第50号(2009年1月号[09/1/1発行])

新年あけましておめでとうございます

本年もよろしくお願い申し上げます

整形外科リウマチ診療部門一同


リウマチのリハビリテーション

 リハビリテーション(以下、リハビリ)と言えば、スポーツ選手が怪我をした後にするトレーニングのようなイメージを持っておられる方も、まだ多いのではないでしょうか。英語のrehabilitationという言葉は、日本語に訳すと「適した、(人間に)ふさわしい」というラテン語の形容詞であるhabilisという言葉を語源にしています。すなわち、リハビリとは、「人間が何らかの原因で望ましくない状態に陥ったときに、そこから救い出して、再びふさわしい状態に復帰させる」という意味です。中国語では「康復」、韓国・朝鮮語では「再活」と表記されるとおり、決して訓練を意味する訳ではなく、障害のある方に、医学的リハビリにより身体・精神的に、地域リハビリにより社会的に、職業的リハビリにより職業的に、福祉により経済的に、できるかぎりの有用性を回復させることを言います。

 日本リウマチ友の会は、リウマチ治療の4本柱のひとつとしてリハビリを掲げていますが、2005年の調査では、リハビリを受けたことがあるという回答は37.1%にとどまり、過去の調査と比較してリハビリを実施しているリウマチ患者さんが減少していることが明らかになっています。

 以前のリウマチのリハビリは、進行する関節機能障害により低下した日常生活動作を補うために、介護保険を利用した住宅環境の整備や人的介助といった地域リハビリが中心でしたが、生物学的製剤などの薬物治療が強力になった今日では、関節可動域と筋力維持などを目的とした運動療法、関節保護を目的とした日常生活動作訓練や補装具の作成などの医学的リハビリが極めて重要になっています。そのことは、寛解と言われるリウマチの活動性がほぼ完全に停止した状態になっても変わりません。ただし、度重なる厚生労働省の方針の変更もあり、運動療法などの医学的リハビリを医療機関で継続して受けられない場合が増えています。しかし、運動療法は、リウマチ体操ビデオやパンフレットなどを活用してご自宅で行うことが可能ですので、主治医あるいは担当理学療法士・作業療法士にご相談ください。また、定期的に、リウマチ教室でもリウマチ体操の指導を行っていますので、興味のある方はご参加ください。


新規生物学的製剤の治験のご案内(再掲)

 整形外科リウマチ診療部門では、国内外で開発が進められている2種類の抗リウマチ生物学的製剤に対する治験を、昨年10月から行っております。「治験」とは、新しい薬を世に送り出すために、「薬の候補」が持つ、人における効き目(有効性)と副作用(安全性)を調査する「臨床試験」のうち、厚生労働省から「薬」としての承認を得るために行われる試験のことを言います。製薬会社と医療従事者の努力と、リウマチ患者さんやご家族の協力、この両方があって初めて、新しいリウマチ薬を誕生させて患者さんのお役に立てることが可能になります。先月号のリウマチ便りに詳細を記述していますが、治験に興味をお持ちになられた患者さんには、さらに詳しく治験コーディネーターから、ご説明させて頂きますので、主治医までお声掛けいただけますように、お願い申し上げます。ただし、治験に参加いただくには、いくつかの条件を満たす必要がありますので、せっかく、お申し出を頂いても、参加できない場合がございますので、その際はどうかご了承ください。お一人でも多くの患者さんにご協力をいただけましたら幸いです。また、これまでに参加のお申し出を頂いた皆様に、深く御礼を申し上げます。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催しております。

 教室は、12月を除く毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、他の週に変更させて頂いております。お手数ですが、最新のリウマチだより(整形外科外来中待合のラックからご自由にお取り下さい)、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予め確認の上、ご来院いただけますように、お願い致します。

 教室は、予約不要で参加費無料です。他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さんやご家族、医療・教育関係の方々もご参加いただけます。毎回の話題は、関節リウマチの治療法、健康維持法が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。繰り返し参加されている皆様は、教室を、患者相互や、患者と医療従事者の交流の場としても活用されておられますが、どなたでも気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果や薬のリスト、レントゲン写真などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での治療をご希望の場合は水曜日のリウマチ外来を受診していただきますようにお願いいたします。

 さて、1月のリウマチ教室では、三浦准教授から、実際の人工関節をお持ちして、手術の適応、方法、リハビリ、注意点などについてお話させていただく予定です。近年の人工関節手術の進歩は著しく、痛みを軽くして日常生活動作を大きく改善させることができるようになっています。関節リウマチの方だけではなく、変形性関節症でお悩みの方も、是非、ご参加ください。2月は、大学院保健学研究科の大沼氏から、臨床検査技術に関する講演を、3月は、精神科医の三好先生から、心の健康に関する講演を、ゴールデンウィーク中の4月は、三浦准教授から、日頃、平日に開催される教室には参加が難しいご家族に向けて、リウマチの療養に関する講演を、6月はリハビリテーション部の井上理学療法士からリウマチの運動療法に関する講演を、それぞれ予定しています。

 本年も、整形外科リウマチ教室にご期待ください!


これからのリウマチ教室の予定


それでは、本年が皆様にとって素晴らしい一年になりますようにお祈り申し上げます。


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