第27号(2007年7月号[07/2/1発行])
寒さは厳しいものの、スキー場の雪不足が嘆かれる今年の冬ですが、リウマチ外来に通院中の皆様はいかがお過ごしでしょうか。さて、この冬は、インフルエンザが流行せずに済むかもしれないと思っておりましたが、残念ながら2月に入ってから流行し始めておりますので、皆様におかれましては、くれぐれも油断されることなく、うがいと手洗いを励行し、予防に努めて頂くようにお願いいたします。万一、発熱や咽頭痛などのインフルエンザを疑わせる症状が出た場合、自己診断されることなく、すぐにかかりつけ医を受診してください。これは、一部のインフルエンザには、リン酸オセルタミビル(タミフル(R))という薬が有効ですが、感染48時間以内の早期に服用を開始しないと効果がないためです。また、冬の感染症は、インフルエンザに限らず、いわゆる普通の風邪など他のウイルスによる場合がありますが、それらの病気には、タミフル(R)は効果がありませんので、服用するかどうかには医師の判断が必要です。なお、現在、一部地域の養鶏場において発生している鳥インフルエンザにつきましては、十分な防疫対策が取られておりますので、鶏肉、卵等に心配される必要はありません。
日高副看護師長からの一言アドバイス(8):リウマチの運動療法
今回は、リウマチ患者様の運動療法について述べさせて頂きます。
関節リウマチにより破壊される関節軟骨には、もともと血管がないため血液が流れていません。血液の代わりに、関節滑膜で作られた関節液が、関節を曲げ伸ばして運動する際に循環・浸透して、関節軟骨細胞に、酸素や栄養を補給をしています。ですので、適度な関節の運動がないと、軟骨細胞は酸素や栄養不足に陥ってしまいます。また、リウマチの痛みのために関節を安静にしすぎると、関節を構成する皮膚や筋肉や腱が縮んでしまい、関節の動く範囲(可動域)が、以前より狭くなってしまう関節拘縮や、筋肉が痩せるために起こる筋力の低下が生じてしまいます。その結果、関節そのものに加わる負担が更に増え、そのために関節破壊が進んで、痛みがさらに増えるという悪循環が生じてしまいます。また、ひとつの関節が拘縮を起こすと、その関節の可動域の不足を補うために、近隣の関節、例えば、手首の関節が調子が悪い場合、肘や肩や首の関節にも無理がかかってしまい、そちらの関節にも、障害が出る場合があります。ですので、関節の痛みが強いときに、無理な運動をするのは返って良くないのですが、痛みが軽くなってきたら、リウマチ体操などにより、関節可動域の保持、筋力の増強を行ってください。また、適度な運動には、軽度の関節軟骨の損傷に対して修復を促す作用や、骨を強くして骨粗鬆症を防ぐ作用があります。可動域訓練をする際には、曲げる運動だけでなく、ついつい忘れがちな、伸ばすストレッチ運動もしっかり行って下さい。関節の痛みがあって可動域訓練ができない場合には、関節は動かさずに、関節周囲の筋肉に力をいれて収縮させて、筋力を増強させる、等尺性筋収縮運動がお勧めです。なお、運動の量は、「痛くない」、「疲れ過ぎない」、「楽しく毎日できる」、「飽きない」、「無理しない」を目安にしてください。できれば、1日2−3回、日課として体操を取り入れていただくと良いでしょう。
リウマチ体操ビデオ貸し出し
少し以前に作成されたビデオですが、国立加古川病院(現在の甲南病院加古川病院)と参天製薬により制作されたリウマチ体操のビデオを、貸し出し用に用意しております。ご希望の患者様は、遠慮なく、外来看護師あるいは主治医までお伝えください。
整形外科リウマチだよりがインターネットで見られるようになりました
近年、インターネットは飛躍的に進歩し、コンピューターを通じて自宅からでも、旅行の予約や、ニュースの閲覧などが、大変簡単にできるようになりました。一方で、ネット上には、治療の難しい病気に関して、真偽のはっきりしないさまざまな情報も溢れています。また、ネットでの情報発信は、病院を訪れる皆様にリウマチだよりを直接お渡しするのと異なり、不特定多数の方が閲覧されるので、情報について何らかの誤解を受ける可能性も考えられるため、慎重に検討して参りましたが、患者様からのご要望にお応えして、今月より、「神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)」のインターネット上での試験公開を始めました。最近のバックナンバーも掲載しております。
今月を乗り切れば、春もすぐ目の前です。散歩が楽しい季節になるまで、寒さに負けずに、毎日手足を動かして、筋力と関節可動域の維持に努めましょう。それでは、続きは次号にて。
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