第48号(2008年11月号[08/11/1発行])
恒例のインフルエンザ予防接種のキャンペーンです!
11月に入って、朝夕、随分と冷え込むようになり、いよいよ、冬も目前となりましたので、今年も、インフルエンザ予防接種のご案内をさせていただきます。本来、病原体を攻撃して感染症などから身体を守る免疫が、間違って自分の関節滑膜を攻撃してしまうことによって、関節リウマチは発病します。そこで、多くのリウマチ薬は、免疫を抑制することによりリウマチを抑えていますので、治療を受けているリウマチ患者さんは、病原体に対する抵抗力が低下して、インフルエンザにかかりやすく治りにくい状態になっています。ですので、インフルエンザにかかってしまう前に予防することがとても重要です。予防には、うがいなどの一般的な感染予防対策に加えて、ワクチン接種が最も有効ですが、インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンであるため、メトトレキサート(リウマトレックス®)を服用している多くのリウマチ患者さんでも、接種を受けることができます。一方、麻疹や風疹などの生ワクチンは、接種できませんので、ご注意下さい。申し訳ありませんが、大学病院では、予防接種を実施していませんので、お近くの医療機関で、接種を受けてください。接種してから効果が出るまで、少なくとも2週間はかかりますので、流行が始まる前に、接種を受けて下さい。また、流行が予想されるインフルエンザの種類は毎年異なり、ワクチンの有効期間も5ヶ月程度ですので、昨年に接種を受けられていたり、これまでに一度も、インフルエンザにかかったことがなくても、今年は大丈夫という訳ではありません。毎年、接種を受けていただけますようにお願い致します。なお、インフルエンザワクチンは、インフルエンザの予防には役立ちますが、感冒など他のウイルスによる病気には全く効果はありませんので、接種を受けていても、外出から帰宅されましたら、うがいと手洗いを、毎回、しっかりと実行して下さい。
妊娠を希望されるリウマチ患者の皆様へ(最終回)
9,10月号の続編です。抗リウマチ薬のうち、アザルフィジン®とリマチル®は、妊婦への投与が禁忌とされていないため、胎児に与えるリスクより患者さんへの有益性が上回っている場合に、一般的ではありませんが使用される場合があります。ただし、どちらの薬も、リウマトレックス®や生物学的製剤と比較して抗リウマチ作用が弱いため、ステロイドのみでのコントロールが難しいほど、リウマチの活動性が高い場合には、効果があまり期待できません。生物学的製剤のうち、抗体の一部分とTNF受容体を合成したキメラタンパク質であるエンブレル®は、生物学的製剤としての非常に強力な抗リウマチ作用を持っていること、レミケード®やヒュミラ®などの抗体製剤と薬の構造が異なることから胎盤を通じて胎児へ移行する割合が少ないこと、注射の頻度を減らしての投与での有効性も報告されていること、これまで胎児への悪影響が明らかになっていないこと、国内でもエンブレル®を使用しながら妊娠・出産された患者さんの例が報告されたことなどから、ステロイドのみでのコントロールが難しい場合に、エンブレル®の使用が検討されるようになりつつあります。ただし、妊娠に対して安全性が確立されているとは言えませんので、リウマチの状態や母体の年齢などの状況を十分に検討した上で、患者さんとご家族、そして医療者との同意の下に、エンブレル®などのステロイド以外の薬は選択されるべきです。
母体がどんなに健康であっても、絶対に安全な妊娠・出産というものもありませんし、今日の厳しい周産期医療の現状が、ますます、妊娠・出産への不安を高めているという実情がありますが、リウマチを乗り越えて、子供さんを持たれるということはかけがえのない素晴らしいことだと思います。私たちは、母となることを希望される患者さんのニーズにかなった治療と支援を行っていきたいと考えています。そして、「子供さんを授かったときも、授からなかったときも、プラス思考で」、少し肩の力を抜いて臨んでいただければ、きっと良い結果になるのではないでしょうか。繰り返しになりますが、赤ちゃんが欲しいと考えられた場合、遠慮なく、主治医までご相談ください。
新規生物学的製剤治験のご案内
整形外科リウマチ診療部門では、現在国内外で開発が進められている2種類の抗リウマチ生物学的製剤の治験を、先月下旬から開始いたしました。10月のリウマチ教室で、久米薬剤部治験管理室長より詳しくご説明させていただきましたが、新しい薬を世に送り出すために、「薬の候補」が持つ、人における効き目(有効性)と副作用(安全性)を調査する「臨床試験」のうち、厚生労働省から「薬」としての承認を得るために行われる試験を、特に「治験」と呼びます。今回治験が行われている生物学的製剤は、レミケード®やヒュミラ®に類似した薬と、国内では悪性リンパ腫の薬として、海外ではリウマチ薬としても用いられるリツキサン®に類似した薬で、それぞれ、高い有効性が期待されています。製薬会社と医療従事者だけでは、新しいリウマチ薬は誕生させることは決してできません。リウマチ患者さんやご家族の協力があって、初めて可能になります。お一人でも多い患者さんのご協力をいただけましたら幸いです。なお、治験に際しては、より一層の安全性の確保と、経済的負担の軽減、さらには、効果が不十分な場合の対策などに特別の配慮がなされています。
治験への参加に興味をお持ちの患者さんは、是非、主治医までお声掛けいただけますように、お願い申し上げます。なお、治験に参加いただくには、いくつかの条件を満たす必要がありますので、せっかく、お申し出を頂いても、参加できない場合もありますので、その際はどうかご了承ください。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、関節リウマチの皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催して参りました。教室は、毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、他の週に変更させて頂いております。お手数ですが、最新のリウマチだより、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予めご確認の上、ご来院いただけますように、お願い致します。
講演は、予約不要、参加費無料ですので、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる方も、ご自由に参加下さい。教室では、療養に役立てて頂くために、関節リウマチの治療法、健康維持法や、保健制度など、様々な話題を取り上げております。参加頂いている皆様は、リウマチ教室を、患者相互や、患者と医療従事者の交流の場として活用されておられますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、時間が許す限り、個別の療養や治療に関する相談にも応じておりますので、ご希望の方は、検査結果や薬のリスト、レントゲン写真などをご持参ください。
さて、11月のリウマチ教室では、沢村義肢製作所の戸石さん、佐野さん、小西さんの3名の義肢装具士に、足袋式装具についての講演と、装具や靴、自助具の展示と相談を行って頂く予定です。足の悩みをお持ちの患者の皆様は、是非、ご参加下さい。
それでは皆様、師走で忙しくなる前に、インフルエンザワクチンの接種を受けて下さいね。
翌月のリウマチだよりはこちら
リウマチだよりのリストに戻る
神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)