第211号(2022年6月号[22/6/1発行])

熱中症に気をつけましょう

 6月に入って、早くも初夏を思わせるような暑い日を迎えていますが、皆様の体調はいかがでしょうか。身体が暑さにまだ慣れていないこの時期の急激な気温の上昇は、熱中症の大きなリスクとなります。さらに、新型コロナウイルス感染症予防のためのマスク着用は熱中症のリスクを増大します。厚生労働省は、熱中症を防ぐために、①屋外で人と2m以上、すなわち十分な距離を持って離れているときはマスクを外すこと、②マスクをしているときは、激しい運動を避けること、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給をすること、気温や湿度が高いときは特に注意することを提唱しています。熱中症は生命に関わることもある病気ですので、くれぐれも熱中症予防対策に努めていただきますようにお願いします。


JAK阻害薬ウパダシチニブ(リンヴォック®)に

強直性脊椎炎の適応が承認されました

 強直性脊椎炎は、腰背部や殿部の痛みで初発することが多い、主に脊椎と骨盤の仙腸関節に、さらには四肢の大関節にも生じる慢性進行性の炎症性疾患です。強直性脊椎炎の原因は未だ分かっていませんが、白血球の血液型のひとつであるHLA-B27との関連が知られています。しかし、日本ではHLA-B27を有する人が少ないため、欧米などと比較して強直性脊椎炎の患者数も少ないことから、疾患の認知度は低く、診断が遅れる場合も少なくありません。

強直性脊椎炎の分子標的薬としては、これまでに、TNF阻害薬であるインフリキシマブ(レミケード®)とアダリムマブ(ヒュミラ®)ならびにこれらのバイオシミラー(後続品)、IL-17阻害薬であるセクキヌマブ(コセンティクス®)、イキセキズマブ(トルツ®)、ブロダルマブ(ルミセフ®)が承認されています。

ヤヌスキナーゼ(JAK)は細胞内シグナル伝達に関わるチロシンリン酸化酵素のひとつであり、JAK阻害薬はJAKを特異的に抑制することで炎症性サイトカインを抑えて抗炎症作用を発揮する分子標的薬です。JAK阻害薬は低分子量化合物であるため、同じ分子標的薬であっても高分子のタンパク質である生物学的製剤と違って経口で服用できることが大きな利点です。さらに、生物学的製剤のTNF阻害薬やIL-6阻害薬がひとつのサイトカインを抑制するのに対して、複数のサイトカインに対して作用するという特徴を有しています。JAK阻害薬は現在5種類の製剤が承認されていますが、ウバタシチニブ水和物(商品名リンヴォック®、製造販売:アッヴィ)は、4種類あるJAKのサブタイプのうち、炎症性サイトカインシグナルにおいて重要なJAK1に対する選択性が高いことが特徴とされています。リンヴォック®の適応症として、既存治療で効果不十分な、①関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、②関節症性乾癬、③アトピー性皮膚炎がこれまで承認されていましたが、今回新たに、JAK阻害薬として初めて、強直性脊椎炎の効能・効果が追加されました。

 強直性脊椎炎に対するリンヴォック®の用量用法は、通常、成人に15 mgを1日1回食後に経口で投与します。リンヴォック®15mg錠の薬価は5,089.2円ですので、強直性脊椎炎に対する年間薬価は1,857,558円になります。

なお、リンヴォック®は本院で採用されており院外処方箋で処方することができます。



整形外科リウマチ教室のご案内

神戸大学整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中でより良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております(開催週は月により異なりますので予めご確認ください)。関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

6月のリウマチ教室では、西井歯科衛生士から、口腔ケアについてお話させて頂きますので、ぜひご参加ください。

オンラインでのリウマチ教室は、通常のリウマチ教室への来院が困難な遠方にお住まいの方でも、パソコンあるいはスマートフォンからインターネットへの接続ができれば、当院への通院の有無にかかわらず、どなたでもご参加いただけます。また、Zoomのブレークルーム機能を使用しての個別相談も再開しています。新型コロナウイルス感染症の流行はまだ予断を許さない状況であり、当面の間、オンラインでの開催を続ける予定ですので、自宅からご参加ください。

なお、通常の対面での教室と異なり、セキュリティーを保護してオンライン上のトラブルを防止するために、オンライン教室への参加はウェブでの事前申し込み制とさせていただきます。



オンラインリウマチ教室のスケジュール(2022年6月-2022年8月)


日時:2022年6月30日(木)13:30-14:30(第5木曜日です)

演題:「リウマチとお口の管理の必要性」 

講師:歯科口腔外科・医療技術部 歯科部門 西井 美佳 歯科衛生士

司会:三浦 靖史 准教授

参加登録先:https://forms.gle/CEBFXKEHN2Am5x7fA


日時:2022年7月21日(木)13:30-14:30(第3木曜日です)

演題:「長引くコロナ禍において心も身体も健康でいるために~身体活動や運動を通じて~」

講師:リハビリテーション部 奧村 真帆 理学療法士

司会:三浦 靖史 准教授

参加登録先:https://forms.gle/dVr4P8mWCsqgLYPi7


日時:2022年8月25日(木)13:30-15:00(第4木曜日、終了時間が異なります)

演題:「リウマチ患者さんとのおしゃべり会」

司会:三浦 靖史 准教授、アシスタント:保健学科学生

参加登録先:https://forms.gle/qz8yErHFcb6HNo2s7



オンラインリウマチ教室参加申し込み方法

開催前日の17:00までに、グーグルフォーム(上記の「参加登録先」をクリック、あるいはQRコードをスマートフォンやiPadで読み込んでください)から参加登録いただきますようにお願いします。

前日の申し込み締め切り後に、Zoomでの参加に必要なリンク、会議IDとパスワードをお送りします。携帯アドレスをご利用の場合、こちらからの返信を受信できない場合がありますので、PC用のアドレスを登録ください。

皆様のご参加をお待ちしております。

開始時間までにZoomのアプリを予めインストールいただけますとスムーズに参加いただけます

神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2022.6.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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