビスフォスフォネートという種類のお薬で、リセドロネート(ベネット®、アクトネル®)、アレンドロネート(ボナロン®、フォサマック®)などが含まれますが、週に1回だけ内服するタイプが主流になっています。これらの薬は、朝起きてすぐの胃の中が空のときに、コップ1杯の水または白湯で、噛んだり溶かしたりせずに内服していただき、その後、30分間は他の食べ物や飲み物を取ったり、もう一度、布団に入って横になってしまってはいけません。これは薬が食べ物にひっつくと体に吸収されなくなり、効果がなくなってしまうとともに、横になると薬が食道の壁にひっついて、潰瘍の原因となってしまうためです。もし、朝起きたときに内服し忘れた場合は、1日ずらして、次の日に内服してくだされば結構ですので、正しくビスフォスフォネートを使用しましょう。


新規生物学的製剤の治験のご案内(再掲)

 整形外科リウマチ診療部門では、新規抗リウマチ生物学的製剤の治験を、昨年末より実施しています。治験は、患者さんの参加がなければ実施することができません。治験に興味をお持ち頂いた患者さんには、主治医までお声掛けいただけますように、お願い申し上げます。お声掛けいただいた方には、治験コーディネーターから詳細なご説明をさせて頂きますが、お話を聞いた後で、参加するかしないかを決めて頂くことができますので、お気楽にご相談下さい。一日も早い抗リウマチ新薬の誕生に向けて、お一人でも多くのリウマチ患者さんにご協力をいただけましたら幸いです。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催しております。

 教室は、12月を除く毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、他の週に変更させて頂いております。お手数ですが、最新のリウマチだより(整形外科外来中待合のラックからご自由にお取り下さい)、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予め確認の上、ご来院いただけますように、お願い致します。

 教室は、予約不要で参加費無料です。他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さんやご家族、医療、教育関係者の方々もご参加いただけます。毎回の話題は、関節リウマチの治療法、健康維持法が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。繰り返し参加されている皆様は、教室を、患者相互や、患者と医療従事者の交流の場としても活用されておられますが、どなたでも気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果や薬のリスト、レントゲン写真などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での治療をご希望の場合は水曜日の整形外科リウマチ外来を受診していただきますようにお願いいたします。

 さて、3月のリウマチ教室では、神戸市こころの健康センターの精神科医の三好彩先生から、リウマチ患者さんの心の健康に関する講演を行っていただく予定です。ゴールデンウィーク中の4月は、三浦准教授から、平日に参加が難しいご家族を対象にして、ご家族がリウマチを患われた場合に知っておくべきリウマチに関する情報と療養のポイントに関する講演を、5月は、患者支援センターの都成医療ソーシャルワーカーから介護保険に関する講演を、6月はリハビリテーション部の井上理学療法士から関節拘縮や筋力低下、骨粗鬆症の予防に重要なリウマチの運動療法に関する講演を、それぞれ予定しています。是非、ご出席ください。


これからのリウマチ教室の予定


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